野生のイルカ
野生のイルカは眠るときに片脳ずつ眠る。いつくるかしらない危機的状況に備え警戒を解くことなどせず、半分は寝て、半分は起きている。半分寝て、半分起きている。二度寝の言い訳ではない。あやふやなもんだがやつらは実にくっきりとそれをやってのける。片目を閉じる、それだけだ。そうやって片脳ずつ眠る。これはすごい。おれは是非とも試してみたいのだ。言うに及ばず右脳と左脳では司る能力に差があり(いちいちどんな違いがあるのかはいわないのだよきみぃ)、普通の人間はそれをいい塩梅に使い分けたり共同作業をして行動している。金玉と陰茎みたいなもんだ。協力はすれど介入はせず。のようなものを交互でやっている。それの片一方だけ使えなくする。片一方に眠ってもらう。そうしたらおれは何を思い、何を考え、何をするのだろう。何を書くのだろう。楽しみでしかたない。早速右目だけを閉じ(おれは苦もなく片目をつむれる)、左脳だけをリラックスさせることに集中してみた。別に左脳を生かしても今以上に数学の学力が上がるわけではないはずだから、ここはやはり右脳だろう。そういえば自称超能力者のおっぱっぱーには片盲の人が多いと聞いたこ
とがあるが、まあ失明と睡眠とでは全く違う状態だろう。はてさて、どうなることやら。効果のほどはまたいつか。
関係ないけど去年の夏のある日、夜、おれは部屋の前に殺し屋がいるのをみつけたのでげんなりしながら気づかれぬよう後進した。おれはコンビニに出かけた帰りで、寝間着姿だった。もうどうにでもなれ、と、コンビニでなけなしの金をおろし、うまいもんでも食って、一人カラオケにでもいこうと思った。ぽてぽてと世の中の全てをうらみながら歩いていると雨が降ってきた。瞬く間に雨量は尋常ではなくなった。バケツレイン。いわゆるゲリラ豪雨だ。濡れてしまえと駅に続く道を歩いていると辺りが真っ暗になった。停電。たぶんどっかのでっかいヒューズがとんだのだろう。車のライトしか明かりがないと都会はこんなに暗くなってしんとするのかと思った。辺りが停電するほどの豪雨で、傘もない僕はずぶ濡れになりながら、なんだかんだ濡れたくなくて、小走りに駅へと逃げこんだ。頭にろうそくを二本さしたおっさんがヒューズを交換したので一、二分で停電は回復し、駅ビルの入口にはうんざり半分うきうき半分の人達が豪雨の様子をうかがっていた。そしておれをうろんな目でちらちら見た。水も滴るなんやかや。そう、気がついたらおれは履いていたはずの短パンを履
いていなかった。財布もポケットの中。変えたばかりのおニュー携帯を持ってきてなかったことは不幸中の幸いだった。なんでだ。なんでだよ。停電中に何があったんだ。濡れた下着は確実になにかを映しだしている。みなさん停電中には短パン神隠しが出没するのでぜひ注意してくださいね、むなしく響く心の声。光の下にいたら捕まるこんな世の中じゃ。おれはあわてて排水溝から水があふれでるなかへと走りだした。気がついたらパンツ一丁だった、こんな場合にとる、いわゆるジョギング偽装作戦の開始だ。顔面に流れる雨水量が多すぎて、泣いていたのかいなかったのかおれにもわからなかった。歩いてきた道の途中で死んだ子犬のようにゲリラ豪雨にうたれる財布入りゆる短パンをみつけたとき、おれはどのタイミングでそれを履くか考え、性懲りもなくにやついた。部屋の前にもう殺し屋はいなかった。
とがあるが、まあ失明と睡眠とでは全く違う状態だろう。はてさて、どうなることやら。効果のほどはまたいつか。
関係ないけど去年の夏のある日、夜、おれは部屋の前に殺し屋がいるのをみつけたのでげんなりしながら気づかれぬよう後進した。おれはコンビニに出かけた帰りで、寝間着姿だった。もうどうにでもなれ、と、コンビニでなけなしの金をおろし、うまいもんでも食って、一人カラオケにでもいこうと思った。ぽてぽてと世の中の全てをうらみながら歩いていると雨が降ってきた。瞬く間に雨量は尋常ではなくなった。バケツレイン。いわゆるゲリラ豪雨だ。濡れてしまえと駅に続く道を歩いていると辺りが真っ暗になった。停電。たぶんどっかのでっかいヒューズがとんだのだろう。車のライトしか明かりがないと都会はこんなに暗くなってしんとするのかと思った。辺りが停電するほどの豪雨で、傘もない僕はずぶ濡れになりながら、なんだかんだ濡れたくなくて、小走りに駅へと逃げこんだ。頭にろうそくを二本さしたおっさんがヒューズを交換したので一、二分で停電は回復し、駅ビルの入口にはうんざり半分うきうき半分の人達が豪雨の様子をうかがっていた。そしておれをうろんな目でちらちら見た。水も滴るなんやかや。そう、気がついたらおれは履いていたはずの短パンを履
いていなかった。財布もポケットの中。変えたばかりのおニュー携帯を持ってきてなかったことは不幸中の幸いだった。なんでだ。なんでだよ。停電中に何があったんだ。濡れた下着は確実になにかを映しだしている。みなさん停電中には短パン神隠しが出没するのでぜひ注意してくださいね、むなしく響く心の声。光の下にいたら捕まるこんな世の中じゃ。おれはあわてて排水溝から水があふれでるなかへと走りだした。気がついたらパンツ一丁だった、こんな場合にとる、いわゆるジョギング偽装作戦の開始だ。顔面に流れる雨水量が多すぎて、泣いていたのかいなかったのかおれにもわからなかった。歩いてきた道の途中で死んだ子犬のようにゲリラ豪雨にうたれる財布入りゆる短パンをみつけたとき、おれはどのタイミングでそれを履くか考え、性懲りもなくにやついた。部屋の前にもう殺し屋はいなかった。