“コスメティックもろざし”(七) | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

“コスメティックもろざし”(七)

それは幕内に入ってから2回目の場所だった。熊若丸は初日から九日目まで9連勝し、前評判通りの活躍をしたのだが、十日目の朝、突然倒れた。
倒れた、というのは熊若丸の弁で、実際は“部屋”の3階にある自分の部屋と道路を繋ぐ外階段から転げ落ちたのだ。豪快過ぎるほど豪快に落ちたのだろう、熊若丸は首と腰に重傷を負った。しかも道路に投げ出された熊若丸の脚を車がひいていった。部屋は大きな国道と国道の間にあり、部屋の前を通る道は抜け道になっている。大小様々なトラックが昼夜問わず道路幅いっぱいに走る道なのだ。幸いといえば幸いにして、熊若丸をひいたのは“空の”4トントラックだった。
これにより熊若丸の左膝はグチャグチャに潰され、右ふくらはぎの半分を削り取っていった。
それでも熊若丸は再び土俵に帰ってきた。“事故”からたった1年、奇跡の復活である。だがしかし、そのたった1年で部屋は変わっていた。それは1年前の見る影もなく激やせした熊若丸以上の変わりようだった。