“コスメティックもろざし”名前はラニオ(十六) | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

“コスメティックもろざし”名前はラニオ(十六)

「お…お前、芽賀(めが)か!」
「芽賀か、だって?おいおいなんだよ、俺の顔を忘れたのか?長いこと同じ釜の飯を食った親友じゃないか」
芽賀は大きな身振りでおかしげに話す。
その姿、挙動に熊若丸は驚いている。こんなやつではないはずだと。
熊若丸もとい猪熊と芽賀ラニオは大学相撲部で出会った。
鳴り物入りで相撲部に入った猪熊とは違い、芽賀は一般入試で大学に合格し、相撲部の門を叩いた。芽賀が語るには小学校、中学、高校時代陰湿な虐めにあっており、自分を変えるために相撲を選んだという。
それは無茶な話だった。
当時の芽賀はマッチ棒のように線が細く、吹けば飛ぶような将棋の駒ならぬ体をしていた。当然スポーツ歴は無い。それが“決意”と“希望”のもとに一歩踏み出したとはいえ、ここの相撲部は全国で名を馳せる名門である。何度も入部を願い出たがその都度相手にされず追い返された。それでも何日も通い、強引に練習に混ざり続け、3ヶ月後、ついに正式に入部が許されたのである。
この芽賀を見て猪熊は同い年である彼の行動や忍耐力、そしてなによりキラキラと楽しげに光る目の輝きに驚かされた。
芽賀はすぐに相撲部の面々と打ち解けることが出来た。入部にあたる経緯で皆に一目置かれたのだ。特に猪熊とは同郷ということもあり親友になった。
芽賀は猪熊の圧倒的な強さに憧れ、猪熊は芽賀の練習で毎日ボロクソにされても根を上げず、決して日々のきつい練習を休まないことを尊敬した。
芽賀は嬉しかった。初めて出来た友や、暗い性格をしている自分を認めてくれた仲間、そして自分を虐めていたやつらから受けた暴力の痛みとはまったく違う仲間との練習による痛み。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、卒業を迎える。
芽賀は相変わらず弱かったが親友である猪熊に誘われ草刈部屋へと入門した。