ボツ台本コンビニガール | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

ボツ台本コンビニガール

「君の時給を僕が払ってあげるから僕の行く時間にいておくれ」


『コンビニでバイトしてる娘を好きになっちゃって』
「へー、どんな娘?」
『いやぁかわいいのよ、ちんちくりんでさ、なんていうか、ガソリンスタンドでバイトすることもブックオフでバイトすることもないだろうなって娘だよ』
「いや、よくわからねえよ?」
『ほら、あれだよ、コンビニでバイトしてそうな娘』
「うん、そうだろうね」
『かわいくてさぁ』
「まあ、かわいい娘ってだけでいいや、あ、ちなみに歳はどのくらい?」
『二十代前半と思われる』
「ああ、ボケないんだ、なんか、小学生!とか、百歳!って言ってもらえるとこちらとしては楽なんだけどな」
『つまらないくだらないことは言いたくないんだ。恋してるからね』
「…まあいいや、で、どうなの?」
『どうなのって何が?』
「いや、だから、なにかアプローチはしてるのか?」
『ああ、さっき言った彼女の年齢が推測に基づいてるように、会話らしい会話もしたことない』
「なるほどね」
『することといえばお釣りをもらうことぐらい。とってもプラトニックな恋』
「それをプラトニックというのか?相手はお前に気がないんだろ?」
『いや、脈ありだと思うね』
「本当かよ、根拠は?」
『おれに対して敬語を使う』
「当たり前だろ!接客なんだから!ていうか逆じゃねえか?」
『逆?』
「脈ありなら逆にくだけるんじゃないか?」
『たとえば?』
「たとえば、その、“いらっしゃいませー”と言うところを“あ、いらっしゃい”って言う的な」
『言ってみてどうだ?』
「うん、あんまりよくないな」
『だろ?丁寧な方が脈ありだと見るべきだろ?』
「そうかもな」
『そうだよ。相手のことを好きになればなるほど自身の職業意識を高める、そんなもんだよ恋愛なんてさ』
「言い切ったな。でもお前に丁寧な接客をするってどの程度なの?他の客と比べてさ」
『口で説明するのもなんだからちょっとやってみせるよ』
「わかった、じゃあおれが客な」
『いや、客はおれだろ』
「おれがその店員やっても違いを表現出来ないだろ!」
『ちょっと待って………………うん、その通りだね』
「なにを処理したんだよその数瞬の間に!」
『いいからいいから』
「ええ?まあいいけど」
『じゃあまずは普通の客の場合な』
「わかった……………プイーン」
『いらっしゃいませー』
「なるほどな」
『いや、レジ打ちまで通せよ、いらっしゃいませーの違いはさっきお前が見せた気持ち悪いたとえ話だろ!気持ち悪いわ!ふざけんな!おれの話だろ!どれだけ自分のいらっしゃいませーを気に入ってんだよ!』
「いや、気に入ってはいないけど、悪かったよ、じゃあ…………はいこれ」
『ピッピッと、120万円です』
「120万!?まあいいや、はい120万」
『……お客様、日本に120万円札なんておありだと思いますか?』
「悪かったよ!ペラ紙一枚出すみたいに120万円出して!ていうかお前が120万円とか、タバコ屋のおっちゃんが言う古臭いボケをかますからだろ!くだらねえこと言いやがってよ!つまらねえこと言いたくなかったんじゃないのかよ!」
『はい、9880万円のお返しです』
「おれなに!?結局一億円札出したの!?じゃあなんでさっき怒られたの!?しかもお釣り小銭感覚で渡されたしよ!札束どっさりじゃないのかよ!なんなんだよ!」
『ありがとうございましたー………まあ普通はこんな感じかな』
「相当なインフレが進まないと普通とは言えない内容だったけどな。でもまあ確かに接客自体は普通だったかな」
『そして気持ち悪いお前が元美少年のおれを演じた場合』
「…むかつく………プイーン」
『いらっしゃいませー』
「………はいこれ」
『ピッピッと、105円です』
「じゃあ110円、はい」
『5円のお返しです。ありがとうございましたぁ』
「うわあ!すっごく違う!安易なボケがないことを除いてもすごく違う!」
『だろ!?』
「これは脈がない方がおかしいよ!」
『だろ!?』
「イケるよ!やったな!」
『だろ!?』
「ただ残念なことに文字じゃ伝わらないな!」
『だろ!?』
「だろってお前」
『文字でも言葉でも伝わりきれないもの、それが恋愛じゃないかな』
「その通りだね!」


終わり いや、色々思いついてはいるんだよ?でもケータイをポチポチするのは面倒が臭いじゃない。