モヤモヤシリーズ社会問題風?2?
軋まない布団敷き。裸の男女。やることやった後。就寝中。真夜中。男、若い男がため息に自分勝手な怒りを混ぜて女の肩を揺らす。女は既に目を覚ましていたが、揺らされたことでようやく年の割に大分垂れた乳を露わにした。娘が隣の部屋でぐずってる。
「ごめんね」
女は小さく若い男に告げる。男は寝返りを打ち女に背を向けた。その背中からのメッセージ。「とっとと静かにさせろよ」
女は、それでも、スウェットの上下を身につけるとぐずってる娘の下へ向かった。一歳半になる娘は未だに夜泣きがひどい。娘がいる部屋に入ると蛍光灯をつける。子供は親の顔を見ると安心して再び眠りにつくと以前テレビで観た。しかし娘はこれしきでは泣き止まない。甲高い、半水棲カエルの鳴き声みたいに泣き喚く。アングロサクソンは小鳥のさえずりが雑音にしか聴こえないというがこの女、根厨咲子(ねずさくこ)もまた娘の声で母性本能をくすぐられることもなく雑音にしか聴こえない。
「あんたは一体何がしたいの」
泣き止まない娘に湧き上がる苛立ち。咲子は娘の赤色が馴染んだ頬をにじった。火に油を注いだように、アクセルを踏み込んだスポーツカーのように一層泣き声に凄みを増した娘を毛布でくるむ。「こいつは邪魔」そう思った。至極自然にそう咲子は思った。「このままこいつを」そう思ったと同時に我に返り毛布から娘を出した。娘のオムツが濡れていることを確認していつもの母親業。いつものように濡れたオムツを捨てていつものオムツを出していつものように履かせる。いつもいつもいつも。吐き気がする。結局朝まで、若い男が自然に起き出すまで咲子は娘に付きっきりになった。いつものことだ。
咲子は24歳の時にできちゃった結婚をした。結婚したいからできた、結婚を前提に付き合っていたからできた、といった類のものではなく、まさしくできちゃったから結婚。こうなったらなんとなく結婚するもんじゃないの結婚。出会い系で出会った到底運命の人とは言えない夫。26歳。生が好き。まいっか。ふたりともなんとなく結婚という響きに酔いしれて結婚。咲子はそれなりに幸せな雰囲気を感じていたが夫は気づいた。つまらない、と。結婚した後夫は早速出会い系で浮気を繰り返し、娘が生まれるとさらに家に寄りつかなくなった。金さえ家に入れなくなった。となると離婚。スピード離婚。夫は捺印にはあっさりと待ってましたとばかりに応じたが慰謝料や養育費は貰えなかった。
「あなたが勝手に産んだ子供でざましょ。なんてまぁ淫乱で汚い女。宅の守さんは関係ないざんす」
「そうだよママ。こいつが勝手に産んだんだ。堕ろせばよかったのに産みやがったんだ」
夫はマザコンだった。こんな文句をいけしゃあしゃあと咲子と娘と咲子の両親の前で言いのけた。思えばこの時も娘は泣いていて「うるさい子ざますわね」と冷めた目でお婆ちゃんに睨まれたのだった。
結局慰謝料やらなんやらより相手家と縁を切ることを優先させた。咲子の両親は相手への怒りを咲子に転換した。なんであんなやつと。お前がしっかりしていればこんなことには。気まずくなって咲子は唯一勝ち取った、というよりも捨てられた、ふたりで暮らしてた小さなアパートに戻った。以降一度も両親と会っていない。
寂しさに打ちひしがれ始めた咲子は携帯電話に全てを託した。出会い系。国から貰うお金を娘の食費やら雑費に回すことなく出会い系のポイントに使った。とにかく寂しかった。しばらくしてようやく引っかかったのが19歳の浪人生の男だった。「俺早稲田狙ってんだよね」なんとなく希望に満ちているような気がした。置いてけぼりを食らってる娘は泣いていたがラブホまでは届かない。
男はとにかくやった。ゴム付き。ラブホ代も無いのでアパートでやった。男は咲子に娘がいることをあまり気にしなかったが娘の面倒を見るなんて気は無く、これには咲子が気にするなという風に話をしていたこともあるが、とにかくやるだけだった。性欲処理。咲子は愛し合いたかった。物足りなかった。癒されたかった。それには娘が邪魔なんだと思った。
男のセックスが単調な作業になってしばらく経った。今日は安全日だから、こっちには中で出していい等々ありとあらゆることを男に許したがこのままでは捨てられるのは時間の問題。問題を解決するにはやはり娘が邪魔だとしか考えられない。ある日、男が帰った夜中、咲子は夜泣きにむせび泣く娘の顔に枕を乗せて静かになるまで全体重をかけた。一歳半にしてはか細い娘が静かになるまで大して時間はかからなかった。
奇しくも隣の住人、小人同士の老夫婦から近頃夜泣きが聴こえないとガサ入れがあり咲子は逮捕された。男も取り調べを受けたがまだハタチになる前だったので、我関せず、別段どうということもなかった。拘留中一度面会したが、その時男は母親同伴で、これまた聞いたことある科白を聞くはめになった。アナルまでしたくせに。しかし咲子にはヒステリックに反論する元気さえなかった。
生ける屍が如くふらふらと刑務所内をたゆたう咲子。刑に服することになって1ヶ月。生理が来てないことに気付いた。
終わり。モヤモヤ。
「ごめんね」
女は小さく若い男に告げる。男は寝返りを打ち女に背を向けた。その背中からのメッセージ。「とっとと静かにさせろよ」
女は、それでも、スウェットの上下を身につけるとぐずってる娘の下へ向かった。一歳半になる娘は未だに夜泣きがひどい。娘がいる部屋に入ると蛍光灯をつける。子供は親の顔を見ると安心して再び眠りにつくと以前テレビで観た。しかし娘はこれしきでは泣き止まない。甲高い、半水棲カエルの鳴き声みたいに泣き喚く。アングロサクソンは小鳥のさえずりが雑音にしか聴こえないというがこの女、根厨咲子(ねずさくこ)もまた娘の声で母性本能をくすぐられることもなく雑音にしか聴こえない。
「あんたは一体何がしたいの」
泣き止まない娘に湧き上がる苛立ち。咲子は娘の赤色が馴染んだ頬をにじった。火に油を注いだように、アクセルを踏み込んだスポーツカーのように一層泣き声に凄みを増した娘を毛布でくるむ。「こいつは邪魔」そう思った。至極自然にそう咲子は思った。「このままこいつを」そう思ったと同時に我に返り毛布から娘を出した。娘のオムツが濡れていることを確認していつもの母親業。いつものように濡れたオムツを捨てていつものオムツを出していつものように履かせる。いつもいつもいつも。吐き気がする。結局朝まで、若い男が自然に起き出すまで咲子は娘に付きっきりになった。いつものことだ。
咲子は24歳の時にできちゃった結婚をした。結婚したいからできた、結婚を前提に付き合っていたからできた、といった類のものではなく、まさしくできちゃったから結婚。こうなったらなんとなく結婚するもんじゃないの結婚。出会い系で出会った到底運命の人とは言えない夫。26歳。生が好き。まいっか。ふたりともなんとなく結婚という響きに酔いしれて結婚。咲子はそれなりに幸せな雰囲気を感じていたが夫は気づいた。つまらない、と。結婚した後夫は早速出会い系で浮気を繰り返し、娘が生まれるとさらに家に寄りつかなくなった。金さえ家に入れなくなった。となると離婚。スピード離婚。夫は捺印にはあっさりと待ってましたとばかりに応じたが慰謝料や養育費は貰えなかった。
「あなたが勝手に産んだ子供でざましょ。なんてまぁ淫乱で汚い女。宅の守さんは関係ないざんす」
「そうだよママ。こいつが勝手に産んだんだ。堕ろせばよかったのに産みやがったんだ」
夫はマザコンだった。こんな文句をいけしゃあしゃあと咲子と娘と咲子の両親の前で言いのけた。思えばこの時も娘は泣いていて「うるさい子ざますわね」と冷めた目でお婆ちゃんに睨まれたのだった。
結局慰謝料やらなんやらより相手家と縁を切ることを優先させた。咲子の両親は相手への怒りを咲子に転換した。なんであんなやつと。お前がしっかりしていればこんなことには。気まずくなって咲子は唯一勝ち取った、というよりも捨てられた、ふたりで暮らしてた小さなアパートに戻った。以降一度も両親と会っていない。
寂しさに打ちひしがれ始めた咲子は携帯電話に全てを託した。出会い系。国から貰うお金を娘の食費やら雑費に回すことなく出会い系のポイントに使った。とにかく寂しかった。しばらくしてようやく引っかかったのが19歳の浪人生の男だった。「俺早稲田狙ってんだよね」なんとなく希望に満ちているような気がした。置いてけぼりを食らってる娘は泣いていたがラブホまでは届かない。
男はとにかくやった。ゴム付き。ラブホ代も無いのでアパートでやった。男は咲子に娘がいることをあまり気にしなかったが娘の面倒を見るなんて気は無く、これには咲子が気にするなという風に話をしていたこともあるが、とにかくやるだけだった。性欲処理。咲子は愛し合いたかった。物足りなかった。癒されたかった。それには娘が邪魔なんだと思った。
男のセックスが単調な作業になってしばらく経った。今日は安全日だから、こっちには中で出していい等々ありとあらゆることを男に許したがこのままでは捨てられるのは時間の問題。問題を解決するにはやはり娘が邪魔だとしか考えられない。ある日、男が帰った夜中、咲子は夜泣きにむせび泣く娘の顔に枕を乗せて静かになるまで全体重をかけた。一歳半にしてはか細い娘が静かになるまで大して時間はかからなかった。
奇しくも隣の住人、小人同士の老夫婦から近頃夜泣きが聴こえないとガサ入れがあり咲子は逮捕された。男も取り調べを受けたがまだハタチになる前だったので、我関せず、別段どうということもなかった。拘留中一度面会したが、その時男は母親同伴で、これまた聞いたことある科白を聞くはめになった。アナルまでしたくせに。しかし咲子にはヒステリックに反論する元気さえなかった。
生ける屍が如くふらふらと刑務所内をたゆたう咲子。刑に服することになって1ヶ月。生理が来てないことに気付いた。
終わり。モヤモヤ。