ボツ台本八百長問題 | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

ボツ台本八百長問題

「あまり真剣に話す問題じゃないことは確かだからとりとめもまとまりもなく」


『おれも八百長問題を取り上げなきゃならない』
「別に頼まれたわけでもあるまいに」
『さて八百長だ。気をつけなくてはいけないのは八百長と八百八町は違うということだ』
「銭形平次になってしまうものな。花のお江戸の八百八町♪」
『おや?今疑問に思ったが、誰が呼んだか誰が呼んだか銭形平次♪ってどういう意味だろうか』
「なるほど、二通りあるな、誰も呼んでいないのにいつの間にか事件に絡んでくる平次と」
『それは嫌だな。なんでお前ここにいるの?みたいなさ』
「ああ、その感は否めないな。それは嫌だ。ということはもう一つの、誰かが銭形平次を銭形平次と名付けたということか」
『そうであろう。銭形の平次って誰かが呼ばないと銭形平次ではなかったということであろうよ』
「所詮奴は一介の岡っ引き。同心のパシリさ。身分なんてないから名字など公式には名乗れなかったのであろう。あだ名が銭形平次ってわけだな」
『そうさ。もし銭形平次の第一発見者が罰当たりの平次やお賽銭職人の平次などと名付けていたらと思うと、これはことだぜ』
「その可能性も無きにしも非ずだったわけだ」
『ま、フィクションなわけだが』
「だな」
『解決した問題に口を挟むのもなんだがさっきおれは、なんでお前ここにいるの?と善良な町民の気持ちで言ったわけだが、誰が呼んだ、と言ったのが悪人だとしたらどうだろうという考えが浮かんでしまった』
「なるほど、確かに解決した問題であるし悪人にとっていつの間にかいたら困る存在だからな」
『悪人が開く合コンに』
「賭場ではないのか」
『合コンにいつの間にか平次がいたら王様ゲームどころではないさ』
「日頃の悪行を忘れ王様を目指す楽しい一時が一瞬で崩壊することうけあいだな」
『参加費小銭でしか払わないしな』
「しかも投げつけてきやがる」
『王様だーれだ、…はい、…なぬ平次!』
「よくぞそこまで気づかれなかったな」
『えー、5番と6番打ち首』
「KYってやつだな」
『悪行に関係のない善良な町娘を打ち首にしてしまう可能性も省みず平次は王の権利を一網打尽とばかりに嬉々として行使するのであった』
「中世ヨーロッパの放蕩貴族みたいだな」
『ところでなんの話だっけか』
「八百長だ」
『八百長か、おれあんま話たくないんだよね』
「話さなきゃならないといったのはお前だ」
『渡辺淳一みたいになりたくないからな』
「作家らしからぬ八百長批評だったからな。公務員だったら税金泥棒と叫ばれてるところだ」
『そのうち相撲界のセックスものでも書くんだろどうせ』
「どうせな」
『ホモの力士が場所中に組み合った瞬間イってしまうとかな』
「それは見るに耐えないな」
『へなへなへな、さ』
「へなへなへな、と膝を着いてしまうな、それは」
『まわしから色々飛び出るしな』
「色々飛び出ちゃうのかい?それは見るに耐えないな」
『さ、八百長だ』
「待ってたよ」
『語源の蘊蓄や定義は置いといて、今話題になってるのはいわゆる星を買うというやつだな』
「ああ、対戦相手に金や物品などの報酬を渡し負けてくれることを頼むのだな。逆に負ける側が買わないかと持ちかけたり」
『大問題にしてやりたいな』
「もうなってるさ」
『しかしおれは八百長が行われていても、行われているだろうが、特になにも思わないしましてや怒る気にもならないな。別に相撲に興味ないし』
「それを言ってはおしまいさ」
『八百長といえばイタリアセリエAサッカーでもよく起こるだろう?』
「詳しいことは知らないがそうらしいな」
『ちゃんとしたスポーツでも起こるものなのさ。人間が関与している限りな』
「しかしあれは賭けの対象であるということもあるが」
『相撲で賭けが行われているかどうかはさておき、人間てのは先に結末を知りたがるものなのさ』
「本のあとがきや結びを先に読む人も多いと聞くしな」
『真剣勝負の勝ち負けってのはどうしようもないぐらい不安がつくまとうものさ。しかし最初から勝ち負けが決まっていれば安心だからな。主人公は生きているという結末を知っておけば主人公がどんなピンチになろうが神の視点で読めるからな。占いや風水も同じだよ』
「未来に起こるであろうことを知りたい、知っておきたいということだ」
『そう。スマトラの津波のときに動物達は山の上に避難したという話があるが、ひょっとしたら未来を知りたい、決定づけたいというのはそういった人間が失った動物的勘の名残なのかもしれない。未来を予測することで生活に安定を求める、天気予報と農業の関係などまさにそれだが、ということよりももっと深いもの』
「本能というわけか。沈没する船からはネズミがいなくなるみたいな」
『未来というのは闇さ。虚空だよ。あってないようなものさ。だけど一つだけ道しるべがある。死という淡い光さ。でも死の位置はわからない。あいつらは点滅してしかも移動しているからな。あんな遠くにあったのに気がつけば真後ろにあったりする。まあ、死とは当人にとって最も意外な時にやってくる、というアフォリズムがあるが、普段はその死の光さえ見えないことにしているのだがな。そんな不安だらけの闇の中でマッチの一本もつけたくなるのさ。それは出来る範囲での未来の結末の操作でありメメント・モリでさえ所詮はマッチさ。ま、照らす度に違う光景が浮かび上がるのだがね』
「過去は過ぎ去りもう無い、未来来たらず未だ無い、という昔の坊主の言葉を思い出したよ」
『過去と未来と現在は繋がっているかもしれないが決して互いを反射することはないのさ』
「パラレルワールドの原理のようなものだな。例えば今おれが突然奇声をあげたとする。するとおれが奇声をあげた未来とあげてない未来に分かれる。未来と言ったがそれは現在進行形で平行世界の名の通り無数に分かれ現在を進行している。パラレルワールドにも未来や過去は無い。あるのはただ現在という点だけ。常に世界は分かれているからマッチをつけて周りを確認しても毎回違うものが見える、と」
『とりとめのない話さ』
「とりとめのない話だな」
『世界5分前仮説という倫理の命題のような、知ったこっちゃないやい、という話さ』
「ああ。しかし八百長の話がとんだところに来たもんだ」
『八百長か、そんなことまともに話たくないのさ。女学生に笑われてしまうよ』
「ああ。わかったよ」
『しかし八百長ってあいつらはそんなに金持ちなのかい?』
「仮に横綱が星を買う金額を80万だとすると」
『ドルかい?』
「円さ。今はなんといっても円さ」
『なるほどな』
「仮に80万円だとする。そして一場所に十番八百長したら800万円になる」
『ま、八百長ならぬ八百万ということだな』
「神事ということか。この罰当たりめ」
『罰当たりさ』
「ふふ」
『グッバイ』
「ダスビダーニァ」


終わり