“コスメティックもろざし”(二十三)
熊若丸の首は………ギリギリだが無事だ。
では今の音はどこからしたのだろうか?
「おっおっおっ…」
芽賀の右手が熊若丸の首から外れ、わずかに肩の付け根あたりは空へと突きだしているが、まさしく象の鼻のようにだらりと垂れた。
「…ん、………力に耐えきれず骨が恋人達の唇と唇のあいだを橋渡ししているスティック菓子のようにポキリといっちゃいましたか。まだまだ実戦では…ということか。だが自らの骨を折るほどの力を引き出せたのはよし、か。それに」
ぶつぶつと根来がつぶやく。声は小さく、闘っている二人には聞こえていない。
「痩せたとはいえ100キロ以上はある熊若丸を左手一本で支えている。突っ張りのダメージも痛みも感じてないようだな…ははっ、完成が楽しみだ」
芽賀は右腕が折れ、肩関節も脱臼したにも関わらず、なんら変わることなく左手一本で熊若丸を吊している。
だがやはり両手の時とは勝手が違う。ほんの少しだが熊若丸の体が空いた右手側のスペースへとずれた。
熊若丸の目に力が戻る。
熊若丸は芽賀の、自らを捕捉している左手の親指を右手で掴み、外側に向かっておもいきり捻ろうとした。本来ならば掴まれた親指を中心に、手首は内側に返り、尺骨の可動域を超えた力は肩から肩甲骨、あばら、骨盤、ひざへと伝わり、為す術無く地を転がるはずである。
だが、芽賀はそうならない。芽賀の怪力によるものか熊若丸の青息吐息による力不足がそうさせたのかはわからないが、親指は動かなかったのだ。
ジタバタとあがく熊若丸。
しかし段々と動きが弱くなっていく。
熊若丸は狭くなる視界の中に芽賀の目を見た。その目は闇のように暗い。ふと悲しくなった気がした。
熊若丸は無意識に芽賀の目に手を伸ばす。
「うっ」
熊若丸の指が芽賀の目をひっかいた。
条件反射で芽賀の体がくの字になる。
さすがに力が抜けたか、熊若丸の体は芽賀のネックハンギングから滑るように脱した。
続
では今の音はどこからしたのだろうか?
「おっおっおっ…」
芽賀の右手が熊若丸の首から外れ、わずかに肩の付け根あたりは空へと突きだしているが、まさしく象の鼻のようにだらりと垂れた。
「…ん、………力に耐えきれず骨が恋人達の唇と唇のあいだを橋渡ししているスティック菓子のようにポキリといっちゃいましたか。まだまだ実戦では…ということか。だが自らの骨を折るほどの力を引き出せたのはよし、か。それに」
ぶつぶつと根来がつぶやく。声は小さく、闘っている二人には聞こえていない。
「痩せたとはいえ100キロ以上はある熊若丸を左手一本で支えている。突っ張りのダメージも痛みも感じてないようだな…ははっ、完成が楽しみだ」
芽賀は右腕が折れ、肩関節も脱臼したにも関わらず、なんら変わることなく左手一本で熊若丸を吊している。
だがやはり両手の時とは勝手が違う。ほんの少しだが熊若丸の体が空いた右手側のスペースへとずれた。
熊若丸の目に力が戻る。
熊若丸は芽賀の、自らを捕捉している左手の親指を右手で掴み、外側に向かっておもいきり捻ろうとした。本来ならば掴まれた親指を中心に、手首は内側に返り、尺骨の可動域を超えた力は肩から肩甲骨、あばら、骨盤、ひざへと伝わり、為す術無く地を転がるはずである。
だが、芽賀はそうならない。芽賀の怪力によるものか熊若丸の青息吐息による力不足がそうさせたのかはわからないが、親指は動かなかったのだ。
ジタバタとあがく熊若丸。
しかし段々と動きが弱くなっていく。
熊若丸は狭くなる視界の中に芽賀の目を見た。その目は闇のように暗い。ふと悲しくなった気がした。
熊若丸は無意識に芽賀の目に手を伸ばす。
「うっ」
熊若丸の指が芽賀の目をひっかいた。
条件反射で芽賀の体がくの字になる。
さすがに力が抜けたか、熊若丸の体は芽賀のネックハンギングから滑るように脱した。
続