ボツ台本生意気
「本心ではない」
『愛されるよりも愛したいね、マジで』
「ああ、そう」
『この詞でCD出そうかな』
「ややこしくなるからやめてくれる?」
『まあマッキーとぴったり帽子先生の判決待ちってことで』
「判決を待つってことはお前明らかにパクったよな!」
『本当はこんなことなんかしたくないんだ』
「はぁ」
『本当はスラップスティックではちゃめちゃで意味がわからないものをしたいんだ』
「シュールみたいな?」
『シュールというかダダかな』
「ああ、ってもよくわからないけど。とにかくわけのわからない、自動筆記みたいな、それでいてスラップスティックなら、暴走というか」
『そうだ。でも文字じゃ伝わらないじゃない』
「そうだな」
『やっぱ文字だと伝えられる情報に限界があるよな。ほら江戸時代に想像と伝聞で描かれた象みたいなもんでさ。似て非なるものじゃない。百聞は一見にしかずだよな。一々状況を事細かに説明しなきゃいけないと思うと面倒くさいし』
「まあ小説と漫画の違いというかね。場面から読み取れる情報量には雲泥の差があるよな」
『そこなんだよな。例えば今おれが“ああああぁぁぁぁ!”って叫んでも文字で説明するとなると面倒くさい。ちなみに今の叫びはおれが突然崖から飛び降りたってことなんだけど、絵なら一発だもんな』
「いきなりお前が崖から飛び降りたって書かれてもな」
『実際崖から飛び降りなくてもその仕草があるなしでまた別次元の話だからね』
「まあなあ」
『表現ついでに言うとさ、おれ若い奴がかっこよさげな修飾語、形容詞とか助動詞とか副詞とか使うの嫌いなんだよ。よくあるだろ?なんでもかんでもそういうのつけるタイプ。一応かっこがつくからね。例えば、おれは走った、ってのを、おれは闇を切り裂くようにして猛烈に走った、とかさ。まあ例えに失敗したけど』
「ああ、“陰鬱な”とか“神々しい”とか“破滅的な”とか“蕩々と”とか“まがまがしい”とか、ファッションみたいな言葉はあるよな」
『とりあえず闇を割いてとか心の闇とか書けばそれなりになるからな。それが文の半分を占めていることも珍しくない。いや中年以降ならいいんだよ。使い方も熟していくしさ。でも若い奴のは駄目だ。見てるこっちが恥ずかしい。気持ち悪いよ』
「闇ばっかだけどな。まあなんとなくかっこがつく言葉を使っちゃうてのはあるな。ひょっとしたら文字数を稼ぐ役割もあるのかもしれない」
『おれが、おれは走った、を彩るなら、おれはパキポキ走った、だな』
「はぁ、なんとなくわかりそうでわかんねえな」
『パキポキ走ってんだよ。ほらおれって走る度に膝が鳴るから』
「お前の話だったの!?」
『おれ暗いところ苦手だし、夜も出来るだけ明るいとこ走るから闇を切り裂くことはまずない。間違ってんだよあいつら』
「だからお前の話だったのかよ!あいつらって誰だよ!間違うもなにもお前が勝手に言い出したことだろ!わかんねえなぁ」
『要するにそいつがどう走っているかはある程度読者に任せりゃいいんだよ。その前の段階でそいつのキャラや状況を説明しとけば読者はそいつがどう走ったかなんてポイントだけ押さえれば伝わるんだよ。馬鹿じゃないんだから』
「ああ、そこが文字の強みというか、情報量が少ないからね、読者のイメージにマップされるというか、想像の余地があるというか、同じ物語でも読んだ人、一人一人が違う物語を読んでるというか」
『というかというかうるせえな』
「悪かったな」
『遅刻しそうな時にゆっくり走る奴なんていないわけだし、そんな状況でゆっくり走らせる必要があるならその時はゆっくりって書けばいいわけで。話は代わるけどおれは無味乾燥なのが好きなんだ。一々、人間の性を暴いた、とかいらない。主義主張もいらない。なんもないカラッとしたのが好き。大体人間の性とか内面とか、そんなものは十人十色だろ。勝手に暴かれたり抉られたりとかされても困る』
「まあ楽しみ方も十人十色ってことで」
『おれ今度“うんこ観察日誌”って物語を書こうと思ってんだ』
「どんな内容なの?」
『主人公はおっさん。まあ設定はまだ言わない。ある日道端に落ちていたうんこを愛してしまうんだ。家に持ち帰ってずっと観てる。で、オチは、まあ言わないけど』
「本当に書くんならそれでいいけど、確かに内容はなんもなさそうだな」
『なんもないよ、ただ観てるだけだからね、心理描写も極力避ける。それで四百字詰め原稿用紙千枚書くこっちの身にもなってみろ!』
「知らねえよ!つうか千枚って書きすぎだろ!どんだけ大作なんだよ!うんこ観察してるだけなんだろ!?」
『でもまあ、合間合間で殺人事件が起こったりするからね』
「じゃあそっちをメインで書けよ!」
『いや主人公は事件に一切関わらないからね。ただうんこを観てる。殺人事件は勝手に解決していくから』
「もうなんなんだよそれ!」
『確かにそうだな。じゃあせっかくだからうんこに事件を解決させよう』
「それはそのうんこが殺人事件の決定的な証拠だったみたいな?」
『そんな劇的なことは起こらないよ。おもしろくなっちゃうだろ。証拠として引き渡されるうんことの悲しい別れとかさ。それじゃあなんもないんじゃなくてなんかあるものになっちゃうからね。それじゃあ駄目。ただうんこが名探偵になって事件を解決に導くだけだよ』
「そっちの方が劇的だろ!」
『真実はいつもひとつ!』
「コナン君じゃねえかよってまさか!」
『ウンコ君だよね』
「あーあ、言っちゃった。台無しだよ!もういい!」
終わり
『愛されるよりも愛したいね、マジで』
「ああ、そう」
『この詞でCD出そうかな』
「ややこしくなるからやめてくれる?」
『まあマッキーとぴったり帽子先生の判決待ちってことで』
「判決を待つってことはお前明らかにパクったよな!」
『本当はこんなことなんかしたくないんだ』
「はぁ」
『本当はスラップスティックではちゃめちゃで意味がわからないものをしたいんだ』
「シュールみたいな?」
『シュールというかダダかな』
「ああ、ってもよくわからないけど。とにかくわけのわからない、自動筆記みたいな、それでいてスラップスティックなら、暴走というか」
『そうだ。でも文字じゃ伝わらないじゃない』
「そうだな」
『やっぱ文字だと伝えられる情報に限界があるよな。ほら江戸時代に想像と伝聞で描かれた象みたいなもんでさ。似て非なるものじゃない。百聞は一見にしかずだよな。一々状況を事細かに説明しなきゃいけないと思うと面倒くさいし』
「まあ小説と漫画の違いというかね。場面から読み取れる情報量には雲泥の差があるよな」
『そこなんだよな。例えば今おれが“ああああぁぁぁぁ!”って叫んでも文字で説明するとなると面倒くさい。ちなみに今の叫びはおれが突然崖から飛び降りたってことなんだけど、絵なら一発だもんな』
「いきなりお前が崖から飛び降りたって書かれてもな」
『実際崖から飛び降りなくてもその仕草があるなしでまた別次元の話だからね』
「まあなあ」
『表現ついでに言うとさ、おれ若い奴がかっこよさげな修飾語、形容詞とか助動詞とか副詞とか使うの嫌いなんだよ。よくあるだろ?なんでもかんでもそういうのつけるタイプ。一応かっこがつくからね。例えば、おれは走った、ってのを、おれは闇を切り裂くようにして猛烈に走った、とかさ。まあ例えに失敗したけど』
「ああ、“陰鬱な”とか“神々しい”とか“破滅的な”とか“蕩々と”とか“まがまがしい”とか、ファッションみたいな言葉はあるよな」
『とりあえず闇を割いてとか心の闇とか書けばそれなりになるからな。それが文の半分を占めていることも珍しくない。いや中年以降ならいいんだよ。使い方も熟していくしさ。でも若い奴のは駄目だ。見てるこっちが恥ずかしい。気持ち悪いよ』
「闇ばっかだけどな。まあなんとなくかっこがつく言葉を使っちゃうてのはあるな。ひょっとしたら文字数を稼ぐ役割もあるのかもしれない」
『おれが、おれは走った、を彩るなら、おれはパキポキ走った、だな』
「はぁ、なんとなくわかりそうでわかんねえな」
『パキポキ走ってんだよ。ほらおれって走る度に膝が鳴るから』
「お前の話だったの!?」
『おれ暗いところ苦手だし、夜も出来るだけ明るいとこ走るから闇を切り裂くことはまずない。間違ってんだよあいつら』
「だからお前の話だったのかよ!あいつらって誰だよ!間違うもなにもお前が勝手に言い出したことだろ!わかんねえなぁ」
『要するにそいつがどう走っているかはある程度読者に任せりゃいいんだよ。その前の段階でそいつのキャラや状況を説明しとけば読者はそいつがどう走ったかなんてポイントだけ押さえれば伝わるんだよ。馬鹿じゃないんだから』
「ああ、そこが文字の強みというか、情報量が少ないからね、読者のイメージにマップされるというか、想像の余地があるというか、同じ物語でも読んだ人、一人一人が違う物語を読んでるというか」
『というかというかうるせえな』
「悪かったな」
『遅刻しそうな時にゆっくり走る奴なんていないわけだし、そんな状況でゆっくり走らせる必要があるならその時はゆっくりって書けばいいわけで。話は代わるけどおれは無味乾燥なのが好きなんだ。一々、人間の性を暴いた、とかいらない。主義主張もいらない。なんもないカラッとしたのが好き。大体人間の性とか内面とか、そんなものは十人十色だろ。勝手に暴かれたり抉られたりとかされても困る』
「まあ楽しみ方も十人十色ってことで」
『おれ今度“うんこ観察日誌”って物語を書こうと思ってんだ』
「どんな内容なの?」
『主人公はおっさん。まあ設定はまだ言わない。ある日道端に落ちていたうんこを愛してしまうんだ。家に持ち帰ってずっと観てる。で、オチは、まあ言わないけど』
「本当に書くんならそれでいいけど、確かに内容はなんもなさそうだな」
『なんもないよ、ただ観てるだけだからね、心理描写も極力避ける。それで四百字詰め原稿用紙千枚書くこっちの身にもなってみろ!』
「知らねえよ!つうか千枚って書きすぎだろ!どんだけ大作なんだよ!うんこ観察してるだけなんだろ!?」
『でもまあ、合間合間で殺人事件が起こったりするからね』
「じゃあそっちをメインで書けよ!」
『いや主人公は事件に一切関わらないからね。ただうんこを観てる。殺人事件は勝手に解決していくから』
「もうなんなんだよそれ!」
『確かにそうだな。じゃあせっかくだからうんこに事件を解決させよう』
「それはそのうんこが殺人事件の決定的な証拠だったみたいな?」
『そんな劇的なことは起こらないよ。おもしろくなっちゃうだろ。証拠として引き渡されるうんことの悲しい別れとかさ。それじゃあなんもないんじゃなくてなんかあるものになっちゃうからね。それじゃあ駄目。ただうんこが名探偵になって事件を解決に導くだけだよ』
「そっちの方が劇的だろ!」
『真実はいつもひとつ!』
「コナン君じゃねえかよってまさか!」
『ウンコ君だよね』
「あーあ、言っちゃった。台無しだよ!もういい!」
終わり