ボツ台本ペリカン | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

ボツ台本ペリカン

「ペリカン人気」


『ウィスキーもってこい!』
「嫌だよ!なんだよいきなり」
『最近の若い奴は駄目だ!』
「お前も十分若い奴じゃねえか!」
『おれより若い奴なんてたくさんいるじゃねえか!』
「そりゃそうだろ!」
『まったく、雨後の筍の如くうじゃうじゃと』
「そんな言い方すんなよ、むしろ少子化って叫ばれてるのによ」
『最近の若い奴は駄目だね!』
「お前の言う若い奴って大体どのくらいの歳のやつらなんだよ!お前も含まれてるのか!?」
『若い奴って言ってんだからおれの世代を含めちゃ駄目だろ!』
「で、どのくらいの?」
『若人あきらぐらいの』
「若人あきらって名前に若い人ってついてるだけだろ!年上な上に若くねえよ!」
『さしあたって幼稚園ぐらい』
「なにがさしあたったのかわからないけど幼稚園ってお前若すぎるだろ!」
『いいや、駄目だ!』
「お前、あんな自我もロクにないやつらに怒ってんのか!?やめろ!」
『いいや、怒るね!もう駄目だよあんなやつら!』
「なんでだよ!まだ善し悪しもわからないようなやつらだよ!」
『数年前までペリカンの口の中にいたやつらだぜ?』
「ペリカンってお前」
『まあ、ペリカンていう間違った性教育のたとえをわざわざ出したわけだけども』
「わざわざ説明しなくていいだろいいよ!それに別に間違った性教育っていうわけじゃないだろ、子供に性を教えるのもどうかと思うし」
『ペリカンってなんだよな。ペリカンだぜ!?』
「いいじゃねえかよ別にペリカンでも!」
『よくねえだろ!考えてみろよ!ペリカンがどっかから赤ん坊持ってきたら大事件だぜ!?』
「…いいだろ、そういうこともあるよ」
『あるわけないだろ!バカか!?ペリカンってお前、たとえにもほどってもんがあるぜ!』
「いいから、ペリカンのことはいいから!」
『よくねえよ!ペリカンだぜ!?そんな間違った性教育でいいのかよ!下手したらトラウマになるぜ!?ただでさえ子供なんて、おれ本当はこの家の子供じゃないんだ、とか思いがちな年頃なのによ!なんだ!?ゆとり教育か!?ペリカン教育か!?』
「しつこいぞ!ペリカンはもういいんだ!」
『うるせえ!いくない!ペリカンにむかついてんだよ!ペリカンの奴め!鳥類のくせして人間様の精子と卵子を司り気取りか!でっかい口しやがってよぉ!おれがペリカン見つけたら、口の中にレスラー2人突っ込んで玉乗り仕込んだ末に鼻からくす玉出してやるよ!』
「やめろよ!ペリカンの悪口言うなよ!」
『なんだよ!やけに突っかかるじゃねえか、このペリカン野郎!』
「……………」
『どうしたどうしたペリカン野郎!』
「……………そうだよ」
『ああ!?声が小さい!やり直し!』
「そうだよ!おれはペリカン野郎だよ!」
『はあ?…てめえがわけわかんねえこと言ってんじゃねえ!人間には役割分担ってものがあってだな、栄えある人間様の栄光の歴史の影には常に役割分担があったという』
「うるせえ!おれはペリカン野郎だよ!」
『うるせえってなんだ!意味がわかんねえよ!』
「…おれはペリカンに運ばれてきた赤ん坊だったんだよ」
『…ジャストモーメント…3秒考えさせてくれる?1…2…3、うん、もう一度言ってくれるかな?』
「おれはペリカンさんに運ばれてきた赤ん坊だったんだよ!」
『さん付けになっちゃたぞ………今度はもう少し丁寧に言ってくれるかな?いいとも!なんつって』
「…………」
『ああ、いや、少し丁寧に言ってくれるかな?』
「おれは不妊に悩む両親のもとに、血の繋がってない両親のもとにペリカンさんが運んできた赤ん坊だったんだよ!」
『…………するってぇとなにかい?』
「なんだよ!」
『うん………するってぇとなにかい?』
「だからなんだよ!落研のむかつく奴みたく言うな!」
『…よーしよし、少しペースってもんを取り戻すことに成功したぞ。頑張れおれ。……するってぇとなにかい?』
「だからなんなんだよ!」
『お前さん、お前さんのおとっつぁんおかっつぁんのもとにペリカンが赤ん坊を運んできたと』
「そうだよ!」
『そいでその赤ん坊がお前さんだと?』
「その通りだよ!」
『本当かい?』
「本当だよ!いいか!ペリカンさんはおれの親も同然なんだ!ペリカンさんの悪口は金輪際言ってくれるな!」
『…………証拠は?』
「……証拠?…無いよ」
『お前さん、オイラも長いことボケという役割をやらせてもらってますとね、なかなかどうして、疑り深くなっちまう。てめえで嘘をつくもんで、人の言葉には幾重ものフィルターをかけちまうのが性分なんだ、ええ?、証拠も無いのにそんなオリンピック、もといロマンチックがとめどない話を信じられるかっつったら、そんなもの恐れ入谷の鬼子母神、どうして信じられよか』
「しょ、しょ、しょうがないだろ!な、無いものは無い!」
『おやおや、急に言葉に力がなくなりやがった。まるで嘘をついているようじゃないか、さてはなにかい?隠し事でもあるのかな?』
「どきっ」
『怪しい、ずばり今おれの鋭い尋問に、はっ、としてついつい手を当てたそのポケットの中が怪しい!』
「くっ」
『さあ、なにを隠しているのかなぁ?』
「な、なにもない!」
『ふ、まさかビスケットという歳でもあるまい』
「や、やめろ!近付くんじゃねえ!」
『法律はおれの味方だぜ』
「嘘つけ!どっちかっつったらおれの味方だ!」
『ほう、果たしておれはどんな罪になるのかな?強盗ってわけかい?ふふん、なにかを盗らなきゃただの暴行罪かな?傷害罪かな?さあ、隠すと為にならんぜ』
「うるせえ!」
『うるせえ、とな。ほう、隠す、ということは否定しないんだな』
「うっ、な、なんもねえよ」
『もうお前さんの言葉に耳を貸すのはイルカに乗った少年ぐらいだぜ?』
「わけわかんねえよ!イルカに乗ってるからって人のいい少年だとは限らないだろ!」
『ペリカン野郎が言うセリフかよ!』
「う、うるせえ!ペリカン野郎って言うな!や、やめろ!それ以上近付くんじゃねえ!」
『…………ふっ、それもせうだな。オイラとしたことが少しがさつに過ぎたようだぜ』
「…………」
『ふふ、いいってことよ、たとえお前さんがペリカンベイビーだとしても』
「ペリカンベイビー」
『ふふん、ペリカンキッドのほうがお気に召すかな?』
「…どっちでもいいけど」
『なればペリカンボーヤだとしても』
「どっちでもねえじゃねえか!」
『ふふ、良い声出すようになったじゃねえか、ふふふ、オイラ嬉しいぜ』
「いいから早く続き言えよ!ペリカンボーヤだとしても!?」
『ペリカンボーヤだとしても!今は、今のお前は!おれの相方じゃないか!おれのかけがえの無い相方じゃないか!過去なんて関係無いさ!今までだって過去なんか関係無かったじゃないか!』
「お前さん…」
『さあ、2人でお客さんを笑い死にさせてやろうぜ!』
「死なせちゃ駄目だろ!…こいつぅ!」
『ははは』
「へへへ」
『と、見せかけて、そりやあぁあ!』
「ああ!やめろ!ちくしょう!やめろ!」
『あった!なんだこれは!あ、あ、ああああああぁぁぁ!』

これ以降2人の姿を見たものはいない。渺々と吹き抜ける荒野の風がデラシネを乗せて、また、うんざりするような独り言があの丘の向こうから聴こえるのみ。


終わり