読んだら損する「運命はテイクアウト」(25)
「ああ…犯人は現場に戻ってくるって言いますもんね」
わざわざ“放火魔は”現場に戻ってくるなんて言わない。言い足さない。逃げる言葉は使わない。が、内心、もちろんイメージトレーニング通りに顔には出さないが、ヒヤヒヤものだ。とにかくこの場から逃げ出したい気持ちで一杯だ。
「そうそう。しかし考えてみると馬鹿なことだよ、犯人が来たって僕にはわかりゃしないだろうに。僕の知っている人なら別だけど…」
「…それって…僕のことです…か?」
鳩が豆鉄砲くったような顔をして応えた。かなりの、K点スレスレの内容だ。しかしこれもイメージトレーニング通り。
「え?いや、ははは、ごめんごめん」
今日の小山さんはよく笑う。しかも謝ってはいるが明確に否定していない。僕が容疑者だということを。やはり、というか、道助のマル秘ノートなど半分どうでもよかったに違いない。あんなもの勝手に手前で処理すれば良かっただけの話だ。確か僕に見せる前に、適当にペラペラと見た、とか言ってなかったか?言葉通りに受け取ったとしても僕だって、ペラペラ、という言葉の範囲内でしか見てないが大体の内容はわかったのだ。決して親しい間柄ではない僕を呼び出す口実に過ぎなかったのだろう。
「で、そのことで一つ話があるのだけど、健一君」
本番?
「事件当日、知美ちゃんに会ってないかな?」
はぁ。……………!!
「いや、会ってないかなってのは変な質問だね。彼女の姿を見かけなかったかい?」
いや、そんなこと言われましても。………。
「事件が起こる直前に一人でコンビニに寄ってることまではわかっているのだけど」
はぁ。……。
「どうやらそのコンビニと家の間で犯人に出会い、事件が起こったようなんだよ」
はぁ。そうなるでしょうね。………!
「それがちょうどね、僕と健一君が別れた時間と距離と、健一君の家の方向と重なっていてね、ひょっとしたらって思ってね」
ああ、コンビニってあそこの角のセブンヘブンのことですか?…………。…ちっ。
「そう。多分そこでいいと思うよ。彼女じゃなくても、怪しい人物とか、怪しい人物は当日のことだけじゃなくて一昨日のことでもいいのだけど、居なかったかな?怪しい人物じゃなくても何か気になる、気になったことがあったら教えて欲しいんだ」
真顔の小山さん。割と口が臭い。ここは事実を曲げて答えなければならない。
「知美さんを見たかどうかと聞かれましても、うーん、僕、知美さんの顔わかりませんし、あっ、テレビでは見ましたけど、写真ですからね、うーん、なんとも…」
小山さんは僕の演技を見終わると、なにやらカバンをゴソゴソ。そして、
「ほら、これを見てくれないかい」
と、言って数枚の写真を僕に差し出した。「かなり最近の写真だから、当日と変わりないよ」言うまでもなく彼女の写真で、当たり前の話だけど、今でも目を瞑れば瞼に浮かぶ如何にも才色兼備な美女の二乗、紛れもなく僕が殺したその人の写真。
「はぁ、なんか、テレビで見た顔と大分違うような気がしますね…」
改めて彼女を見て、やっぱり抜群に綺麗で可愛い。妄想や思い出に補正された瞼の君に引けを取らない。むしろより美しさの凄みを増した感じだ。
何枚か写真をめくると僕は写真の共通点に気がついた。気がついてしまった。まず集合写真編。彼女は必ず小山さんの隣に写っている。とても楽しそうな彼女の笑顔。そしてシングルカット編。彼女一人が写っている写真。カメラ目線。彼女の笑顔の視線先には…恐らく、いや、もう確実に、小山さんがいるのだろう。“そういう”写真だ。かなりのプライベート写真。集合写真はいいとして、何故小山さんが持っている。流出以外に考えられることはひとつ。いや、ふたつ。ひとつ、小山さんが事件を探る為に彼女の友人や家族から借りているというもの。しかし僕にはこの答えしか選べない。というかもう絶対これしかない。なぜ今までそのことを考えなかったのだろうか。巨人と美女。考えもしなかったことを確信すると共に無性に苛立った。
「…きれいな人ですね、ひょっとして小山さんの彼女だったんですか?」
少しいじわるに言ってやった。小山さんは恥ずかしそうな顔をして、
「うむむ、うん、まあそういうことになる、ね」
と、言った。
わざわざ“放火魔は”現場に戻ってくるなんて言わない。言い足さない。逃げる言葉は使わない。が、内心、もちろんイメージトレーニング通りに顔には出さないが、ヒヤヒヤものだ。とにかくこの場から逃げ出したい気持ちで一杯だ。
「そうそう。しかし考えてみると馬鹿なことだよ、犯人が来たって僕にはわかりゃしないだろうに。僕の知っている人なら別だけど…」
「…それって…僕のことです…か?」
鳩が豆鉄砲くったような顔をして応えた。かなりの、K点スレスレの内容だ。しかしこれもイメージトレーニング通り。
「え?いや、ははは、ごめんごめん」
今日の小山さんはよく笑う。しかも謝ってはいるが明確に否定していない。僕が容疑者だということを。やはり、というか、道助のマル秘ノートなど半分どうでもよかったに違いない。あんなもの勝手に手前で処理すれば良かっただけの話だ。確か僕に見せる前に、適当にペラペラと見た、とか言ってなかったか?言葉通りに受け取ったとしても僕だって、ペラペラ、という言葉の範囲内でしか見てないが大体の内容はわかったのだ。決して親しい間柄ではない僕を呼び出す口実に過ぎなかったのだろう。
「で、そのことで一つ話があるのだけど、健一君」
本番?
「事件当日、知美ちゃんに会ってないかな?」
はぁ。……………!!
「いや、会ってないかなってのは変な質問だね。彼女の姿を見かけなかったかい?」
いや、そんなこと言われましても。………。
「事件が起こる直前に一人でコンビニに寄ってることまではわかっているのだけど」
はぁ。……。
「どうやらそのコンビニと家の間で犯人に出会い、事件が起こったようなんだよ」
はぁ。そうなるでしょうね。………!
「それがちょうどね、僕と健一君が別れた時間と距離と、健一君の家の方向と重なっていてね、ひょっとしたらって思ってね」
ああ、コンビニってあそこの角のセブンヘブンのことですか?…………。…ちっ。
「そう。多分そこでいいと思うよ。彼女じゃなくても、怪しい人物とか、怪しい人物は当日のことだけじゃなくて一昨日のことでもいいのだけど、居なかったかな?怪しい人物じゃなくても何か気になる、気になったことがあったら教えて欲しいんだ」
真顔の小山さん。割と口が臭い。ここは事実を曲げて答えなければならない。
「知美さんを見たかどうかと聞かれましても、うーん、僕、知美さんの顔わかりませんし、あっ、テレビでは見ましたけど、写真ですからね、うーん、なんとも…」
小山さんは僕の演技を見終わると、なにやらカバンをゴソゴソ。そして、
「ほら、これを見てくれないかい」
と、言って数枚の写真を僕に差し出した。「かなり最近の写真だから、当日と変わりないよ」言うまでもなく彼女の写真で、当たり前の話だけど、今でも目を瞑れば瞼に浮かぶ如何にも才色兼備な美女の二乗、紛れもなく僕が殺したその人の写真。
「はぁ、なんか、テレビで見た顔と大分違うような気がしますね…」
改めて彼女を見て、やっぱり抜群に綺麗で可愛い。妄想や思い出に補正された瞼の君に引けを取らない。むしろより美しさの凄みを増した感じだ。
何枚か写真をめくると僕は写真の共通点に気がついた。気がついてしまった。まず集合写真編。彼女は必ず小山さんの隣に写っている。とても楽しそうな彼女の笑顔。そしてシングルカット編。彼女一人が写っている写真。カメラ目線。彼女の笑顔の視線先には…恐らく、いや、もう確実に、小山さんがいるのだろう。“そういう”写真だ。かなりのプライベート写真。集合写真はいいとして、何故小山さんが持っている。流出以外に考えられることはひとつ。いや、ふたつ。ひとつ、小山さんが事件を探る為に彼女の友人や家族から借りているというもの。しかし僕にはこの答えしか選べない。というかもう絶対これしかない。なぜ今までそのことを考えなかったのだろうか。巨人と美女。考えもしなかったことを確信すると共に無性に苛立った。
「…きれいな人ですね、ひょっとして小山さんの彼女だったんですか?」
少しいじわるに言ってやった。小山さんは恥ずかしそうな顔をして、
「うむむ、うん、まあそういうことになる、ね」
と、言った。