“コスメティックもろざし”〈五十九〉
すこん、くるるん。
転がされた渡辺さんは知子の変化を思い知った。
以前会ったときより30キロ近く増えた体重は体を一回りも二周りもでかくしている。脂肪そして筋肉。肉、肉、肉。
ぶつかりあった渡辺さんは、ぶつかった瞬間まわしを引きつけられて、なにも出来ずいなすように投げられた。
「ほう」
ブタクマは知子の成長に驚いた。たしかに知子が強くなったことは身にしみてわかっていた。しかし普段からつきっきりで練習していることで知子の客観的な実力がいまいち掴めなかった。半年に満たない期間で前回奇跡がおきて勝ったような相手をいとも簡単に投げてみせた知子。驚かずにはいられなかった。
「あ~くそ、もう一丁」
渡辺さんは明るく言い放ち、立ちあがる。
その後ブタクマを交え、何度も何度もぶつかる。はじける汗のしぶき、はちきれんばかりに締めつけられた肉、丸めたトイレットペーパーを鼻につめる。
さすが渡辺さん、出鼻こそくじかれたものの、女子相撲トップクラスの実力は生半可なものではない。知子を幾度となく投げ、押し出した。
その渡辺さん相手に知子も勝ったり負けたり。すごいことだ。
練習が一段落し、ブタクマが去った相撲場、リラックスしたなかでウェイトトレーニング。
「今日はがっかりしたわ」
渡辺さんが突然知子に話しかけた。
びくり、
“なにかやっちゃったかしら?”
知子の脳内に本日、渡辺さんに会ってからの映像がスパークする。
どうしていいかわからない知子に、
「…ここ女子校なのね。共学だと勝手に決めつけてたわ……でもそりゃそうよね。あの大学の付属校だもんね。はなっから気づくべきだったわ」
「ひ、ひやひやさせないでくださいよ。怒られるって覚悟しましたよ」
「あ、ごめんごめん。ところでさ、トンカツとポークソテー、今の気分は?」
「う~ん、ポークソテーですかね、ネギを胡麻油にひたして豚肉が焼きあがる直前にさっと入れるとうまいんですよね。味付けは塩コショウだけで醤油を使わずに」
「へー、醤油を使わないの。私なんにでも入れちゃうのよ、醤油。なるほどねぇ、夕飯は決まりね、さっそく家で作ってみるわ」
「え、……勘違いさせないでくださいよ。おごってくれるのかと思いましたよ」
「あ、ごめんごめん。ところでさ………………」
大会での再会を約束し解散。
充実した体の痛みを感じながら学校を出ると、校門前にミチコとB子がいる。
「お、来た来た。知子ぉ」
大げさに手をふるミチコ。
「ちょっと家出するからさぁ、今晩知子んち泊めてくれぇ」
「別にかまわないけど、家出ってなんかあったの?」
「いやなに、つまらないよくある親子喧嘩ってやつよ。ちなみにB子は道連れ」
「道連れって…B子は今日うちに泊まるの?」
「そりゃ泊まりますよ。わたしゃ泊まりますよ」
「あぁ…そう……いいけど」
「腹へったよ、なんか食いにいこうよ」
「あ、ちょっと待って。今日はさ、うちで食わない?作るからさ」
「お、それもいいねぇ。で、なに作ってくれんの?」
「ポークソテー」
続
転がされた渡辺さんは知子の変化を思い知った。
以前会ったときより30キロ近く増えた体重は体を一回りも二周りもでかくしている。脂肪そして筋肉。肉、肉、肉。
ぶつかりあった渡辺さんは、ぶつかった瞬間まわしを引きつけられて、なにも出来ずいなすように投げられた。
「ほう」
ブタクマは知子の成長に驚いた。たしかに知子が強くなったことは身にしみてわかっていた。しかし普段からつきっきりで練習していることで知子の客観的な実力がいまいち掴めなかった。半年に満たない期間で前回奇跡がおきて勝ったような相手をいとも簡単に投げてみせた知子。驚かずにはいられなかった。
「あ~くそ、もう一丁」
渡辺さんは明るく言い放ち、立ちあがる。
その後ブタクマを交え、何度も何度もぶつかる。はじける汗のしぶき、はちきれんばかりに締めつけられた肉、丸めたトイレットペーパーを鼻につめる。
さすが渡辺さん、出鼻こそくじかれたものの、女子相撲トップクラスの実力は生半可なものではない。知子を幾度となく投げ、押し出した。
その渡辺さん相手に知子も勝ったり負けたり。すごいことだ。
練習が一段落し、ブタクマが去った相撲場、リラックスしたなかでウェイトトレーニング。
「今日はがっかりしたわ」
渡辺さんが突然知子に話しかけた。
びくり、
“なにかやっちゃったかしら?”
知子の脳内に本日、渡辺さんに会ってからの映像がスパークする。
どうしていいかわからない知子に、
「…ここ女子校なのね。共学だと勝手に決めつけてたわ……でもそりゃそうよね。あの大学の付属校だもんね。はなっから気づくべきだったわ」
「ひ、ひやひやさせないでくださいよ。怒られるって覚悟しましたよ」
「あ、ごめんごめん。ところでさ、トンカツとポークソテー、今の気分は?」
「う~ん、ポークソテーですかね、ネギを胡麻油にひたして豚肉が焼きあがる直前にさっと入れるとうまいんですよね。味付けは塩コショウだけで醤油を使わずに」
「へー、醤油を使わないの。私なんにでも入れちゃうのよ、醤油。なるほどねぇ、夕飯は決まりね、さっそく家で作ってみるわ」
「え、……勘違いさせないでくださいよ。おごってくれるのかと思いましたよ」
「あ、ごめんごめん。ところでさ………………」
大会での再会を約束し解散。
充実した体の痛みを感じながら学校を出ると、校門前にミチコとB子がいる。
「お、来た来た。知子ぉ」
大げさに手をふるミチコ。
「ちょっと家出するからさぁ、今晩知子んち泊めてくれぇ」
「別にかまわないけど、家出ってなんかあったの?」
「いやなに、つまらないよくある親子喧嘩ってやつよ。ちなみにB子は道連れ」
「道連れって…B子は今日うちに泊まるの?」
「そりゃ泊まりますよ。わたしゃ泊まりますよ」
「あぁ…そう……いいけど」
「腹へったよ、なんか食いにいこうよ」
「あ、ちょっと待って。今日はさ、うちで食わない?作るからさ」
「お、それもいいねぇ。で、なに作ってくれんの?」
「ポークソテー」
続