ボツ台本換気扇のいななき | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

ボツ台本換気扇のいななき

「せいぜいモヤモヤして下さい」



『よお、禁煙席の換気扇』
「やあ、喫煙席の換気扇」
『久しぶりだな』
「まあ、なかなか会う機会無いよね」
『そうだな、喫煙席と禁煙席、金八と多摩川ぐらい離れてるもんな』
「確かにね」
『おれら換気扇の羽だしな』
「羽だもんね」
『おれ昨日気付いたんだけどさ』
「なに?」
『人間様でいうところの脳みそってこの真ん中のモーター部分なわけじゃん?』
「そうだね」
『ていうことはおれ達換気扇の羽じゃなくて換気扇のモーターなんじゃないかって』
「ああ、なるほどね。でもさ、こうは考えられないかな。花はさ、花を咲かしてなくても花っていうよね。花は植物だから花にとって生命維持に一番重要なものは、根幹部は、僕達にとってのモーター部は葉っぱや根っこでさ。花は生殖器なわけで、生きていくのにはいらないわけでしょ」
『お、おう』
「でも、それでもやっぱり花は花が咲いてこそ花じゃん。咲いてこそ意味がある。だから普段から花って呼ばれるわけでさ。ていうことはつまり僕達も羽があるから羽なんじゃないかな。羽がまわってこその僕達なわけで。電気的に生きていても羽がなかったら換気出来ないからね」
『なるほどな、キンダーガーデンしか出てないおれにもよくわかったよ』
「僕大学出だからね、換大卒」
『へーフフフ』
「フフフ」
『換気扇に教育機関なんてないのにな』
「やめようよ、そういう本当のことを言うのは」
『本当のことは心をズタズタにしかねないからな』
「その通りだよ換気扇君」
『いやぁ、それにしても見てよ、この見事にヤニ焼けした体。裏側まで真っ黄色だぜ』
「うわぁ、本当だ。いいなぁ。僕も換気扇君みたいになりたいなぁ」
『まあ汚れてなんぼみたいなとこあるよな、おれ達』
「そうだよ。僕なんて大して動いてないからメタボになる一方だよ」
『まあ、環境の違いってやつだよな』
「いいなぁ。僕も一度でいいからタバコの煙まみれのところを換気してみたいよ。見てよこの埃しか付いてない体。メタボだよ」
『換気扇にメタボなんてないのにな』
「やめようよ。本当のこと言うのは」
『そうだな、本当のことなんて犬も食わないよな』
「バクは食うらしいよ」
『おいおい、バクが食うのは夢だろ?本当のことの正反対のものじゃないか』
「ああ、そうだったね。てことは夢を食べたバクのウンコが本当のことなのかな」
『ああ、本当のことなんて夢の残りかすみたいなもんだからな。バクの腑には夢を現実に変える機能が付いているのかもしらん』
「夢を現実に変える、か。こういう使い方があるなんて知らなかったよ」
『叶うだけが夢じゃない。夢見てないで現実を見ろってことも多々あるからな』
「そうだね。タバコを吸ってる人が、おれは病気にならないだろ、って思ってるみたいなことだよね」
『おいおい、それはおれのこと言ってるのか?』
「そうだよ」
『おやまあ、こいつぅ、本当のこと言うなんて。本当のことなんてバクのウンコみたいなもんだぞ』
「やっぱり棄てられるのも早いんじゃないかな。喫煙席の換気扇の方が」
『でもタバコの箱には“喫煙はあなたが廃棄される時期を早める原因の一つとなります”なんて書かれちゃいないぜ』
「僕達換気扇のことなんて一々書くわけないでしょ」
『お前急に本当のこと言い出したな』
「てへへ」
『なにかわけがあると睨んだおれの電子回路のひらめきをどう思う?』
「当たりだと思う」
『では聞こう。なぜ急に本当のことを言い出したんだ?』
「実はさ、一度バクのウンコを換気してみたかったんだ」
『ああ、なるほどね』
「夢を食う生き物のウンコを換気するなんてロマンティックだと思わないかい?」
『わかる!その気持ち凄いわかるよ。ロマンだよな』
「でしょ?だから本当のことを言ってみたってわけさ」
『気分を味わいたかったんだな。納得の一言に尽きるよ』
「てへへ」
『実はおれも一度換気してみたいものがあるのさ』
「この期に及んでかい?そんな立派な、歴戦の猛者みたいな体してるのに」
『こんなおれでも夢はあるのさ』
「是非聞かせておくれよ」
『二つあるのだが』
「二つもあるなんて欲張りだね」
『一つは…………セックスをしてみたいんだ』
「ええ!?君、したことないの!?」
『お前はあるのか!?』
「あるよ。右隣りの換気扇ちゃんとか、左隣りの換気扇ちゃんとか」
『本当かよ!羨まし過ぎるぜ!そうか、禁煙席だもんな。おれの職場なんてヤローばかりだからさ』
「へー、うちらなんて暇だからヤリまくりだよ」
『きゃ、客の上でもやるのかい?』
「客の上でもやるさ」
『何か……何か滴り落ちたりしないのかい!?』
「ふふん、僕達は一体何者だい?」
『!!そうか、滴ると同時に』
「そう、吸い込んでいるのさ」
『なるほどな。しかし客の上でなんて見かけによらず変態だなお前は』
「へへへ、まあでも君の職場にも憧れるね。ヤローばかりなんてさ」
『でもセックス出来ないぜ?』
「出来るよ」
『出来るのか!?』
「心の持ちよう次第さ」
『ヤリまくりで両刀使いなんて、お前は本当に変態だな』
「へへへ、で、もう一つの夢ってのはなんだい?」
『それはだな。一度でいいから森の新鮮な空気を換気してみたいんだ』
「このダメ換気扇め!見損なったよ!」


終わり 読まなきゃよかったでしょうね