“コスメティックもろざし”〈四十九〉
季節はもう秋深い。
知子は毎日のように相撲部に精を出していた。
相撲部となっているが知子はまだ相撲をしたことがない。ずっと基礎体力をつける練習ばかりやっている。
元々相撲がしたくて部活を始めたわけではないので、知子にはそんなことどうでもよく、相変わらずケーキ類とメシ、それから週2回、練習後ブタクマが作ってくれるちゃんこ鍋をたらふく食っている。
少しずつ厳しくなって行く練習でダイエットが期待されるものだが、やはり太り続け、90キロは軽く過ぎた。
そんな知子は学校中で浮きまくっている。
誰も彼もが知子に触れないよう注意していた。
辛うじてミチコとB子が変わらずに接してくれている。
本日も授業は滞り無く終了し、部活道の時間になった。
知子はミチコとB子に別れを告げ道場へ。
道場のロッカーに隠しているお菓子を食いながら運動着に着替える。
そのうちにブタクマがやってくる。いつもそうだ。
準備体操、ストレッチ、マット運動、受け身、いつも通りに淡々と進む。
知子はマット運動が好きだった。体重は増えたものの飛び込み前転などはとても高く、遠くに飛ぶことが出来た。丸々している体でクルクルと回転する様はとても可愛らしいものである。
いつもならランニングなどをする時間だが、この日ブタクマが、
「ちょっとこっち来い」と、呼んだ。
言われた通り近づいた知子をブタクマはいきなり知子の両脚を腕で刈った。
どしん、
知子は頭をバウンドさせてマットに後頭部を打った。
「初めはそんなもんだ。次からは頭を打たないように。アゴを引け。そして意識して受け身をとるな。なに、一週間もあれば誰でも出来るようになる。自転車に乗るようなもんだ」
「………………はい」
練習中のブタクマは怒ることは無い。とても親切丁寧に教えてくれている。
知子にとってそれは予想外のことで、少し教師ブタクマを尊敬し始めていた。
この日からブタクマ相手のぶつかり稽古が始まった。
ブタクマは靴下を履いてマットの上を滑りやすくしているのに、何故だか知子が押せどもビクともしない。
うんうん唸る知子にブタクマはあーしろこーしろとは言わない。ただ、
「動きを止めるな」
とだけ言った。
ブタクマに向かっていっては、右に左に転がされる。
たまに“たかいたかい”のように脇の下から一気に持ち上げられる。
90キロ以上の知子をいとも簡単に、ふわり、とブタクマは持ち上げた。
150キロを超える力士達を“たかいたかい”してきたブタクマならお茶の子さいさいなのだが、知子には、ちょっと前までバカにしていた人物とは思えず、怪物のように思えた。
続
知子は毎日のように相撲部に精を出していた。
相撲部となっているが知子はまだ相撲をしたことがない。ずっと基礎体力をつける練習ばかりやっている。
元々相撲がしたくて部活を始めたわけではないので、知子にはそんなことどうでもよく、相変わらずケーキ類とメシ、それから週2回、練習後ブタクマが作ってくれるちゃんこ鍋をたらふく食っている。
少しずつ厳しくなって行く練習でダイエットが期待されるものだが、やはり太り続け、90キロは軽く過ぎた。
そんな知子は学校中で浮きまくっている。
誰も彼もが知子に触れないよう注意していた。
辛うじてミチコとB子が変わらずに接してくれている。
本日も授業は滞り無く終了し、部活道の時間になった。
知子はミチコとB子に別れを告げ道場へ。
道場のロッカーに隠しているお菓子を食いながら運動着に着替える。
そのうちにブタクマがやってくる。いつもそうだ。
準備体操、ストレッチ、マット運動、受け身、いつも通りに淡々と進む。
知子はマット運動が好きだった。体重は増えたものの飛び込み前転などはとても高く、遠くに飛ぶことが出来た。丸々している体でクルクルと回転する様はとても可愛らしいものである。
いつもならランニングなどをする時間だが、この日ブタクマが、
「ちょっとこっち来い」と、呼んだ。
言われた通り近づいた知子をブタクマはいきなり知子の両脚を腕で刈った。
どしん、
知子は頭をバウンドさせてマットに後頭部を打った。
「初めはそんなもんだ。次からは頭を打たないように。アゴを引け。そして意識して受け身をとるな。なに、一週間もあれば誰でも出来るようになる。自転車に乗るようなもんだ」
「………………はい」
練習中のブタクマは怒ることは無い。とても親切丁寧に教えてくれている。
知子にとってそれは予想外のことで、少し教師ブタクマを尊敬し始めていた。
この日からブタクマ相手のぶつかり稽古が始まった。
ブタクマは靴下を履いてマットの上を滑りやすくしているのに、何故だか知子が押せどもビクともしない。
うんうん唸る知子にブタクマはあーしろこーしろとは言わない。ただ、
「動きを止めるな」
とだけ言った。
ブタクマに向かっていっては、右に左に転がされる。
たまに“たかいたかい”のように脇の下から一気に持ち上げられる。
90キロ以上の知子をいとも簡単に、ふわり、とブタクマは持ち上げた。
150キロを超える力士達を“たかいたかい”してきたブタクマならお茶の子さいさいなのだが、知子には、ちょっと前までバカにしていた人物とは思えず、怪物のように思えた。
続