“コスメティックもろざし”土俵デビュー〈五十二〉 | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

“コスメティックもろざし”土俵デビュー〈五十二〉

晴れ渡る冬の日、A区総合スポーツセンターに集まる集まる規格外の、否、ここでは至って常識的で合理的なサイズの女達。下は13歳から上は42歳、15名ほどの女力士がトーナメント形式で日本の頂点を争う。優勝者は世界大会の日本代表になる。
女相撲普及委員会会長のスピーチ。
まずは地元小学生のわんぱく相撲。
冬の空の下、寒さで震える子、寒さなどまったく意に介さない子、泣きじゃくる子、笑う父母、怒る父母。露骨に相手方を睨む父母。家庭は様々だ。
人数が少ないのでトーナメントはすぐに終わった。表彰式。ぺこりと頭を下げてモチモチした少年が表彰状を貰い、首にメダルをかけてもらう。
ブタクマは知子のウォーミングアップを中断してまでこの様子をじっと見ていた。
遠いあやふやな記憶。相撲と自分の運命。祝う日もあったし呪う日もあった。
わんぱく相撲の部が終わった。
何も挟まず本日のメインイベント、全国女相撲大会が始まった。
第一試合さっそく知子の出番だ。相手は90キロぐらいの大学相撲サークルからの参戦。
一目みてブタクマはこの女の子がまだ相撲初心者、素人に毛が生えた程度の実力だということを見抜いた。今の知子なら問題無い相手だ。だがそのことを知子には一切告げずに、
「お前のほうが重い。思い切ってぶつかれ」と言って土俵に送り出した。
隣の芝生は青く見える。知子はその対戦相手があたかも百戦錬磨の達人に見えた。年上だし大学で相撲をやってるし私はまだブタクマ以外と相撲をとったことないし。
あぁ、行司がなんか言ってる…。
知子は体をガチガチに硬直させている。気が遠ざかっていく。
「はっけよぉい」
行司の響く声。
「思い切ってぶつかれ」
知子の心の中に唯一残った言葉。
相手が動いた。知子はわずかに遅れてぶちかましに行く。
「のこったぁ」
行司が一声発した時には勝負はついていた。
知子はガチンという音と共に突き上げるようにぶちかまし、相手を吹き飛ばしていた。
相手は背中から着いて、後転するように土俵を転げ落ちた。
まさに晴天の霹靂とでも言うべきどよめきがわんぱく相撲の保護者及び観客達から起こった。それだけの迫力を知子は出していた。
勝ち名乗りを受けたあと土俵を降りる。
「よし、まずまずだ」
ブタクマに誉められたことが嬉しかった。
土俵を降りてもまだ体が自分の体じゃないみたくこわばっている。
それにあれだけしか動いてないのに、今座ったら立ち上がれないのではないか、と思われるほど疲弊している。
相撲であるからして土俵の上では次々と勝負が決まっていき、あっという間に2回戦。
知子は、体は緊張しているが、先程の取組により少し自信をつけていた。