“コスメティックもろざし”〈七十二〉
「おいおい、いつまで這いつくばってるんだ?まさかこれで終わりじゃねえよな。俺はお前に1回殺されてるんだぜ。お前の頭突きのせいで心臓がぐちゃぐちゃになっちまってな。おら、立てよ。まだまだやりたりねぇんだよ、熊若丸さんよぉ」
ブタクマは加藤の挑発を聞いてゆっくり、腕立て伏せをするように立ちあがり、唾を吐いた。唾には多分に血が含まれている。
「貴様、知子をどこへやった!」
ブタクマは獣のような目で加藤を睨んだ。しかし、先程の加藤が放ったハイキックは深刻なダメージをブタクマに与えている。足に力が入らない。ふらつかないのがやっとだ。
立ちあがったブタクマに加藤は一足跳びに近づき、強烈なローキック。
ブタクマは棒立ちのまま加藤のローキックを膝の真横に受けた。
ガキッ、
という、丸太を鉄の棒でぶっ叩いたかのような音が響く。
が、体勢はブレない。
「へへっ、さすがだな。まだ鍛えているのか?だがどこまで耐えられるかな」
加藤は距離をとってブタクマの周囲を回る。右に左に機敏なフットワーク。たとえハイキックのダメージが無くても果たしてブタクマに加藤を自分の間合いに入れることができただろうか。ましてや今のブタクマには…。
加藤は回りながら、ブタクマから隙を見出した瞬間、電光石火、ローキックを撃ち込む。
10発程受けたブタクマはがくりと、意志に反して、膝をついた。
「そういえばあんた膝を怪我していたな。階段から落ちたんだろ。それでトラックにひかれたんだよな。ふふふ、力士の足の裏ってのは分厚くなっていて、たとえ画鋲を踏んだとしても気づかないほどだと聞いたなぁ。朝履いた草履に強力な幻覚剤が入った注射針が仕込まれていたとしても気づかないんだろうなぁ」
「知子をどこへやった!」
ブタクマは片膝を地につけたまま、ぎろりと加藤を下から睨む。今は己のことなど関係なかった。
「ふ、会話もできないバカめ。トラックの運転手は見つからなかったんだよな。よかったな。見つかったぜ。俺だよ」
加藤はブタクマの立てている膝にローキックを放った。
ブタクマは受けた瞬間横に転がりローキックの衝撃を流す。
「そうこなくっちゃな。俺はお前に殺されたあと、根来さんに、お前は死んだ、と聞いて、それはそれは落胆したものさ。もう二度とお前にリベンジできないかと思うとなぁ。夜もろくに眠れなかったぜ。それがどうだ、何年前だったかお前が草刈部屋にやって来たのを見た時、ふるえたぜ。ぶっ殺してやる!」
再び加藤はブタクマにローキックを放った。ブタクマはこれまた横に転がる。
「…はははは」
ブタクマが笑いだした。
「ふん、気でもふれたか」
「いや、俺は貴様と違って冷静だ。なに、お前がどうしようもないバカだと思ってな」
ブタクマは下から睨みつけながら言う。
「なんだと?!」
「俺が死んだと聞いただと?はははは、俺は普通に生きてたぞ。自分でなにか調べることはしなかったのか?あの時俺が死ねば、新聞にだって載るだろ?お前、辞書をひいたことあるか?無いだろ。俺は今教師をしている。お前みたいな、人から言われたことしか認識しない、自分でなにも考えられないやつはダメだ。教師としてまったく興味がわかない。小学校から出直しな」
ブタクマは追いつめられている。知子を助けるためには今こいつを倒さねばならない。そのためになんとかダメージを回復しようと時間を稼いでいる。
「貴様…」
加藤のローキック、ブタクマは転がり、
「なんなら俺が再教育してやろうか?まぁ何年たっても成長の見込みは無いけどな」
「……………ふん、余裕ぶりやがって。ほんとはギリギリなんだろ?え、おい。貴様にいいことを教えてやろう。知子を捕まえるとき、ふたり余分なものがくっついていた。今頃俺の部下達がふたりを始末しているぜ。知子が知ったら悲しむだろうなぁ」
ブタクマの背に冷たいものが流れた。が、
「………お前の部下、か。世界で一番かわいそうな連中だ」
と、加藤を挑発した。
加藤は怒りにふるえながらローキック、ブタクマは転がる。
「ここに来たのは、俺ひとりじゃないんだよ」
ブタクマは言った。虚勢を張る筈の声だったが、その声は心なしか悲痛なものだった。
続
ブタクマは加藤の挑発を聞いてゆっくり、腕立て伏せをするように立ちあがり、唾を吐いた。唾には多分に血が含まれている。
「貴様、知子をどこへやった!」
ブタクマは獣のような目で加藤を睨んだ。しかし、先程の加藤が放ったハイキックは深刻なダメージをブタクマに与えている。足に力が入らない。ふらつかないのがやっとだ。
立ちあがったブタクマに加藤は一足跳びに近づき、強烈なローキック。
ブタクマは棒立ちのまま加藤のローキックを膝の真横に受けた。
ガキッ、
という、丸太を鉄の棒でぶっ叩いたかのような音が響く。
が、体勢はブレない。
「へへっ、さすがだな。まだ鍛えているのか?だがどこまで耐えられるかな」
加藤は距離をとってブタクマの周囲を回る。右に左に機敏なフットワーク。たとえハイキックのダメージが無くても果たしてブタクマに加藤を自分の間合いに入れることができただろうか。ましてや今のブタクマには…。
加藤は回りながら、ブタクマから隙を見出した瞬間、電光石火、ローキックを撃ち込む。
10発程受けたブタクマはがくりと、意志に反して、膝をついた。
「そういえばあんた膝を怪我していたな。階段から落ちたんだろ。それでトラックにひかれたんだよな。ふふふ、力士の足の裏ってのは分厚くなっていて、たとえ画鋲を踏んだとしても気づかないほどだと聞いたなぁ。朝履いた草履に強力な幻覚剤が入った注射針が仕込まれていたとしても気づかないんだろうなぁ」
「知子をどこへやった!」
ブタクマは片膝を地につけたまま、ぎろりと加藤を下から睨む。今は己のことなど関係なかった。
「ふ、会話もできないバカめ。トラックの運転手は見つからなかったんだよな。よかったな。見つかったぜ。俺だよ」
加藤はブタクマの立てている膝にローキックを放った。
ブタクマは受けた瞬間横に転がりローキックの衝撃を流す。
「そうこなくっちゃな。俺はお前に殺されたあと、根来さんに、お前は死んだ、と聞いて、それはそれは落胆したものさ。もう二度とお前にリベンジできないかと思うとなぁ。夜もろくに眠れなかったぜ。それがどうだ、何年前だったかお前が草刈部屋にやって来たのを見た時、ふるえたぜ。ぶっ殺してやる!」
再び加藤はブタクマにローキックを放った。ブタクマはこれまた横に転がる。
「…はははは」
ブタクマが笑いだした。
「ふん、気でもふれたか」
「いや、俺は貴様と違って冷静だ。なに、お前がどうしようもないバカだと思ってな」
ブタクマは下から睨みつけながら言う。
「なんだと?!」
「俺が死んだと聞いただと?はははは、俺は普通に生きてたぞ。自分でなにか調べることはしなかったのか?あの時俺が死ねば、新聞にだって載るだろ?お前、辞書をひいたことあるか?無いだろ。俺は今教師をしている。お前みたいな、人から言われたことしか認識しない、自分でなにも考えられないやつはダメだ。教師としてまったく興味がわかない。小学校から出直しな」
ブタクマは追いつめられている。知子を助けるためには今こいつを倒さねばならない。そのためになんとかダメージを回復しようと時間を稼いでいる。
「貴様…」
加藤のローキック、ブタクマは転がり、
「なんなら俺が再教育してやろうか?まぁ何年たっても成長の見込みは無いけどな」
「……………ふん、余裕ぶりやがって。ほんとはギリギリなんだろ?え、おい。貴様にいいことを教えてやろう。知子を捕まえるとき、ふたり余分なものがくっついていた。今頃俺の部下達がふたりを始末しているぜ。知子が知ったら悲しむだろうなぁ」
ブタクマの背に冷たいものが流れた。が、
「………お前の部下、か。世界で一番かわいそうな連中だ」
と、加藤を挑発した。
加藤は怒りにふるえながらローキック、ブタクマは転がる。
「ここに来たのは、俺ひとりじゃないんだよ」
ブタクマは言った。虚勢を張る筈の声だったが、その声は心なしか悲痛なものだった。
続