“コスメティックもろざし”(24)
首吊りから解放された熊若丸。しかし下肢は震え、地に立つことはかなわず、へにゃり、と女座りの体勢を維持するのがやっとだ。…その姿はどことなくセクシー…なわけない。
それでも目は死んでいない。鋭く睨む。その先には、
「きさまぁ」
と、叫ぶ、右手が垂れ下がり、突っ張りとひっかきにより顔の穴という穴から血を流している芽賀がいた。
両者とも満身創痍。端から見れば芽賀の方が重傷だ。実際、熊若丸の事故によって出来た傷があるとはいえ、そうである。だがどちらが優位に立っているかというならば誰もが芽賀だというだろう。仁王立ちする芽賀。足に力が入らず、あまつさえ半分飛んで意識朦朧としている熊若丸。万事休す。
芽賀が熊若丸の顔面を踏み潰そうと足を上げた。
「そこまで」
熊若丸の顔面からぴたり18センチ。芽賀の足は止まった。
「そこまででいいでしょう。ラニオ君の勝ちだ。ほらほら、どうして僕を止めるんです、って顔してないで。君は勝ったよ、圧倒的にね。満足しなさい。ねぇ。右腕も折られたのではなく自分で折ったようなものだし、ねぇ」
根来の言葉に従い芽賀はゆっくり足を戻した。
「そうそう、それでいいんだよ。殺したら意味がないんだ」
熊若丸は依然として芽賀、その後ろの根来を睨みつけている。ほとんど無い意識は本能によりその大部分を闘争心へとまわしている。熊若丸の睨みは全生命力をかけた睨みなのだ。
「こいつはねぇ、今まで勝ち続けた人生を歩んできたんだよ。自分の力だけでね。私はそういうやつが大嫌いなんだ、わかるよねぇ、ラニオ君。ねぇ」
根来は手を叩いて笑いだした。
「ははははははっ、ねぇ、おそらく負けたことなんて無かったのだろう?負けを意識したことは。それがどうだ、今、こいつは惨めさ。震えて睨むことしか出来ない、ラニオ君、君は知っているだろう?この目は負け犬の目さ。何も出来ずにただ見ているだけの負け犬の目だ。熊若丸、君は負けたのだ。敗れさった。このラニオ君にね。天と地ほども差があったラニオ君に全力を尽くしてもかなわないのだ。どうだい?初めての負けは?どんなに睨んでも君は圧倒的に負けているのだよ。現にその気になったなら今殺せるんだ。でも君はこれからずっと惨めに生きてゆくのだよ。楽しみだろ?私は楽しみだねぇ。ははははははっ。君に惨めは似合わないからねぇ、似合わないことは愉快だねぇ、ははははっ、ねぇはははははっ、ははぐっ、ぐっくく………………」
根来は腹をよじれるだけよじらせたあと、急に背筋をぴんと伸ばした。
「はぁ~あ。…………理解出来たみたいだし。さて帰りますよ」
根来はスタスタと出口へと歩いていった。
熊若丸の目から力は失せ、代わりに涙が溢れていた。
続
それでも目は死んでいない。鋭く睨む。その先には、
「きさまぁ」
と、叫ぶ、右手が垂れ下がり、突っ張りとひっかきにより顔の穴という穴から血を流している芽賀がいた。
両者とも満身創痍。端から見れば芽賀の方が重傷だ。実際、熊若丸の事故によって出来た傷があるとはいえ、そうである。だがどちらが優位に立っているかというならば誰もが芽賀だというだろう。仁王立ちする芽賀。足に力が入らず、あまつさえ半分飛んで意識朦朧としている熊若丸。万事休す。
芽賀が熊若丸の顔面を踏み潰そうと足を上げた。
「そこまで」
熊若丸の顔面からぴたり18センチ。芽賀の足は止まった。
「そこまででいいでしょう。ラニオ君の勝ちだ。ほらほら、どうして僕を止めるんです、って顔してないで。君は勝ったよ、圧倒的にね。満足しなさい。ねぇ。右腕も折られたのではなく自分で折ったようなものだし、ねぇ」
根来の言葉に従い芽賀はゆっくり足を戻した。
「そうそう、それでいいんだよ。殺したら意味がないんだ」
熊若丸は依然として芽賀、その後ろの根来を睨みつけている。ほとんど無い意識は本能によりその大部分を闘争心へとまわしている。熊若丸の睨みは全生命力をかけた睨みなのだ。
「こいつはねぇ、今まで勝ち続けた人生を歩んできたんだよ。自分の力だけでね。私はそういうやつが大嫌いなんだ、わかるよねぇ、ラニオ君。ねぇ」
根来は手を叩いて笑いだした。
「ははははははっ、ねぇ、おそらく負けたことなんて無かったのだろう?負けを意識したことは。それがどうだ、今、こいつは惨めさ。震えて睨むことしか出来ない、ラニオ君、君は知っているだろう?この目は負け犬の目さ。何も出来ずにただ見ているだけの負け犬の目だ。熊若丸、君は負けたのだ。敗れさった。このラニオ君にね。天と地ほども差があったラニオ君に全力を尽くしてもかなわないのだ。どうだい?初めての負けは?どんなに睨んでも君は圧倒的に負けているのだよ。現にその気になったなら今殺せるんだ。でも君はこれからずっと惨めに生きてゆくのだよ。楽しみだろ?私は楽しみだねぇ。ははははははっ。君に惨めは似合わないからねぇ、似合わないことは愉快だねぇ、ははははっ、ねぇはははははっ、ははぐっ、ぐっくく………………」
根来は腹をよじれるだけよじらせたあと、急に背筋をぴんと伸ばした。
「はぁ~あ。…………理解出来たみたいだし。さて帰りますよ」
根来はスタスタと出口へと歩いていった。
熊若丸の目から力は失せ、代わりに涙が溢れていた。
続