“コスメティックもろざし”獅子身中の虫〈七十六〉
「カトウ、カトウ、タイヘン、オンナ、キタ、アイカタ、ヤラレタネ」
老兵の左腕はだらりと垂れて、老兵が身振り手振りで状況を説明する度、あり得ないほうに動く。メイコ先生と撃ち合った時に負傷したのだ。骨が折れている。しかし痛みは感じていないらしい。
「…で、なんでお前はここに来たんだ?始末したのか?」
加藤は低い声で校舎から駆け寄ってきた老兵に言った。
「イヤ、マダネ」
「なんだと!?ふざけるな!とっとと始末してこい!まさかできないわけじゃないよな?」
「カトウ、ホウコク、レンラク、ソウダン、コレ、ダイジネ、シャカイノジョウシキネ、ホウレンソウネ、カトウ、シラナイ、バカネ、キタ、オンナ、ダイジョウブ、ウデ、キリオトシタネ、モウ、ムシノイキヨ」
その時、老兵の後ろの闇、ゴミ置き場から、ガシャガシャと音がした。
ぱっと老兵は加藤のほうへマシラのように飛ぶ。
「コレ、ダレ、カトウ」
老兵は夜目がきくようだ。
「ほう、まだ息があったか。頑丈な男だ。こいつはジャパニーズ・スモー・レスラー。俺の友達さ」
「オォ、スモー、スモー、デブ、スモー、コイツ、コロス?」
「あぁ、俺がな。お前は早く残りを始末してこい。逃がしたらただじゃおかんぞ」
「オッケー、オッケー、ダイジョウブ、ミー、ミミ、イイヨ、ガッコウ、ナカ、オトヒビクネ、ドコニイル、マルワカリネ」
「させるか!」
闇の中からブタクマが叫んだ。失った意識に流れこんできた言葉。絶望的な焦燥感がブタクマの意識を呼び覚ました。
が、肉体のダメージは深く、思うように動けない。ブタクマは手元のゴミ袋を老兵に向かって投げた。
ゴミ袋はまっすぐ老兵に向かっていったが、突然空中で向きを変えた。
加藤が目にもとまらぬ蹴りを放ち、ゴミ袋を闇の彼方へと飛ばしたのだ。
「早く行きな」
「キャキャキャキャキャ」
老兵は乾いた笑い声を残して校舎の中へと入っていった。
「ふん、タフな野郎だ。まだやられたりないとみえる。しかし、可笑しい」
加藤はクスクス笑う。
「確かにお前以外にも誰か来たようだが、女とはな。いやはや、お強い友達がいたもんだ。ひとりやられてしまったらしい。だがそいつも死ぬぜ。いや、もう死んでるかもな」
ブタクマはなんとか立ちあがる。膝はふるえ、腕に力が入らない。
「あんな老人にあの人、あいつらが負けるかよ」
ブタクマは心の底から吐きだした。それは加藤ではなく、自身へのメッセージ。
「負け犬はよく吠えるもんだ。あいつらはただの老人じゃない。殺しのプロさ。それに俺達同様“コレ”でパワーアップしている」
加藤は注射を腕に打つ動作をした。
「今のお前はまさに“獅子身中の虫”だな。俺達獅子の前では、お前など小さな虫に過ぎない」
加藤は大げさに手を広げた。
「…バカにつける薬を打ってもらったほうがよかったな。“獅子身中の虫”の意味が違うぞ。いくら強い獅子でも体の中にいる小さな虫には勝てない、味方についていながら害をなすものをたとえる言葉だ。ははは、“獅子身中の虫”、文字通りいくら獅子のように大きかろうがお前等は、いつでも気の向いた時握りつぶせると思っている小さな俺達に勝てない」
「うるせぇ、殺す!」
加藤は怒り心頭。自身の知ったかぶりが原因なのだが…。怒りにまかせ強烈な前蹴りをブタクマの隙だらけのみぞおちに突き刺した。
ブタクマは体を“くの字”、その下がった顔面に加藤は膝蹴りを見舞った。
ブタクマは膝蹴りの衝撃でピンと背が伸びた。しかし維持することはかなわず、前のめりに、加藤の足元に這いつくばるような形で倒れた。
続
老兵の左腕はだらりと垂れて、老兵が身振り手振りで状況を説明する度、あり得ないほうに動く。メイコ先生と撃ち合った時に負傷したのだ。骨が折れている。しかし痛みは感じていないらしい。
「…で、なんでお前はここに来たんだ?始末したのか?」
加藤は低い声で校舎から駆け寄ってきた老兵に言った。
「イヤ、マダネ」
「なんだと!?ふざけるな!とっとと始末してこい!まさかできないわけじゃないよな?」
「カトウ、ホウコク、レンラク、ソウダン、コレ、ダイジネ、シャカイノジョウシキネ、ホウレンソウネ、カトウ、シラナイ、バカネ、キタ、オンナ、ダイジョウブ、ウデ、キリオトシタネ、モウ、ムシノイキヨ」
その時、老兵の後ろの闇、ゴミ置き場から、ガシャガシャと音がした。
ぱっと老兵は加藤のほうへマシラのように飛ぶ。
「コレ、ダレ、カトウ」
老兵は夜目がきくようだ。
「ほう、まだ息があったか。頑丈な男だ。こいつはジャパニーズ・スモー・レスラー。俺の友達さ」
「オォ、スモー、スモー、デブ、スモー、コイツ、コロス?」
「あぁ、俺がな。お前は早く残りを始末してこい。逃がしたらただじゃおかんぞ」
「オッケー、オッケー、ダイジョウブ、ミー、ミミ、イイヨ、ガッコウ、ナカ、オトヒビクネ、ドコニイル、マルワカリネ」
「させるか!」
闇の中からブタクマが叫んだ。失った意識に流れこんできた言葉。絶望的な焦燥感がブタクマの意識を呼び覚ました。
が、肉体のダメージは深く、思うように動けない。ブタクマは手元のゴミ袋を老兵に向かって投げた。
ゴミ袋はまっすぐ老兵に向かっていったが、突然空中で向きを変えた。
加藤が目にもとまらぬ蹴りを放ち、ゴミ袋を闇の彼方へと飛ばしたのだ。
「早く行きな」
「キャキャキャキャキャ」
老兵は乾いた笑い声を残して校舎の中へと入っていった。
「ふん、タフな野郎だ。まだやられたりないとみえる。しかし、可笑しい」
加藤はクスクス笑う。
「確かにお前以外にも誰か来たようだが、女とはな。いやはや、お強い友達がいたもんだ。ひとりやられてしまったらしい。だがそいつも死ぬぜ。いや、もう死んでるかもな」
ブタクマはなんとか立ちあがる。膝はふるえ、腕に力が入らない。
「あんな老人にあの人、あいつらが負けるかよ」
ブタクマは心の底から吐きだした。それは加藤ではなく、自身へのメッセージ。
「負け犬はよく吠えるもんだ。あいつらはただの老人じゃない。殺しのプロさ。それに俺達同様“コレ”でパワーアップしている」
加藤は注射を腕に打つ動作をした。
「今のお前はまさに“獅子身中の虫”だな。俺達獅子の前では、お前など小さな虫に過ぎない」
加藤は大げさに手を広げた。
「…バカにつける薬を打ってもらったほうがよかったな。“獅子身中の虫”の意味が違うぞ。いくら強い獅子でも体の中にいる小さな虫には勝てない、味方についていながら害をなすものをたとえる言葉だ。ははは、“獅子身中の虫”、文字通りいくら獅子のように大きかろうがお前等は、いつでも気の向いた時握りつぶせると思っている小さな俺達に勝てない」
「うるせぇ、殺す!」
加藤は怒り心頭。自身の知ったかぶりが原因なのだが…。怒りにまかせ強烈な前蹴りをブタクマの隙だらけのみぞおちに突き刺した。
ブタクマは体を“くの字”、その下がった顔面に加藤は膝蹴りを見舞った。
ブタクマは膝蹴りの衝撃でピンと背が伸びた。しかし維持することはかなわず、前のめりに、加藤の足元に這いつくばるような形で倒れた。
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