ボツ台本もったいぶる
『もったいぶりやがってよぉ』
「どうしたいきなり」
『どうもこうもねえよ!』
「じゃあわかんねえよ」
『喧嘩したんだよ喧嘩』
「聞いて欲しいなら最初からそう言えばいいだろ」
『喧嘩したんだよ馬鹿野郎が』
「喧嘩ってどういう類の?口喧嘩なのか殴り合いなのか」
『口喧嘩の末に殴り合いの喧嘩になったに決まってるだろ!』
「ああ、まあなあ、殴り合いの喧嘩かぁ」
『口喧嘩の末に殴り合いの喧嘩だよ!』
「だから結局殴り合いの喧嘩だろ?」
『ああ、そうすか、ごめん』
「お、おう。でも殴り合った割にきれいな顔してるな」
『ああ、昨日メンズエステに行ったからな』
「そういう意味じゃねえよ。つうかお前昨日エステ行ったの?無頼気取りのお前が?喧嘩の話より興味あるんだけど」
『じゃあ間をとってファミレスで隣の客が喋ってた話をしますか』
「いや、なんでだよ。どこをどう間をとったんだよ。いいよ喧嘩の話で」
『ああ、そうすか』
「ちょっといい?なんだよさっきからその口調。お前そんな奴じゃなかったろ?いつもなら、うるせえ馬鹿野郎、とか言うのに」
『まあ、倦怠期ってやつだな。いやぁ昨日喧嘩したんだけどそれがもう』
「ちょっと待て!倦怠期っておれとお前の関係がか!?おれ全然倦怠期感じてないんだけど」
『ふうん。でさ、あの野郎もったいぶりやがってよぉ』
「いやいや、何をもったいぶったのかも知りたくはあるが、せめて、せめてこの場はいつも通りやろうぜ」
『そうすか、ま、いいですけど』
「うわぁ、適当にあしらわれてるし確かな一線引かれてるぅ」
『はい!始まりました!ね!始まりました今日のペルっちゃったのコーナーです!』
「急!急だよ!スイッチ入れたの!?つうかペルっちゃったのコーナーってなんだよ!喧嘩の話だろ!お前はアイドルマジシャンか!」
『自称な自称』
「そんなとこに食いつかなくていいんだよ!」
『おれわかっちゃったんだよ、いや、ペルっちゃったんだよ』
「いきなりペルっちゃったチャンスをミスっちゃったよ」
『いや、ペルっちゃったチャンスをペルっちゃった、だろ』
「いいんだよ!二回ペルってるし!二回ペルってるってなんだよ!?もう、勝手に変なこと始めんな!私はそのコーナーに賛同致しません!」
『へぇ、そうなんだ』
「おい、頼むよ」
『そういうとこあるよね』
「なんなんだよ、ああもう、で!?何がわかっちゃったんだよ!」
『大した取り柄の無い奴にはとりあえず○○のアイドル的なことつけんだってこと』
「そんなことわざわざ言うな!つうかお前ここはおれがペルっちゃったって言い直すパターンだろ!」
『いや、そんなことよりわりかしブサイクにもアイドルってつけるなって方が問題なんだよ』
「おい!そんなことよりってペルっちゃったのコーナー始めたのお前だろうが!」
『アイドルってわりかしブサイクでいいんですか?』
「やめろ!わりかしブサイクって言うな!わりかしってつけるとより生々しいよ!やめろ!」
『そうすか、じゃあやめます。やめりゃいいんですね』
「おい」
『はいはいやめますやめます』
「いやもうやって下さい。すいませんなんか。悪かったよ」
『ああ、そうすか、はいはい、わかりましたよ』
「ごめん、本当にちゃんとしてくれる?文句とか恨みつらみはあとでいくらでも聞くから」
『そうすか、まあ、特にこれといった何かがあるってわけじゃないんですけどね』
「うわぁ、リアル」
『覆水盆に返らずってやつですか。もうあなたが呼吸しているという事実が無理』
「事実が無理って、ああもういいや、わかったから、今はちゃんとやろうよ、続きやろう」
『やめろと言われたからやめたのに今度はやれですか』
「そんなもんだろおれの立場なんて!」
『カーネギーホールか!』
「ダチョウ倶楽部か、な。全然かかってねえけど」
『お前…よくわかったな』
「まあ長い付き合いだからな」
『お前…ふふん、ま、覆水盆に返らず、一度こぼれた水はもう元には戻らない。不可逆性ってやつだな』
「はぁ」
『しかし、物事の性質が水であるならば、水であるならばだよ、そのこぼれた水は大地に染み渡り、大地の中で濾過され、やがて清らかな湧き水となり、以前よりうまい水になって、また盆の上に戻ってくることもあるのかもな』
「はぁ、ということはもう倦怠期は終わりってこと?」
『あなたがそう言うのであれば、まあ別に構いませんけど』
「続いてるよ!やめてもう!」
『ヤメテ!』
「横山弁護士のモノマネはいいんだよ」
『もうヤメテ!』
「やめろって!」
『ヤメナイ!』
「今の誰!?今のは誰!」
『ああ!?そんなことよりクイズの答えをもったいぶった奴と喧嘩したって話だろ!』
「今さらりと大事なこと言ったんじゃないか?」
『ああ!?』
「いや、まあ、その」
『昨日喧嘩したんだけどよ、呑み屋によぉ、女連れた男が入ってきてよぉ、これがまたなんつうのかなぁ、一年中コートを着ているような奴でよぉ』
「いまいちわかんねえけど」
『すけこまし野郎なんだよ!』
「いやいや、すけこましのイメージおかしいだろ。すけこましは一年中コート着ないよきっと。そんなことしてたらすけこませないだろ。大体四季のある日本で一年中コート着ている奴なんて殺し屋か中二だ」
『じゃあ中二で』
「じゃあってどういうことだ!?」
『殺し屋と殴り合いの喧嘩したらおれ殺される必要が生じてくるだろ!』
「その問題は生じないと思うけど!?だってお前生きてるし!」
『そういやそうだな』
「お、おお」
『そのすけこましと喧嘩になった理由ってのがよぉ』
「そいつが何らかのクイズを出してその答えをもったいぶったんだろ?」
『え?お前……よくわかったな』
「さっき聞いちゃったよ!」
『え?さっきなに?』
「さっき聞いちゃったって!お前自分でさらりと言ったんだぞ!」
『さっきなに?』
「だからさっき聞いちゃったって」
『さっきなにっちゃったって?』
「!!…言わねえよ!言うか!中山の秀ちゃんかお前は!」
『よくおれがお前にペルっちゃったって言わせたいのわかったな』
「あんだけ言われたら外国人でもわかるわ!」
『お前…なるほどな、ひび割れた焼き物ってのはその価値を失うと思われがちだが、世の中には馬蝗絆(ばこうはん)という一度ひび割れたがそのひび割れた部分を鎹(かすがい)を入れて修復することでその価値を増したものもあるということだな』
「はぁ、ま、おれとお前の仲が修復されつつあるってんならいいけど」
『じゃあそういうことで終わりますか』
「終われねえよ!そのクイズってのはどんなんなの?お前が怒るほどだったのかよ」
『なんでおれから怒ったって決めつけてんだよ!』
「その状況じゃお前が絡まなきゃ喧嘩になんねえだろ!そいつの、そのすけこましのもったいぶったひっぱり方にお前がキレたから喧嘩になったって話だろ!?」
『そうだけど!』
「ならいいじゃねえか」
『そうだけど!』
「じゃあ話せ!」
『ダイナマイトボンバー!』
「痛っ!なんで今のタイミングでおれを殴った!?」
『説明しよう。ダイナマイトボンバーとは』
「しなくていいよ!」
『そうだけど!』
「じゃあすんな!」
『そうだけど!』
「……よし」
『ダイナマイトボンバー!』
「やっぱりだよ!痛ぇなおい!」
『説明しよう』
「もうしろよ」
『ダイナマイトボンバーとはペキトリカ語でいうところの“セネルガ”に非常に近い思い切りのよいダイナミックなパンチである』
「大事な部分よくわからねえ言語使っちゃったよ。なんだよセネルガって日本語に訳せないものなのか?それにダイナマイトボンバーの説明にダイナミックって使うなよ。混乱するだろ」
『…で?』
「でってなんだよ!でって!」
『何の話だっけ?』
「ああ!?クイズの話だろクイズ!どんなクイズだったんだよ!」
『ああ、じゃあ今からおれがそのすけこまし完コピするからお前相手の女な。すけこましにこまされてる女』
「お、おう」
『ヨウコぉ、これわかるかぁ?』
「ヨウコって名前なんだな、しかしいきなりわかるかって聞くか?この時点で軽くイラッとすんな」
『いやいや、わかるわかるって言えよ』
「うん。よく考えたらおれヨウコ知らないわ。おれヨウコわからない」
『じゃあこれ出来ないじゃん!完コピ出来ないじゃん!最初から無理あったじゃん!』
「いやまったくその通りだよ!」
『どうすんだよ!』
「どうするもなにも、じゃあとりあえずそのすけこましが出したクイズをおれに出してみてよ」
『はい!』
「素直だなおい」
『いきます。乗客が100人乗っているジャンボ機をハイジャックする際に、最も安全にハイジャックを成功させる場合必要な犯人側の最小人数は?』
「ああ、その100人の内何人味方がいればハイジャックは成功するでしょうかって問題ね」
『そうそう』
「あーっと、最小ねぇ、最も安全にだろ、あ、わかった。100人だろ!最小人数ってのがひっかけで、最も安全に成功させるには100人全員が犯人の場合が最も安全だろ。人質とかならCAとかいるし」
『…なるほど!そっかぁ!』
「今納得したの!?ていうかお前答え知らなかったの!?じゃあ正解わからないじゃん!」
『いやぁ、そのすけこましおれがいくら殴っても口を割らなかったんだよ。でも納得いったから多分それで正解だよ』
「そ、そうか。ダイナマイトボンバーを引きずらなかったのはナイス判断だが。えっと、今更かもしれないけどどういう風にそいつはもったいぶったの?」
『こんな風だな。一人?ブブー。じゃあ二人?ブブー違うよぉちゃんと考えろよぉ、あ、ヒントね、正解は三人じゃない。じゃあ。かといって四人でもない。じゃあ五人かしら?ブブー、ヨウコはバカだなぁ。ひどーい』
「ああ、そんな感じね。なんつうか前戯的な」
『それがまた声がうざいぐらいでかくてさ。まあ隣の席でおれと友人が酔っ払って騒いでたから大きな声で話さないと会話出来ない状況ではあっただろうけど』
「お前に対して言いたいこともあるが呑み屋なんてそんなもんだからな」
『そうだよ。おれも最初のうちは大目に見てた。クイズの成り行きにも釘付けだったし』
「うん」
『それでまあ、すけこましがだよ、もったいぶってよぉ、もったいぶりやがってよぉ、95人目までもったいぶるから喧嘩になった』
「95人目!?おい!どうかしてるだろ!95人目まで正解出来ない女も95人目まで言い続けたすけこましもあと5人待てなかったお前も登場人物みんなどうしょうもねえな!20人ぐらいいったら正解しろよ!90人越えたらなおだ!」
『いい加減にしろよ!っつって胸ぐら掴んで立ち上がらせて』
「ほんとどうしょうもねえな」
『とりあえずおれは殴ったねぇ。そいつの膝を』
「膝!?なんで膝だよ?」
『いや、立たせたと同時にすけこましの膝蹴り一発でおれ倒れたからな』
「弱っ!弱すぎるだろ!」
『おれが膝を殴ってる最中もあいつ空いてる方の脚でおれの腹を背をストンピングしてきてな』
「ボコボコじゃねえか。あ、でもだから顔はきれいなのね」
『ごめん。メンズエステには行ってないんだ』
「いや、正直忘れてたわメンズエステの件」
『そうか、ならいいんだ』
「なんかごめんな。で、それから?」
『お前は何人が正解だと思う?って訊かれて』
「なんでだ?」
『正解したら許してやる。ただし間違えたらその数だけ蹴るって言われてさ』
「ああ」
『96人ですかって答えたら』
「馬鹿!お前は馬鹿か!?女に続いただけじゃねえか!敬語になっちゃってるし!」
『わからなかったんだからしょうがないだろ』
「わからなくても、一人とか二人…は余計蹴られるかもしれないが、10人ぐらいにしとけば良かっただろ!」
『いやぁついてねえよな。五択で間違えるなんて』
「運だけで選んだら五択は結構間違うだろ。つうかそういう問題じゃねえよ!そもそもそのクイズへの取り組み方が間違ってんだよ!」
『でもよ、おれ数えてたんだけどさ、あいつ96回じゃなくてちょうど100回蹴りやがったんだよ』
「厳しさの中に優しさを感じたよ!」
「どうしたいきなり」
『どうもこうもねえよ!』
「じゃあわかんねえよ」
『喧嘩したんだよ喧嘩』
「聞いて欲しいなら最初からそう言えばいいだろ」
『喧嘩したんだよ馬鹿野郎が』
「喧嘩ってどういう類の?口喧嘩なのか殴り合いなのか」
『口喧嘩の末に殴り合いの喧嘩になったに決まってるだろ!』
「ああ、まあなあ、殴り合いの喧嘩かぁ」
『口喧嘩の末に殴り合いの喧嘩だよ!』
「だから結局殴り合いの喧嘩だろ?」
『ああ、そうすか、ごめん』
「お、おう。でも殴り合った割にきれいな顔してるな」
『ああ、昨日メンズエステに行ったからな』
「そういう意味じゃねえよ。つうかお前昨日エステ行ったの?無頼気取りのお前が?喧嘩の話より興味あるんだけど」
『じゃあ間をとってファミレスで隣の客が喋ってた話をしますか』
「いや、なんでだよ。どこをどう間をとったんだよ。いいよ喧嘩の話で」
『ああ、そうすか』
「ちょっといい?なんだよさっきからその口調。お前そんな奴じゃなかったろ?いつもなら、うるせえ馬鹿野郎、とか言うのに」
『まあ、倦怠期ってやつだな。いやぁ昨日喧嘩したんだけどそれがもう』
「ちょっと待て!倦怠期っておれとお前の関係がか!?おれ全然倦怠期感じてないんだけど」
『ふうん。でさ、あの野郎もったいぶりやがってよぉ』
「いやいや、何をもったいぶったのかも知りたくはあるが、せめて、せめてこの場はいつも通りやろうぜ」
『そうすか、ま、いいですけど』
「うわぁ、適当にあしらわれてるし確かな一線引かれてるぅ」
『はい!始まりました!ね!始まりました今日のペルっちゃったのコーナーです!』
「急!急だよ!スイッチ入れたの!?つうかペルっちゃったのコーナーってなんだよ!喧嘩の話だろ!お前はアイドルマジシャンか!」
『自称な自称』
「そんなとこに食いつかなくていいんだよ!」
『おれわかっちゃったんだよ、いや、ペルっちゃったんだよ』
「いきなりペルっちゃったチャンスをミスっちゃったよ」
『いや、ペルっちゃったチャンスをペルっちゃった、だろ』
「いいんだよ!二回ペルってるし!二回ペルってるってなんだよ!?もう、勝手に変なこと始めんな!私はそのコーナーに賛同致しません!」
『へぇ、そうなんだ』
「おい、頼むよ」
『そういうとこあるよね』
「なんなんだよ、ああもう、で!?何がわかっちゃったんだよ!」
『大した取り柄の無い奴にはとりあえず○○のアイドル的なことつけんだってこと』
「そんなことわざわざ言うな!つうかお前ここはおれがペルっちゃったって言い直すパターンだろ!」
『いや、そんなことよりわりかしブサイクにもアイドルってつけるなって方が問題なんだよ』
「おい!そんなことよりってペルっちゃったのコーナー始めたのお前だろうが!」
『アイドルってわりかしブサイクでいいんですか?』
「やめろ!わりかしブサイクって言うな!わりかしってつけるとより生々しいよ!やめろ!」
『そうすか、じゃあやめます。やめりゃいいんですね』
「おい」
『はいはいやめますやめます』
「いやもうやって下さい。すいませんなんか。悪かったよ」
『ああ、そうすか、はいはい、わかりましたよ』
「ごめん、本当にちゃんとしてくれる?文句とか恨みつらみはあとでいくらでも聞くから」
『そうすか、まあ、特にこれといった何かがあるってわけじゃないんですけどね』
「うわぁ、リアル」
『覆水盆に返らずってやつですか。もうあなたが呼吸しているという事実が無理』
「事実が無理って、ああもういいや、わかったから、今はちゃんとやろうよ、続きやろう」
『やめろと言われたからやめたのに今度はやれですか』
「そんなもんだろおれの立場なんて!」
『カーネギーホールか!』
「ダチョウ倶楽部か、な。全然かかってねえけど」
『お前…よくわかったな』
「まあ長い付き合いだからな」
『お前…ふふん、ま、覆水盆に返らず、一度こぼれた水はもう元には戻らない。不可逆性ってやつだな』
「はぁ」
『しかし、物事の性質が水であるならば、水であるならばだよ、そのこぼれた水は大地に染み渡り、大地の中で濾過され、やがて清らかな湧き水となり、以前よりうまい水になって、また盆の上に戻ってくることもあるのかもな』
「はぁ、ということはもう倦怠期は終わりってこと?」
『あなたがそう言うのであれば、まあ別に構いませんけど』
「続いてるよ!やめてもう!」
『ヤメテ!』
「横山弁護士のモノマネはいいんだよ」
『もうヤメテ!』
「やめろって!」
『ヤメナイ!』
「今の誰!?今のは誰!」
『ああ!?そんなことよりクイズの答えをもったいぶった奴と喧嘩したって話だろ!』
「今さらりと大事なこと言ったんじゃないか?」
『ああ!?』
「いや、まあ、その」
『昨日喧嘩したんだけどよ、呑み屋によぉ、女連れた男が入ってきてよぉ、これがまたなんつうのかなぁ、一年中コートを着ているような奴でよぉ』
「いまいちわかんねえけど」
『すけこまし野郎なんだよ!』
「いやいや、すけこましのイメージおかしいだろ。すけこましは一年中コート着ないよきっと。そんなことしてたらすけこませないだろ。大体四季のある日本で一年中コート着ている奴なんて殺し屋か中二だ」
『じゃあ中二で』
「じゃあってどういうことだ!?」
『殺し屋と殴り合いの喧嘩したらおれ殺される必要が生じてくるだろ!』
「その問題は生じないと思うけど!?だってお前生きてるし!」
『そういやそうだな』
「お、おお」
『そのすけこましと喧嘩になった理由ってのがよぉ』
「そいつが何らかのクイズを出してその答えをもったいぶったんだろ?」
『え?お前……よくわかったな』
「さっき聞いちゃったよ!」
『え?さっきなに?』
「さっき聞いちゃったって!お前自分でさらりと言ったんだぞ!」
『さっきなに?』
「だからさっき聞いちゃったって」
『さっきなにっちゃったって?』
「!!…言わねえよ!言うか!中山の秀ちゃんかお前は!」
『よくおれがお前にペルっちゃったって言わせたいのわかったな』
「あんだけ言われたら外国人でもわかるわ!」
『お前…なるほどな、ひび割れた焼き物ってのはその価値を失うと思われがちだが、世の中には馬蝗絆(ばこうはん)という一度ひび割れたがそのひび割れた部分を鎹(かすがい)を入れて修復することでその価値を増したものもあるということだな』
「はぁ、ま、おれとお前の仲が修復されつつあるってんならいいけど」
『じゃあそういうことで終わりますか』
「終われねえよ!そのクイズってのはどんなんなの?お前が怒るほどだったのかよ」
『なんでおれから怒ったって決めつけてんだよ!』
「その状況じゃお前が絡まなきゃ喧嘩になんねえだろ!そいつの、そのすけこましのもったいぶったひっぱり方にお前がキレたから喧嘩になったって話だろ!?」
『そうだけど!』
「ならいいじゃねえか」
『そうだけど!』
「じゃあ話せ!」
『ダイナマイトボンバー!』
「痛っ!なんで今のタイミングでおれを殴った!?」
『説明しよう。ダイナマイトボンバーとは』
「しなくていいよ!」
『そうだけど!』
「じゃあすんな!」
『そうだけど!』
「……よし」
『ダイナマイトボンバー!』
「やっぱりだよ!痛ぇなおい!」
『説明しよう』
「もうしろよ」
『ダイナマイトボンバーとはペキトリカ語でいうところの“セネルガ”に非常に近い思い切りのよいダイナミックなパンチである』
「大事な部分よくわからねえ言語使っちゃったよ。なんだよセネルガって日本語に訳せないものなのか?それにダイナマイトボンバーの説明にダイナミックって使うなよ。混乱するだろ」
『…で?』
「でってなんだよ!でって!」
『何の話だっけ?』
「ああ!?クイズの話だろクイズ!どんなクイズだったんだよ!」
『ああ、じゃあ今からおれがそのすけこまし完コピするからお前相手の女な。すけこましにこまされてる女』
「お、おう」
『ヨウコぉ、これわかるかぁ?』
「ヨウコって名前なんだな、しかしいきなりわかるかって聞くか?この時点で軽くイラッとすんな」
『いやいや、わかるわかるって言えよ』
「うん。よく考えたらおれヨウコ知らないわ。おれヨウコわからない」
『じゃあこれ出来ないじゃん!完コピ出来ないじゃん!最初から無理あったじゃん!』
「いやまったくその通りだよ!」
『どうすんだよ!』
「どうするもなにも、じゃあとりあえずそのすけこましが出したクイズをおれに出してみてよ」
『はい!』
「素直だなおい」
『いきます。乗客が100人乗っているジャンボ機をハイジャックする際に、最も安全にハイジャックを成功させる場合必要な犯人側の最小人数は?』
「ああ、その100人の内何人味方がいればハイジャックは成功するでしょうかって問題ね」
『そうそう』
「あーっと、最小ねぇ、最も安全にだろ、あ、わかった。100人だろ!最小人数ってのがひっかけで、最も安全に成功させるには100人全員が犯人の場合が最も安全だろ。人質とかならCAとかいるし」
『…なるほど!そっかぁ!』
「今納得したの!?ていうかお前答え知らなかったの!?じゃあ正解わからないじゃん!」
『いやぁ、そのすけこましおれがいくら殴っても口を割らなかったんだよ。でも納得いったから多分それで正解だよ』
「そ、そうか。ダイナマイトボンバーを引きずらなかったのはナイス判断だが。えっと、今更かもしれないけどどういう風にそいつはもったいぶったの?」
『こんな風だな。一人?ブブー。じゃあ二人?ブブー違うよぉちゃんと考えろよぉ、あ、ヒントね、正解は三人じゃない。じゃあ。かといって四人でもない。じゃあ五人かしら?ブブー、ヨウコはバカだなぁ。ひどーい』
「ああ、そんな感じね。なんつうか前戯的な」
『それがまた声がうざいぐらいでかくてさ。まあ隣の席でおれと友人が酔っ払って騒いでたから大きな声で話さないと会話出来ない状況ではあっただろうけど』
「お前に対して言いたいこともあるが呑み屋なんてそんなもんだからな」
『そうだよ。おれも最初のうちは大目に見てた。クイズの成り行きにも釘付けだったし』
「うん」
『それでまあ、すけこましがだよ、もったいぶってよぉ、もったいぶりやがってよぉ、95人目までもったいぶるから喧嘩になった』
「95人目!?おい!どうかしてるだろ!95人目まで正解出来ない女も95人目まで言い続けたすけこましもあと5人待てなかったお前も登場人物みんなどうしょうもねえな!20人ぐらいいったら正解しろよ!90人越えたらなおだ!」
『いい加減にしろよ!っつって胸ぐら掴んで立ち上がらせて』
「ほんとどうしょうもねえな」
『とりあえずおれは殴ったねぇ。そいつの膝を』
「膝!?なんで膝だよ?」
『いや、立たせたと同時にすけこましの膝蹴り一発でおれ倒れたからな』
「弱っ!弱すぎるだろ!」
『おれが膝を殴ってる最中もあいつ空いてる方の脚でおれの腹を背をストンピングしてきてな』
「ボコボコじゃねえか。あ、でもだから顔はきれいなのね」
『ごめん。メンズエステには行ってないんだ』
「いや、正直忘れてたわメンズエステの件」
『そうか、ならいいんだ』
「なんかごめんな。で、それから?」
『お前は何人が正解だと思う?って訊かれて』
「なんでだ?」
『正解したら許してやる。ただし間違えたらその数だけ蹴るって言われてさ』
「ああ」
『96人ですかって答えたら』
「馬鹿!お前は馬鹿か!?女に続いただけじゃねえか!敬語になっちゃってるし!」
『わからなかったんだからしょうがないだろ』
「わからなくても、一人とか二人…は余計蹴られるかもしれないが、10人ぐらいにしとけば良かっただろ!」
『いやぁついてねえよな。五択で間違えるなんて』
「運だけで選んだら五択は結構間違うだろ。つうかそういう問題じゃねえよ!そもそもそのクイズへの取り組み方が間違ってんだよ!」
『でもよ、おれ数えてたんだけどさ、あいつ96回じゃなくてちょうど100回蹴りやがったんだよ』
「厳しさの中に優しさを感じたよ!」