読んだら損する「運命はテイクアウト」(34)
何もない朝、いや昼。普段通りの生活パターンがやって来た。はて、ちょっと前まで僕はどうやって時間を潰していたのだろうか。一分一秒がやたら長い。長いものには巻かれとけと云うが、如何ともし難い。テレビもラジオもゲームもスイッチを入れる気にならない。こんな時にはふらりと出かけて女子供を手にかけるに限る、なんてな、苦笑い。吐き気は襲ってこない。やったね僕。
ペラペラと読みかけの本をめくってみる。つまらない。本の管理には割と神経質な僕だけどフリスビーみたく投げた。くるりくるり。本は机の裏に入って少し後悔。イライラ。予兆無しに下から母親の声。僕を呼ぶ声。相変わらず用件を言わない。なんなんだよちくしょう。ふと、僕が殺されたら母親はどうなるのだろう、警察に捕まったらどうなるのだろう、と考えてすぐに、所謂心の闇って部分に押しやった。心の闇だなんて中学生かよちくしょう。
下に行くと社長がいて、バイト代をくれると足早に去って行った。忙しいんだ。給料袋に入った17830円をポケットにねじ込む。部屋に戻ると携帯電話を操り、昨日の被害者みたい?、友達と飲む約束を取り付けた。じっとしていられなかった。
電車に乗って揺られていると、僕の向かいに立った老夫婦がヒソヒソと僕のことを話している。ヒソヒソと僕のことを話しているっていうのは少しおかしなことだけど、ヒソヒソ話しではあるが、ヒソヒソ話しをしているつもりなのだろうが、夫婦とも耳が遠いのだろう。あまつさえ列車の轟音。大音量ではないにしろイヤホンをして音楽を聴いているにも関わらず老夫婦の声が僕の耳に入ってくる。ということは周りにいる乗客のほとんどに聞こえているということだ。ヒソヒソであってヒソヒソでない。世の中シュールだ。老夫婦は僕のことをしきりに、
「オシャレだねぇ」
と、仰ってくれる。まいっちゃうよ。確かに今日はいつもと違って多少のオシャレをしたが僕はオシャレとは程遠い人間なのだ。容姿には自信がないでもない。ナルシストかと言われれば否定出来ない。しかしオシャレってやつはしない。いや顔立ちに自信があるからこそオシャレをしないのだよ。一点豪華主義における一点が僕自身なのだから。などと恥ずかしさを紛らわせる為に心の中で老夫婦と会話をする。乗換で電車を下りる時、
「だけど僕は殺人鬼さ」
と告げて別れた。
清水君は僕の相方だ。二人でお笑いごっこもしたしプロレスごっこでは組んでもやっても息があった。歌もやった。彼は三味線が、僕はウクレレが、お互い本の少し出来た。カオスだ。一曲だけ持ち歌があった。毎度毎度でたらめに弾くので一回一回再現不可能なものだったけど。
“僕の右眼 小さい頃犬にかまれた
僕の右眼 小さい頃ドーベルマンにかまれてとれちゃった
でも大丈夫 オールオッケー 悲しくなんかない
だってなぜなら 結果オーライ 僕の左眼は視力10.0だから
片眼のブルース 片眼のブルース
僕の左眼は視力10.0だから
どこまでも見渡せる どこまでも見渡せる
たとえペテン師の歪な心でも
片眼のブルース 片眼のブルース
見られてるのはおまえらさ”
演奏だけでなく歌詞も多分にアドリブが含まれた。そもそも当時の僕はブルースの意味さえ知らなかった。僕が作ったのだが、僕はこの、片盲でも残った片方が視力10.0ならオールオッケーっていう感覚が好きだった。ことあるごとに清水君と歌った。
ペラペラと読みかけの本をめくってみる。つまらない。本の管理には割と神経質な僕だけどフリスビーみたく投げた。くるりくるり。本は机の裏に入って少し後悔。イライラ。予兆無しに下から母親の声。僕を呼ぶ声。相変わらず用件を言わない。なんなんだよちくしょう。ふと、僕が殺されたら母親はどうなるのだろう、警察に捕まったらどうなるのだろう、と考えてすぐに、所謂心の闇って部分に押しやった。心の闇だなんて中学生かよちくしょう。
下に行くと社長がいて、バイト代をくれると足早に去って行った。忙しいんだ。給料袋に入った17830円をポケットにねじ込む。部屋に戻ると携帯電話を操り、昨日の被害者みたい?、友達と飲む約束を取り付けた。じっとしていられなかった。
電車に乗って揺られていると、僕の向かいに立った老夫婦がヒソヒソと僕のことを話している。ヒソヒソと僕のことを話しているっていうのは少しおかしなことだけど、ヒソヒソ話しではあるが、ヒソヒソ話しをしているつもりなのだろうが、夫婦とも耳が遠いのだろう。あまつさえ列車の轟音。大音量ではないにしろイヤホンをして音楽を聴いているにも関わらず老夫婦の声が僕の耳に入ってくる。ということは周りにいる乗客のほとんどに聞こえているということだ。ヒソヒソであってヒソヒソでない。世の中シュールだ。老夫婦は僕のことをしきりに、
「オシャレだねぇ」
と、仰ってくれる。まいっちゃうよ。確かに今日はいつもと違って多少のオシャレをしたが僕はオシャレとは程遠い人間なのだ。容姿には自信がないでもない。ナルシストかと言われれば否定出来ない。しかしオシャレってやつはしない。いや顔立ちに自信があるからこそオシャレをしないのだよ。一点豪華主義における一点が僕自身なのだから。などと恥ずかしさを紛らわせる為に心の中で老夫婦と会話をする。乗換で電車を下りる時、
「だけど僕は殺人鬼さ」
と告げて別れた。
清水君は僕の相方だ。二人でお笑いごっこもしたしプロレスごっこでは組んでもやっても息があった。歌もやった。彼は三味線が、僕はウクレレが、お互い本の少し出来た。カオスだ。一曲だけ持ち歌があった。毎度毎度でたらめに弾くので一回一回再現不可能なものだったけど。
“僕の右眼 小さい頃犬にかまれた
僕の右眼 小さい頃ドーベルマンにかまれてとれちゃった
でも大丈夫 オールオッケー 悲しくなんかない
だってなぜなら 結果オーライ 僕の左眼は視力10.0だから
片眼のブルース 片眼のブルース
僕の左眼は視力10.0だから
どこまでも見渡せる どこまでも見渡せる
たとえペテン師の歪な心でも
片眼のブルース 片眼のブルース
見られてるのはおまえらさ”
演奏だけでなく歌詞も多分にアドリブが含まれた。そもそも当時の僕はブルースの意味さえ知らなかった。僕が作ったのだが、僕はこの、片盲でも残った片方が視力10.0ならオールオッケーっていう感覚が好きだった。ことあるごとに清水君と歌った。