読んだら損する「運命はテイクアウト」(32) | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

読んだら損する「運命はテイクアウト」(32)

あの決意を思い出した。即ち、新たな殺人。人を殺すこと。そのことを思うと心の痒みがひいていった。
宴もたけなわ。真っ直ぐに歩けない足取りで小山さんの車に乗り込む。途中コンビニに、こっちが別段意識したわけではないのだがあのコンビニ、寄ってもらいスポーツドリンクを買い、帰宅。
「今日はどうも…すみませんでした…なんか変なことばっかり言って…あの、ご馳走さまでした」
そう言って頭を下げた僕に小山さんは「なになにまったく気にしてないよ」と言い肩を、アンドレのチョップみたく重量感たっぷりに叩いて僕の左肩は外れた(嘘)、軽く叩いた。
「いやぁ、むしろ助かったよ。今日の健一君みたいにズバズバ彼女のことを聞いてくれる人はいなかったからね。すっとしたよ。あ、いやいや、別に嫌味じゃないよ。気を使ってくれるのも嬉しいことだけれども、僕もどこか歯がゆかったんだ。うん、とてもよかった。有意義だった。奢ったかいがあったよ。はは。僕の心にあった靄が全部晴れた…とまではいかないけど、軽くなったことは確かだよ。そんな気がする。なんというか、僕は僕以上に僕自身を好きになることが出来ない、そんな感じかな。おっと、口に出したそばから恥ずかしいな。今のことは忘れてくれ。自分でもよくわからないんだ。じゃあ、また」
こいつ本当は酔っ払ってんじゃねえのか、と酔いの最中の妙に冷めた感覚でねめつける僕に、小山さんは遠くを、僕の左後方、見つめながら別れの言葉を言って去っていった。
車が見えなくなると僕は落ちていた空き缶を蹴飛ばして家に入った。
フラフラしながらも早速ノートを開く。道助のノートではない。殺人の計画を立てるのだ………………。
酔っ払っていたこともあり酔いから醒めてノートを見てみるとでたらめなことばかりだったけど、大体のことは決まった。
新たな殺人により死ぬのは自分より弱い人、即ち女性、子供。老人は含まない。老人では意味がない。
犯行日時は今やってるバイト中が望ましい。普段あんまり外出しない僕が外出している理由がある。帰宅時、都合の良い人物を発見次第。都合の良い、とは上記のターゲットが人気の無い道を一人で行動しているということ。当然か。下手に策を張り巡らすよりも、もとより僕には策を練る知能はないが、出来るだけシンプルな方がいい。これはまだ僕が捕まっていないことで証明している。
殺害方法は前回と同じ。肉体を使う。前の事件と関連付けるとかの深い意味はない。この方法じゃないと意味がないのだ。満足出来ない。頭の中でいくつか殺害方法をシミュレーションしたがこの方法じゃないと満足出来ない。僕は僕以上に僕自身を好きになることが出来ない、確かにその通りだ。僕は僕の為に行動し、その行動によって満ち足りた気持ちになるのだから。自我がある限り世界は僕(個々人)を中心に回っているのだ。僕が僕である限り僕を中心にしてしか世界を見ることはない。そして僕は殺人鬼。
決行の日は小山さんにご馳走になった二日後、計画を整理した次の日にやってきた。
バイトの最終日、今日中にハガキを配り終えるであろうことが予測される、であり、出来ればこの日にやっておきたいという思いが昨日以上に僕を行動的にさせた。いや、昨日やれなかったから単に待ちわびていただけかもしれない。コミック発売を待ちきれなくて週刊を立ち読みしてしまうように。
案の定バイトは最終日になり、帰り道。国道沿いではなく裏道を走る。キンコンカンと少年少女の帰宅を促す夕方のアナウンスが流れ出てから少し過ぎた頃。
いた。