“コスメティックもろざし”〈三十九〉 | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

“コスメティックもろざし”〈三十九〉

男の子達は金も知恵も無いが場を楽しませようと、ひいては恋人を得る為に、体当たりでぶち当たっていく。
それが功を奏したのか、はたまた男の子達が持ってきた甘いお酒の力からか、4人と4人の若い男女は当然のように盛り上がった。
月光りが波を照らす。砂浜の人がまばらになったあたりで男の子達は「花火をしよう」と言い出し、善は急げとばかりに花火を買いに行った。
砂浜に残された4人の少女達は男の子達の品評を開始する、それは男の子達も同じだろう。
「なんかみんな馬鹿っぽい」
「だから言ったじゃない」
「子供っぽい」
「いやそれはしょうがないでしょ、未成年なんだから。私達も含めて」
「そりゃそうだけどさぁ」
「あんなもんでしょ」
「タカオ君ぐらいかな、かっこいいのは。他は似たり寄ったりね」
「あっ、それ言えてる」
「タカオは学校でも人気高いよ」
「うーん、でも私苦手だなぁ。なんか天然ボケでしょ」
「お前が言うなよ、でもまぁ、普段からかなりのものだわ」
「ふーん、そうなんだぁ、知子はどう思う?」
知子は会話に参加せずぼけーっと海を見ていた。
「ちょっとちょっと、知子さん?」
「うわっ」
ミチコが肩を叩いてようやく知子はこちらに気づいたようだ。
「なに驚いてるのよ、だから、知子はタカオ君のことどう思う?」
「えっ」
「だからぁ、知子はタカオ君のことどう思ってるの?」
他愛ない僅かな言葉の変化、質問から導き出される答えは印象から感情へと変わっていた。
「…………………好き、かな」
突然の告白に3人は目を丸くした。
「きゃー、知子いきなりなに?潔いわねぇ」
B子が興奮して叫んだ。
知子は自分の発言の間違いに気づいて顔を赤らめ、必死に、
「えっ、なに、そういうことじゃないの?」
と、わけのわからぬことを言った。
「そういうことってどういうことよ、それにしても…なんかいつもと違ったもんね」
ミチコがにやりといやらしく笑う。
「B子、私達は似たり寄ったりで頑張ろうね」
「うん、頑張ろうー」
「D美はいいんでしょ?」
ひとつ間を置いて、
「そりゃあもちろん」
D美は呼応した。
「んじゃ、そういうことで」
ミチコはまたにやりと笑った。
「えっ、ちょっと待ってよ、なに?突然だったのよ、酔ってもいるしさ」
「じゃあ知子はタカオ君のこと嫌い?」
「…そりゃ嫌いじゃないけど」
「でしょ、いいじゃない」
うっ、知子は押し切られた。しかし嬉しく思う自分もいた。
知子はタカオ君に一目惚れをしていた。
恋に理由を求めるのは愚鈍の行いだが、あえて言うならば、持ってる雰囲気が父親とまったく違うから、というものが大きかったのだろう。
そうこうしているうちに男の子達が花火を抱えて帰ってきた。
「ここは警察が来るから移動しよう」
男の子達の提案を断る理由はない。
ミチコは目配せをして知子とタカオ君を隣同士にして歩かせる。
知子は嬉し恥ずかしながらも平静を装って歩く。
頭上に輝く満月が妙に大きく見える夜だった。