“コスメティックもろざし”〈七十七〉
「……………確かな手応えを感じたぜ。えぇ、おい。まだ意識はあるのかい?」
加藤の独り言が虚しく夜の闇に吸い込まれていく。
ブタクマは加藤の足元に這いつくばったまま、まったく動かない。
「どれ」
加藤はブタクマの頭を軽く蹴る。頭は蹴りの衝撃で一瞬横を向き、また地面にくちづけをした。ヨーヨーのように軽い蹴り心地。一瞬見えたブタクマの死んだ魚の目。
「終わった…な。」
加藤はブタクマの死を確信した。
「…………ホウレンソウ、か」
加藤はポケットから携帯電話を取りだした。
「あぁ、ラニオさんよ、今しがたブタクマを始末したぜ。他の奴らも、まぁ予想外な事態があってグルカ兵のひとりがやられたが、大丈夫だ。問題ないだろ?で、残骸はどうする?こいつらもO港に持ってくのか?………………そうか、わかった。ではO港で」
電話をポケットにしまう最中、加藤は自分の両足、かかとになにかが絡みついているのを見た。
それはブタクマの手だった。
気づいたと同時に加藤は尻餅をつく。自慢の脚力で反撃を試みようとするが、無力。
ブタクマの手は加藤の足首を脱臼させるほど強く握っていたのだ。
尻餅をついた加藤がぐいっとブタクマに引き寄せられる。馬乗り、マウントポジション。近代総合格闘技必殺の位置関係。ましてや加藤は空手出身、寝技に精通していない。
加藤が見た最期の光景。
それは視界いっぱいに広がるブタクマの大きな手のひらだった。
「…………お喋りが過ぎたな…………」
ブタクマはぐしゃぐしゃになった加藤の顔、そして後頭部から流れでる血を確認すると、意識を失った。
「先生、ほんとに大丈夫?」
「バカ!大丈夫なわけないでしょ!?」
「B子、ミチコ、今はそんなことはどうでもいいのよ」
メイコ先生の顔からは既に生気を感じられないほどだった。
3人は裏門へと急ぐ。それしか選択肢はない。
階段を降りきり、一階につく。長い廊下、この先を曲がれば………。
しかし、
「キャキャキャキャキャキャ、オンナ、シンダカ?スモー、シンダネ」
曲がり角の先から老兵の声。
「先生、こっちよ!」
ミチコはふり返り、走りだそうとしたが、
「ミチコ、ダメよ。逃げることばかり考えていると、人間は弱くなるものよ。おそらく、逃げたらやられるわ。こいつは今、ここで倒す。左腕の恨みも放っておけないわ。それに……」
メイコ先生の言葉に足を止めた。
「で、でも」
「B子、左腕を貸して」
「えっ、はい」
B子は持っていたメイコ先生の左腕を渡した。
「ミチコ、木刀を準備して…あなたがやるのよ。大丈夫、人間歳には勝てない。こいつもただのよぼよぼジジィだわ」
曲がり角から老兵が現れた。
「ミツケタヨ、プリティーガールズ、オット、オンナ、マダイキテタネ、シブトイシブトイ、キャキャ、モウ、セックス、ナシネ、コロス、ダケヨ」
「ミチコ、B子、突っ込むわよ、バラバラにならないで、私の後ろに続いて。どんなことがあっても、あなた達はこいつを倒すことだけを考えて行動すること、わかった!?行くわよ」
返事を待たずメイコ先生は右腕に左腕を持ち老兵へと走りだした。
続
加藤の独り言が虚しく夜の闇に吸い込まれていく。
ブタクマは加藤の足元に這いつくばったまま、まったく動かない。
「どれ」
加藤はブタクマの頭を軽く蹴る。頭は蹴りの衝撃で一瞬横を向き、また地面にくちづけをした。ヨーヨーのように軽い蹴り心地。一瞬見えたブタクマの死んだ魚の目。
「終わった…な。」
加藤はブタクマの死を確信した。
「…………ホウレンソウ、か」
加藤はポケットから携帯電話を取りだした。
「あぁ、ラニオさんよ、今しがたブタクマを始末したぜ。他の奴らも、まぁ予想外な事態があってグルカ兵のひとりがやられたが、大丈夫だ。問題ないだろ?で、残骸はどうする?こいつらもO港に持ってくのか?………………そうか、わかった。ではO港で」
電話をポケットにしまう最中、加藤は自分の両足、かかとになにかが絡みついているのを見た。
それはブタクマの手だった。
気づいたと同時に加藤は尻餅をつく。自慢の脚力で反撃を試みようとするが、無力。
ブタクマの手は加藤の足首を脱臼させるほど強く握っていたのだ。
尻餅をついた加藤がぐいっとブタクマに引き寄せられる。馬乗り、マウントポジション。近代総合格闘技必殺の位置関係。ましてや加藤は空手出身、寝技に精通していない。
加藤が見た最期の光景。
それは視界いっぱいに広がるブタクマの大きな手のひらだった。
「…………お喋りが過ぎたな…………」
ブタクマはぐしゃぐしゃになった加藤の顔、そして後頭部から流れでる血を確認すると、意識を失った。
「先生、ほんとに大丈夫?」
「バカ!大丈夫なわけないでしょ!?」
「B子、ミチコ、今はそんなことはどうでもいいのよ」
メイコ先生の顔からは既に生気を感じられないほどだった。
3人は裏門へと急ぐ。それしか選択肢はない。
階段を降りきり、一階につく。長い廊下、この先を曲がれば………。
しかし、
「キャキャキャキャキャキャ、オンナ、シンダカ?スモー、シンダネ」
曲がり角の先から老兵の声。
「先生、こっちよ!」
ミチコはふり返り、走りだそうとしたが、
「ミチコ、ダメよ。逃げることばかり考えていると、人間は弱くなるものよ。おそらく、逃げたらやられるわ。こいつは今、ここで倒す。左腕の恨みも放っておけないわ。それに……」
メイコ先生の言葉に足を止めた。
「で、でも」
「B子、左腕を貸して」
「えっ、はい」
B子は持っていたメイコ先生の左腕を渡した。
「ミチコ、木刀を準備して…あなたがやるのよ。大丈夫、人間歳には勝てない。こいつもただのよぼよぼジジィだわ」
曲がり角から老兵が現れた。
「ミツケタヨ、プリティーガールズ、オット、オンナ、マダイキテタネ、シブトイシブトイ、キャキャ、モウ、セックス、ナシネ、コロス、ダケヨ」
「ミチコ、B子、突っ込むわよ、バラバラにならないで、私の後ろに続いて。どんなことがあっても、あなた達はこいつを倒すことだけを考えて行動すること、わかった!?行くわよ」
返事を待たずメイコ先生は右腕に左腕を持ち老兵へと走りだした。
続