ボツ台本草場の陰で
「みんな死んじゃえよ」
一緒に散歩をしていたヤマカガシのムネミツ君が突然言った。
僕はハラハラドキドキした。
「みんな死んじゃえよ」
「みんなって、それは僕もかい?」
「みんなさ、でも君は最後までとっておくよ」
ムネミツ君は優しい奴だ。僕は嬉しくなって華麗なステップを踏んだ。昔フラミンゴのキャシーに教えてもらった一本足のフラメンコだ。
「何をそう嬉しがっているのだい?」
「君が僕をそんなにまで想っていてくれたなんて知らなかったんだ、君にとっての僕は、道に落ちている渋柿、みたいなものだと僕は思っていたからね」
「じゃあ僕もとても気分がよいから踊ろうかな、」
ヤマカガシのムネミツ君は足の無い蛇腹でステップを刻んだ。
「くねくねしているだけじゃないか」
「君には見えないのかい?僕のこの足捌きが」
「見えるわけないだろう?だって君には足がないじゃないか」
「ふん、これがほんとの蛇そ」
ムネミツ君のくねくね動きはいつも僕を不快にさせた。花粉症を発症する花粉の摂取量の器みたく、つもりつもった不快感が僕の中でちょうどこぼれた。この日僕の不快指数は101パーセントを記録したので、何か言いかけたムネミツ君を僕は踏み殺した。
とても静かになった。
一人では寂しくなったので僕は散歩を続けることにした。
「やあ、君か」
カエルのマグネム君と出会った。
やりきれない思いを抱え、「もう一度誰かを踏み殺したいな」、と思っていた僕にとって、カエルのマグネム君の登場は渡りに舟だった。
「マグネム君、君は運命って信じているかい?」
「運命?運命ってあの運命かい?それとも左曲がりの運命のことかい?」
詩人でヒモのマグネム君の言うことはいつも難しくて、僕にはおよそ三割方しか言っている内容がわからない。
僕が手で遊び始めたので、マグネム君は、
「そういう君は運命を信じているのかい?」
と、またわけのわからないことを言った。
「僕は今日を楽しく生きるだけで精一杯で、君にかまってる暇はないんだ」
「なるほど、刹那主義ってわけかい。ま、聞きなさい」
「はい」
僕は諭されそうな雰囲気が苦手だ。苦手、ということは、弱い、ということで、マグネム君の口を塞ぎ生コンの海に沈めるなんてことは出来なかった。
「運命なんてバカらしいや。結果さ、ただの偶然の結果さ。偶然なんて起こるか起こらないか、それをするかしないか、その二択が無限に広がっている選択肢の結果に過ぎないのさ。たとえば僕は今からここにいるもぞもぞ動いている虫を喰わずにいられないけど」
そう言ってマグネム君は老ダンゴムシのヨーゼフを喰べた。
「この虫は今僕に食べられることが運命だったのかい?それが運命だったとでも言うのかい?違うね。たとえば僕の運命が十秒後に僕の体内に溜まった屁が爆発するというのなら、僕は爆発しなきゃいけないのかい?」
「そんなことはないね」
「だろう?君はそれをすれば」
カエルのマグネム君は笑顔になってそう言うと、体内に溜まった屁が爆発して粉微塵に吹き飛んだ。
「やあ、見事だなあ」
そうつぶやいたものの、やることもないので散歩を続けることにした。しばらく歩き、陽も暮れようとしている頃、ゆるい坂の途中で雀のハミン君に話しかけられた。
「やあ、君か」
「やあ、今日はいい日だったね」
雀のハミン君は飛ぶことが出来ない。いつも地面をびっこを引きながら歩いている。小さい頃両親がヤマカガシのムネミツ君に食べられてしまった時に巣から落ちて傷ついたのだ。そして両親から飛ぶことを教わってないので飛ぶことが出来ない。
僕とハミン君はヤマカガシのムネミツ君の死でとても盛り上がった。
「あいつはほんとに、こねくり坊主のむひょてんげ、だったね」
「その通りさ」
ふたりでカラカラと笑いあっていると、
「じゃあ僕も明日飛ぼうかな」
と、ハミン君が言った。
「え?君は飛べないじゃないか」
「ふふん、僕だって本気を出せば飛べるんだよ」
「本当かい?やあ、それは知らなかった。どうだい?一つ僕に飛んでいるとこを見せてくれないかい?」
「明日ならばね」
「今は飛べないのかい?」
「今でもいつでも本気を出せば飛べるさ。僕は雀だからね。飛べば飛べるさ。それをすればね」
確かにその通りだと思ったけど、僕はどうしても今見たかったので、
「今見せてもらえるわけにはいかないのかい?」
と、訊ねた。
「明日さ。本気を出すのはいつだって明日さ。考えてもみなよ。今日本気を出してしまったら明日出す本気はどこにいってしまうのだい?」
ハミン君は小さな胸をこれでもかと張って言った。
さもありなん、僕がポンと膝を打つと、
「傷を舐めあいやがって、そんなだからお前は飛べないんだよ」
という声が坂の上から聞こえてきた。大将気取りのロジャーだ。負け熊のくせして大将気取りの嫌な奴だ。額からねとねとしていそうな赤い血をダラダラと流している。
「ロジャー、また大将に負けたのかい?」
「ふん」
「君も懲りないねえ」
「ま、今日は手を抜いたのさ。あんなヘボ熊、本気を出せばいつだって勝てるのだがね」
お前も舐めあうのじゃないか、と僕は思った。
僕達はヤマカガシのムネミツ君の死を一通り笑うと、陽も落ちたのでそれぞれ帰ることにした。
「おい君、さっきは随分じゃないか」
帰り道、踏み殺したと思っていたムネミツ君が話しかけてきて僕は驚いた。
「見てくれよこの蛇腹を。大地と腹が、腹と大地が、踏み潰されてひっついて動けやしない。虫の息さ」
「ひどい状態じゃないか?どうしたんだい?」
「君に踏まれたのさ、華麗なステップでね」
腹が大地にひっついて動けないムネミツ君はテケテケみたくもがき動く。
ムネミツ君の言葉で僕は思い出した。そうだ。僕はなんだかやりきれないから誰かを踏み殺したかったんじゃないか。
僕はムネミツ君を、今度は確実に踏み殺すよう、しっかと頭を高速のステップで踏み、殺すと、
「ああ、二度も僕に踏み殺されてくれるなんて、ムネミツ君、君は案外いい奴なんだな」
と、思って、ねぐらに帰り寝た。
終わり。うーむ。あ、引き続き今まで通りのもやりますので。ていうか特に変わらない…
一緒に散歩をしていたヤマカガシのムネミツ君が突然言った。
僕はハラハラドキドキした。
「みんな死んじゃえよ」
「みんなって、それは僕もかい?」
「みんなさ、でも君は最後までとっておくよ」
ムネミツ君は優しい奴だ。僕は嬉しくなって華麗なステップを踏んだ。昔フラミンゴのキャシーに教えてもらった一本足のフラメンコだ。
「何をそう嬉しがっているのだい?」
「君が僕をそんなにまで想っていてくれたなんて知らなかったんだ、君にとっての僕は、道に落ちている渋柿、みたいなものだと僕は思っていたからね」
「じゃあ僕もとても気分がよいから踊ろうかな、」
ヤマカガシのムネミツ君は足の無い蛇腹でステップを刻んだ。
「くねくねしているだけじゃないか」
「君には見えないのかい?僕のこの足捌きが」
「見えるわけないだろう?だって君には足がないじゃないか」
「ふん、これがほんとの蛇そ」
ムネミツ君のくねくね動きはいつも僕を不快にさせた。花粉症を発症する花粉の摂取量の器みたく、つもりつもった不快感が僕の中でちょうどこぼれた。この日僕の不快指数は101パーセントを記録したので、何か言いかけたムネミツ君を僕は踏み殺した。
とても静かになった。
一人では寂しくなったので僕は散歩を続けることにした。
「やあ、君か」
カエルのマグネム君と出会った。
やりきれない思いを抱え、「もう一度誰かを踏み殺したいな」、と思っていた僕にとって、カエルのマグネム君の登場は渡りに舟だった。
「マグネム君、君は運命って信じているかい?」
「運命?運命ってあの運命かい?それとも左曲がりの運命のことかい?」
詩人でヒモのマグネム君の言うことはいつも難しくて、僕にはおよそ三割方しか言っている内容がわからない。
僕が手で遊び始めたので、マグネム君は、
「そういう君は運命を信じているのかい?」
と、またわけのわからないことを言った。
「僕は今日を楽しく生きるだけで精一杯で、君にかまってる暇はないんだ」
「なるほど、刹那主義ってわけかい。ま、聞きなさい」
「はい」
僕は諭されそうな雰囲気が苦手だ。苦手、ということは、弱い、ということで、マグネム君の口を塞ぎ生コンの海に沈めるなんてことは出来なかった。
「運命なんてバカらしいや。結果さ、ただの偶然の結果さ。偶然なんて起こるか起こらないか、それをするかしないか、その二択が無限に広がっている選択肢の結果に過ぎないのさ。たとえば僕は今からここにいるもぞもぞ動いている虫を喰わずにいられないけど」
そう言ってマグネム君は老ダンゴムシのヨーゼフを喰べた。
「この虫は今僕に食べられることが運命だったのかい?それが運命だったとでも言うのかい?違うね。たとえば僕の運命が十秒後に僕の体内に溜まった屁が爆発するというのなら、僕は爆発しなきゃいけないのかい?」
「そんなことはないね」
「だろう?君はそれをすれば」
カエルのマグネム君は笑顔になってそう言うと、体内に溜まった屁が爆発して粉微塵に吹き飛んだ。
「やあ、見事だなあ」
そうつぶやいたものの、やることもないので散歩を続けることにした。しばらく歩き、陽も暮れようとしている頃、ゆるい坂の途中で雀のハミン君に話しかけられた。
「やあ、君か」
「やあ、今日はいい日だったね」
雀のハミン君は飛ぶことが出来ない。いつも地面をびっこを引きながら歩いている。小さい頃両親がヤマカガシのムネミツ君に食べられてしまった時に巣から落ちて傷ついたのだ。そして両親から飛ぶことを教わってないので飛ぶことが出来ない。
僕とハミン君はヤマカガシのムネミツ君の死でとても盛り上がった。
「あいつはほんとに、こねくり坊主のむひょてんげ、だったね」
「その通りさ」
ふたりでカラカラと笑いあっていると、
「じゃあ僕も明日飛ぼうかな」
と、ハミン君が言った。
「え?君は飛べないじゃないか」
「ふふん、僕だって本気を出せば飛べるんだよ」
「本当かい?やあ、それは知らなかった。どうだい?一つ僕に飛んでいるとこを見せてくれないかい?」
「明日ならばね」
「今は飛べないのかい?」
「今でもいつでも本気を出せば飛べるさ。僕は雀だからね。飛べば飛べるさ。それをすればね」
確かにその通りだと思ったけど、僕はどうしても今見たかったので、
「今見せてもらえるわけにはいかないのかい?」
と、訊ねた。
「明日さ。本気を出すのはいつだって明日さ。考えてもみなよ。今日本気を出してしまったら明日出す本気はどこにいってしまうのだい?」
ハミン君は小さな胸をこれでもかと張って言った。
さもありなん、僕がポンと膝を打つと、
「傷を舐めあいやがって、そんなだからお前は飛べないんだよ」
という声が坂の上から聞こえてきた。大将気取りのロジャーだ。負け熊のくせして大将気取りの嫌な奴だ。額からねとねとしていそうな赤い血をダラダラと流している。
「ロジャー、また大将に負けたのかい?」
「ふん」
「君も懲りないねえ」
「ま、今日は手を抜いたのさ。あんなヘボ熊、本気を出せばいつだって勝てるのだがね」
お前も舐めあうのじゃないか、と僕は思った。
僕達はヤマカガシのムネミツ君の死を一通り笑うと、陽も落ちたのでそれぞれ帰ることにした。
「おい君、さっきは随分じゃないか」
帰り道、踏み殺したと思っていたムネミツ君が話しかけてきて僕は驚いた。
「見てくれよこの蛇腹を。大地と腹が、腹と大地が、踏み潰されてひっついて動けやしない。虫の息さ」
「ひどい状態じゃないか?どうしたんだい?」
「君に踏まれたのさ、華麗なステップでね」
腹が大地にひっついて動けないムネミツ君はテケテケみたくもがき動く。
ムネミツ君の言葉で僕は思い出した。そうだ。僕はなんだかやりきれないから誰かを踏み殺したかったんじゃないか。
僕はムネミツ君を、今度は確実に踏み殺すよう、しっかと頭を高速のステップで踏み、殺すと、
「ああ、二度も僕に踏み殺されてくれるなんて、ムネミツ君、君は案外いい奴なんだな」
と、思って、ねぐらに帰り寝た。
終わり。うーむ。あ、引き続き今まで通りのもやりますので。ていうか特に変わらない…