読んだら損する「運命はテイクアウト」(30)
「お疲れさま。小山です。アドレス、おばさんに教えてもらいました。今後ともよろしく。突然だけど、今日会えないかな?おごるよ。」
メールの返答を考える。チャリンコ漕ぎながら考える。意図は?どう返信する?会いたくなんかない。だけど僕の性格、小山さんが知っている僕の性格を考えると、普段の僕というものを意識すると、これはもう会わざるを得ない。容易に断れない。断らない。断ることを知らない。だけど会いたくない。凄く会いたくない。めちゃくちゃ会いたくない。チャリンコはどんどん家に向かっている。漕いでるのは僕か。あのコンビニも過ぎた。とりあえず家に帰ってから考えよう。そうしよう。そうするしかあるまい。
が、僕の目論見はまんまと破られた。小山さんはうちにいた。なんたるちあ。母親の口癖ぐらいしか頭に浮かばない。しかし、いつものスイッチは入った。もう小山さんと飯を食う覚悟は決めたらしい。凄いね、パブロフの犬的人体。
「やぁ、お疲れさま。メール送ったのだけど見てくれたかな」
「えっ」
少し慌てた様子でポケットから携帯を取り出し、「あ、本当だ」と呟いた。
「すみません。マナーモードにしてたんで」
「うん、それはそうだろうね。ところで内容の方なのだけれど、どうかな?」
決まってるし、さっき決めた。ちょっと前まで拒否の言葉を探していた自分が馬鹿らしくなるくらいあっさりと、僕は小山さんの軽自動車に乗っていた。いつも通り、小山さんは僕を疑っているということを前提に行動するんだ。
「あ、朝、小山さん見ましたよ」
当然自ら切り出す。
「あ、そうだったね。僕も気付いたよ。あのコンビニのところだろ?」
「はい、そうです」
「あ、ところで何か食べたいものの希望はあるかい?一応どんな要求にも応えられると思うけど、でも、福沢諭吉がいなくなるようなところは…」
アゴを揺らし、ふふふ、と声無く笑う小山さん。あんまり大したユーモアでもなかったので、僕はただ、
「そんな、おごってくれるだけでありがたいです」
と、無味乾燥に答えた。
「そう言ってもらうと助かるよ。実はもう行くところには目星をつけていてね。今日起きた時からかな、今日の気分は鶏、うまいところがあるんだよ。そうだ、健一君お酒は呑めたかな」
僕は呑む。呑むことは大好きだ。だが弱い。ファッションで酒を呑んでる奴と呑むと二度と誘われることはなくなる。弱いくせに強い酒をがぶ呑みして、記憶を無くし、記憶が戻った時は決まって寝ゲロをしているから。まあ、誘われなくなるのも当然か。といっても僕だって呑む相手を見ている。無茶するときは相手と今後会うことはないだろうなって場合で。もちろん人に合わせて節度のある呑み方も出来る。だけどアルコールが入った時、小山さん相手に呑んだ時、下手したらボロを出しかねない。白状(ゲロ)しかねない。しかし、やはり嘘は駄目だ。母親にでも聞けば僕が酒を呑めることぐらいすぐわかる。もう既にリサーチ済みかもしれない。
「はい、好きです」
小山さんはとてもいやらしく、にやっ、と笑って、
「それは楽しみだね」
と、鼻を揺らした。
お店は小山さんに似合わず割と派手な、オサレな焼鳥屋(?)で、カウンター席をステディな関係の男女が独占しているような流行りの店だった。小山さんが店内に入るとずらりと居並ぶステディ達は皆同じように二度見をした。それはなかなかに壮観な図だった。小山さん店員と知り合いらしく、また、どうやら予約を入れていたらしく、このことは先程車内でした会話と矛盾する即ち小山さんは僕がどう答えるか知っていたということを意味する、所謂VIP席のような、オーナーが店を造る時に仲間内で使うことを前提にして造られたと思われる部屋に案内される。小山さんは座るなりオーダーをし始めた。といっても実に簡潔に、
「じゃあよろしく」
の一言。
メールの返答を考える。チャリンコ漕ぎながら考える。意図は?どう返信する?会いたくなんかない。だけど僕の性格、小山さんが知っている僕の性格を考えると、普段の僕というものを意識すると、これはもう会わざるを得ない。容易に断れない。断らない。断ることを知らない。だけど会いたくない。凄く会いたくない。めちゃくちゃ会いたくない。チャリンコはどんどん家に向かっている。漕いでるのは僕か。あのコンビニも過ぎた。とりあえず家に帰ってから考えよう。そうしよう。そうするしかあるまい。
が、僕の目論見はまんまと破られた。小山さんはうちにいた。なんたるちあ。母親の口癖ぐらいしか頭に浮かばない。しかし、いつものスイッチは入った。もう小山さんと飯を食う覚悟は決めたらしい。凄いね、パブロフの犬的人体。
「やぁ、お疲れさま。メール送ったのだけど見てくれたかな」
「えっ」
少し慌てた様子でポケットから携帯を取り出し、「あ、本当だ」と呟いた。
「すみません。マナーモードにしてたんで」
「うん、それはそうだろうね。ところで内容の方なのだけれど、どうかな?」
決まってるし、さっき決めた。ちょっと前まで拒否の言葉を探していた自分が馬鹿らしくなるくらいあっさりと、僕は小山さんの軽自動車に乗っていた。いつも通り、小山さんは僕を疑っているということを前提に行動するんだ。
「あ、朝、小山さん見ましたよ」
当然自ら切り出す。
「あ、そうだったね。僕も気付いたよ。あのコンビニのところだろ?」
「はい、そうです」
「あ、ところで何か食べたいものの希望はあるかい?一応どんな要求にも応えられると思うけど、でも、福沢諭吉がいなくなるようなところは…」
アゴを揺らし、ふふふ、と声無く笑う小山さん。あんまり大したユーモアでもなかったので、僕はただ、
「そんな、おごってくれるだけでありがたいです」
と、無味乾燥に答えた。
「そう言ってもらうと助かるよ。実はもう行くところには目星をつけていてね。今日起きた時からかな、今日の気分は鶏、うまいところがあるんだよ。そうだ、健一君お酒は呑めたかな」
僕は呑む。呑むことは大好きだ。だが弱い。ファッションで酒を呑んでる奴と呑むと二度と誘われることはなくなる。弱いくせに強い酒をがぶ呑みして、記憶を無くし、記憶が戻った時は決まって寝ゲロをしているから。まあ、誘われなくなるのも当然か。といっても僕だって呑む相手を見ている。無茶するときは相手と今後会うことはないだろうなって場合で。もちろん人に合わせて節度のある呑み方も出来る。だけどアルコールが入った時、小山さん相手に呑んだ時、下手したらボロを出しかねない。白状(ゲロ)しかねない。しかし、やはり嘘は駄目だ。母親にでも聞けば僕が酒を呑めることぐらいすぐわかる。もう既にリサーチ済みかもしれない。
「はい、好きです」
小山さんはとてもいやらしく、にやっ、と笑って、
「それは楽しみだね」
と、鼻を揺らした。
お店は小山さんに似合わず割と派手な、オサレな焼鳥屋(?)で、カウンター席をステディな関係の男女が独占しているような流行りの店だった。小山さんが店内に入るとずらりと居並ぶステディ達は皆同じように二度見をした。それはなかなかに壮観な図だった。小山さん店員と知り合いらしく、また、どうやら予約を入れていたらしく、このことは先程車内でした会話と矛盾する即ち小山さんは僕がどう答えるか知っていたということを意味する、所謂VIP席のような、オーナーが店を造る時に仲間内で使うことを前提にして造られたと思われる部屋に案内される。小山さんは座るなりオーダーをし始めた。といっても実に簡潔に、
「じゃあよろしく」
の一言。