“コスメティックもろざし”〈五十三〉
で、でかい…。
土俵の上で正面から凄みを浴びせられるとより一層でかい。
2回戦の相手、渡辺さんはとてもでかかった。150キロはあるのではないか。身長もあるので、髷を結ったら力士そのものだ。
この渡辺という女力士、近代競技女相撲の伝道師のような人で、前々回までこの大会を5連覇、世界大会も3連覇して何度もメディアに取り上げられ、女相撲の普及に貢献してきた人だ。
ちなみに去年関取と結婚している。
どよどよと空気が揺れる。1回戦で豪快な勝ち方をした知子と何度かテレビで観たことがある、これまた1回戦豪快に投げ飛ばして勝った渡辺さん。観客は静かに盛り上がっている。
ブタクマはじっと土俵を見つめている。知子と渡辺さん、10番相撲を取ればまず7番は負ける、だが決して勝てない相手ではない。ブタクマはそう思っている。
冷静に行け。普段の練習通りに動くんだ。ブタクマは祈る。
知子は完全に渡辺さんに呑まれている。勝負を投げ出して、へらへらと笑いながら、こりゃねぇよ、と叫びたい。
当然そんなこと出来るはずが無く、知子は腰を沈める。
「はっけよぉい」
知子と渡辺さんは互いに真っ正面からぶつかり合った。
90キロぐらいの相手を吹き飛ばした知子のぶちかましだが、渡辺さんには通じていない。ずずずっと押される。
知子は押されながらも、なんとか動き続ける。渡辺さんの体勢を崩そうと右に左に振る。が、ビクともしない。
為す術無くぐいぐい押されていく。知子は渡辺さんに組み手を捕られないことに精一杯だ。
遂に土俵際、俵に足がかかる。
とっさに、知子は渡辺さんの胸に頭をつけて、体を仰け反らせないようにした。
だがそれは知子のまわしをがら空きにした。渡辺さんは即座に下手でまわしを掴む。
知子、絶体絶命のピンチ。
その時、
「いまだ」
と、ブタクマの声がした。
ちらりとブタクマの顔を見た知子。顔を真っ赤にして応援されている。知子は、
「やってやる」
と、意識した。
知子は俵を利用して両の足で踏ん張る。まわしを掴まれていたが強引に腰を沈める。
渡辺さんの体勢がわずかにぐらついて、“人”の字の様に知子に体重を預ける形になった。
知子は渡辺さんの肘の内側に出来た空間に腕を差し込み巻き返す。渡辺さんの下手をとり、思いっきり引きつける。
重心のコントロールを失っていた渡辺さんは抵抗することが出来ない。上手からまわしを掴んではいるものの、下半身の自由を奪われている状態ではどうすることも出来ない。
知子は腰を上げる。それは必然的に渡辺さんの体を浮かしていく。渡辺さんは爪先立ちになった。
渡辺さん、絶体絶命。
だがしかし、渡辺さんは諦めていない。最後の攻撃、渡辺さんは敢えて完全に知子に体を預けた。
150キロの重みが知子を襲う。渡辺さんの爪先は、土俵についているが、体重を支えていない。知子は“く”の字のような体勢で渡辺さんを支えている。体の裏側が軋む。
「やってやるんだ。うぉぉぉおおぉぉぉぉ」
知子の体に、踏ん張る足、引きつける腕、体重が乗っている腰に、力が漲る。
渡辺さんの爪先が土俵から離れる。
知子は体を捻った。
遂に倒れ込み土俵から転げ落ちた2人。
行司は知子に軍配を上げた。
続
土俵の上で正面から凄みを浴びせられるとより一層でかい。
2回戦の相手、渡辺さんはとてもでかかった。150キロはあるのではないか。身長もあるので、髷を結ったら力士そのものだ。
この渡辺という女力士、近代競技女相撲の伝道師のような人で、前々回までこの大会を5連覇、世界大会も3連覇して何度もメディアに取り上げられ、女相撲の普及に貢献してきた人だ。
ちなみに去年関取と結婚している。
どよどよと空気が揺れる。1回戦で豪快な勝ち方をした知子と何度かテレビで観たことがある、これまた1回戦豪快に投げ飛ばして勝った渡辺さん。観客は静かに盛り上がっている。
ブタクマはじっと土俵を見つめている。知子と渡辺さん、10番相撲を取ればまず7番は負ける、だが決して勝てない相手ではない。ブタクマはそう思っている。
冷静に行け。普段の練習通りに動くんだ。ブタクマは祈る。
知子は完全に渡辺さんに呑まれている。勝負を投げ出して、へらへらと笑いながら、こりゃねぇよ、と叫びたい。
当然そんなこと出来るはずが無く、知子は腰を沈める。
「はっけよぉい」
知子と渡辺さんは互いに真っ正面からぶつかり合った。
90キロぐらいの相手を吹き飛ばした知子のぶちかましだが、渡辺さんには通じていない。ずずずっと押される。
知子は押されながらも、なんとか動き続ける。渡辺さんの体勢を崩そうと右に左に振る。が、ビクともしない。
為す術無くぐいぐい押されていく。知子は渡辺さんに組み手を捕られないことに精一杯だ。
遂に土俵際、俵に足がかかる。
とっさに、知子は渡辺さんの胸に頭をつけて、体を仰け反らせないようにした。
だがそれは知子のまわしをがら空きにした。渡辺さんは即座に下手でまわしを掴む。
知子、絶体絶命のピンチ。
その時、
「いまだ」
と、ブタクマの声がした。
ちらりとブタクマの顔を見た知子。顔を真っ赤にして応援されている。知子は、
「やってやる」
と、意識した。
知子は俵を利用して両の足で踏ん張る。まわしを掴まれていたが強引に腰を沈める。
渡辺さんの体勢がわずかにぐらついて、“人”の字の様に知子に体重を預ける形になった。
知子は渡辺さんの肘の内側に出来た空間に腕を差し込み巻き返す。渡辺さんの下手をとり、思いっきり引きつける。
重心のコントロールを失っていた渡辺さんは抵抗することが出来ない。上手からまわしを掴んではいるものの、下半身の自由を奪われている状態ではどうすることも出来ない。
知子は腰を上げる。それは必然的に渡辺さんの体を浮かしていく。渡辺さんは爪先立ちになった。
渡辺さん、絶体絶命。
だがしかし、渡辺さんは諦めていない。最後の攻撃、渡辺さんは敢えて完全に知子に体を預けた。
150キロの重みが知子を襲う。渡辺さんの爪先は、土俵についているが、体重を支えていない。知子は“く”の字のような体勢で渡辺さんを支えている。体の裏側が軋む。
「やってやるんだ。うぉぉぉおおぉぉぉぉ」
知子の体に、踏ん張る足、引きつける腕、体重が乗っている腰に、力が漲る。
渡辺さんの爪先が土俵から離れる。
知子は体を捻った。
遂に倒れ込み土俵から転げ落ちた2人。
行司は知子に軍配を上げた。
続