“コスメティックもろざし”〈七十九〉
「ミチコ、あそこに誰か倒れてる」
B子が地面を指差した。
ミチコ、B子の背に冷たい汗が流れる。
「ふたり…ふたりだわ。B子、ふたり倒れてる」
ひとりに覆いかぶさるようにもうひとり。裏門から出るには避けて通れない位置。メイコ先生はミチコに背負われている。考えている時間は無駄だ。
ミチコとB子は意を決して裏門に飛び出た。
「ミチコ!ブタクマだ!上に乗ってるの、ブタクマだわ」
B子は倒れているブタクマに近づいた。B子の額には大きな大きなたんこぶひとつ。
「ブタクマ!ブタクマ!」
B子はブタクマを揺さぶった。が、反応がない。
「………死んでるの?」
「わからない。ブタクマぁ!」
B子は絶望的な気持ちでブタクマの背中を叩いた。力の加減なしに、思いっきり。幾度も幾度も。
「きゃ」
幾度目だろうか、B子の手をブタクマの背中が弾いた。B子は尻餅をつく。
ブタクマは一気に、ごろごろと横に転がり、B子を見た。その目は血走っている。
が、B子を見た瞬間、顔から殺気がとれた。
「B子…か。無事か?!」
ブタクマはのそりと立ちあがった。
「ブタクマ!…よかった…死んでるのかと思った……」
ミチコが安堵の言葉をかける。
「ミチコ!………!!」
「ブタクマぁ。メイコ先生が、メイコ先生が大変なの!お腹を刺されて、腕も切られて…。私達を助けるために…」
B子の感情が交錯する。緊張と緩和、生と死。それらは涙となってB子の体から溢れでる。
「くっ…」
ブタクマは唇を噛みしめた。最悪の事態、なのか最小の被害なのか。ブタクマはただ唇を噛みしめることしかできない。
「ブタクマ!知子は!?知子はどうしたの!?」
ミチコが叫ぶ。
「………知子は連れていかれた」
「そんな…」
「俺が奴らを追う!お前等は先生を病院に運べ!急げ!!」
ブタクマはミチコとB子の落胆をふき飛ばすように言った。
「う、うん」
「ブタクマ、大丈夫なの!?」
ミチコの問いかけに、
「心配するな。大丈夫さ、知子は俺の…」
命に変えても…と言うのは今のふたりには酷だ、とブタクマは思い、
「とにかく、大丈夫だ。行き先はわかっている。さぁ、早く行け!」
と、言った。
「B子、行くよ」
ミチコは走りだした。
ちらりとブタクマの下に倒れていた人物を見る。顔はぐしゃぐしゃだが、服装はあのニセ刑事のもの。
「ちくしょう…」
そうつぶやいて、ミチコとB子は医療を求め校内を出ていった。
ひとり校内に残ったブタクマ、立っているのがやっとというほど体がいうことをきかない。だが意思は体を突き動かす。体みたいな脆弱な奴に心は負けやしない。その意識さえ、今にも消えそうなものなのだが…。
よろよろと裏門に停めてある黒い車、おそらく加藤の車へ。
ドア、カギはついている。
ブタクマは車に乗りこみエンジンをかけた。
「ピンポーン、300メートル先、右折、です」
ナビに設定されていた目的地。I県はO港。
「あいつのバカさ加減にはついていけん」
ブタクマは消えそうな意識のなか、アクセルを踏みしめる。目指すはO港。
続
B子が地面を指差した。
ミチコ、B子の背に冷たい汗が流れる。
「ふたり…ふたりだわ。B子、ふたり倒れてる」
ひとりに覆いかぶさるようにもうひとり。裏門から出るには避けて通れない位置。メイコ先生はミチコに背負われている。考えている時間は無駄だ。
ミチコとB子は意を決して裏門に飛び出た。
「ミチコ!ブタクマだ!上に乗ってるの、ブタクマだわ」
B子は倒れているブタクマに近づいた。B子の額には大きな大きなたんこぶひとつ。
「ブタクマ!ブタクマ!」
B子はブタクマを揺さぶった。が、反応がない。
「………死んでるの?」
「わからない。ブタクマぁ!」
B子は絶望的な気持ちでブタクマの背中を叩いた。力の加減なしに、思いっきり。幾度も幾度も。
「きゃ」
幾度目だろうか、B子の手をブタクマの背中が弾いた。B子は尻餅をつく。
ブタクマは一気に、ごろごろと横に転がり、B子を見た。その目は血走っている。
が、B子を見た瞬間、顔から殺気がとれた。
「B子…か。無事か?!」
ブタクマはのそりと立ちあがった。
「ブタクマ!…よかった…死んでるのかと思った……」
ミチコが安堵の言葉をかける。
「ミチコ!………!!」
「ブタクマぁ。メイコ先生が、メイコ先生が大変なの!お腹を刺されて、腕も切られて…。私達を助けるために…」
B子の感情が交錯する。緊張と緩和、生と死。それらは涙となってB子の体から溢れでる。
「くっ…」
ブタクマは唇を噛みしめた。最悪の事態、なのか最小の被害なのか。ブタクマはただ唇を噛みしめることしかできない。
「ブタクマ!知子は!?知子はどうしたの!?」
ミチコが叫ぶ。
「………知子は連れていかれた」
「そんな…」
「俺が奴らを追う!お前等は先生を病院に運べ!急げ!!」
ブタクマはミチコとB子の落胆をふき飛ばすように言った。
「う、うん」
「ブタクマ、大丈夫なの!?」
ミチコの問いかけに、
「心配するな。大丈夫さ、知子は俺の…」
命に変えても…と言うのは今のふたりには酷だ、とブタクマは思い、
「とにかく、大丈夫だ。行き先はわかっている。さぁ、早く行け!」
と、言った。
「B子、行くよ」
ミチコは走りだした。
ちらりとブタクマの下に倒れていた人物を見る。顔はぐしゃぐしゃだが、服装はあのニセ刑事のもの。
「ちくしょう…」
そうつぶやいて、ミチコとB子は医療を求め校内を出ていった。
ひとり校内に残ったブタクマ、立っているのがやっとというほど体がいうことをきかない。だが意思は体を突き動かす。体みたいな脆弱な奴に心は負けやしない。その意識さえ、今にも消えそうなものなのだが…。
よろよろと裏門に停めてある黒い車、おそらく加藤の車へ。
ドア、カギはついている。
ブタクマは車に乗りこみエンジンをかけた。
「ピンポーン、300メートル先、右折、です」
ナビに設定されていた目的地。I県はO港。
「あいつのバカさ加減にはついていけん」
ブタクマは消えそうな意識のなか、アクセルを踏みしめる。目指すはO港。
続