読んだら損する「運命はテイクアウト」(19)
ギリギリに、しかし静かに、張り詰めた緊張感。リアルに膝にリアル爆弾を抱えているみたいなものだ。このギリギリの雰囲気で重宝したのは甥。こいつがなにかする度に笑顔がうまれる。義兄はこの雰囲気の中、どうしていればいいのかわからなそうにしている。ていうか僕と一緒に黙ってポテチ食ってる。パリポリ。コンソメ味がなくなった。そして義兄は姉に呼ばれて行った。
と、思ったら、甥を連れて義兄が再度僕のもとへ。甥をいじらないといけない雰囲気だったので、甥の目の前にポテチを一枚差し出す。掴み取ろうとする甥。当然、ポテチは甥の手から素早く逃げて僕の口へ。まあ犬とかによくやるやつ。きょとんとした顔で甥が僕を見る。濁りのない白目黒目。純心。そんな目で僕を見るなよ。義兄もきょとん。あんたもか。パリポリ。僕がもう一度同じことを繰り返すと甥はもう悔しさと恐怖が入り混じった感情を惜しげもなく披露した。泣いた泣いた。
「なにをしてんのあんたは」
姉が僕の延髄辺りをはたく。
「いや、自然界ではこうやって獲物を捕ることを覚えさすんだよ」
「猫じゃないんだからさぁ。まったく。ねえ、叔父さんにいじわるされたねえ。いじわるな叔父さんだねえ」
姉の胸に顔をうずめて泣く甥。みんな甥を見ている。微笑ましいとはこんなことなんだろう。僕は苦笑いを浮かべて喫煙エリアに向かった。やはりここでもタバコは追いやられている。ヘビースモーカーである僕の父親は、僕が記憶している限り、幼児だった僕の前でも平気で吸ってたもんだったのだが。やはり孫の力は偉大だ。
全員揃ったので近くのしゃぶしゃぶ屋に移動する段になった。総勢20人ぐらいだろうか。みんな喪服なりなんなり、ちゃんとした格好。ちゃんとしてないのは僕と甥だけ。甥はあれ以来僕と目が合うとぐずる。学習能力というやつか。
徒歩10分。すんなり予約された部屋に通される。思い思いに席へ。ビールがマッハで座に回る。
献杯の挨拶。
「えー、この度は、宮川太郎道助の…」
今まで冗談を言ったりしていたおじさんが泣き崩れた。周りからも泣き声や鼻をすする音がする。おそらくここが今日の泣きどころのクライマックスだろう。道助の親戚と思われるおばさんなんか息が出来ない程泣いている。僕は泣かない。そう決めてきた。だけど、ヤバい。僕はバッグの中の「パグの飼い方」を想って、必死になって涙をこらえた。泣いてたまるか。「パグの飼い方」に助けられ、僕はなんとか山場を越えた。
甥がパジェットガエルの鳴き声みたく泣き出したのを境に場の雰囲気が変わった。おじさんも恥ずかしげに笑って、ビールを順々に回している。ただあの親戚らしきおばさんだけは尾を引いている。まあどこにでも一人ぐらいはこんな人いる。風物詩みたいなものだ。
しゃぶしゃぶとポン酢の酸っぱさに涙は似合わない。なんていうか、明日世界が無くなってしまうことが分かった時のような明るい雰囲気。僕は多分ただ一人法律が気になっていた。
酒が一回りした頃、誰かがカラオケを持ち出して歌い始めた。マイクが家庭を、席を、回る、回る。そして僕らのところへ。
「よっ健ちゃん」
酔っ払ったおじさんの一言で僕は一曲歌わざるを得ない状況に追い込まれた。僕より前に歌っていた人達の中に若い奴もいて、若い奴それなりの歌を歌っていたことがせめてもののことだった。この雰囲気の中若い奴のトップバッターは普通の精神を持ってる奴にはきつい。
さて、選曲である。当たり前だがしゃぶしゃぶ屋のカラオケなんかに僕のレパートリーであるアングラ、サブカルソングは入ってない。入ってないし、歌ったところで誰も知らない。やはりどうせ歌うなら白けた空気は避けたい。
僕は遠藤賢司の「カレーライス」をチョイスした。これならおじさん達にうけるだろう、と、嫌らしく計算した結果だ。
ピッピッピッ。番号を入力をしてイントロが流れ始めて、
「しまった!」
心の中で叫んだ。でももう曲が始まってしまっている。どうしよう。
と、思ったら、甥を連れて義兄が再度僕のもとへ。甥をいじらないといけない雰囲気だったので、甥の目の前にポテチを一枚差し出す。掴み取ろうとする甥。当然、ポテチは甥の手から素早く逃げて僕の口へ。まあ犬とかによくやるやつ。きょとんとした顔で甥が僕を見る。濁りのない白目黒目。純心。そんな目で僕を見るなよ。義兄もきょとん。あんたもか。パリポリ。僕がもう一度同じことを繰り返すと甥はもう悔しさと恐怖が入り混じった感情を惜しげもなく披露した。泣いた泣いた。
「なにをしてんのあんたは」
姉が僕の延髄辺りをはたく。
「いや、自然界ではこうやって獲物を捕ることを覚えさすんだよ」
「猫じゃないんだからさぁ。まったく。ねえ、叔父さんにいじわるされたねえ。いじわるな叔父さんだねえ」
姉の胸に顔をうずめて泣く甥。みんな甥を見ている。微笑ましいとはこんなことなんだろう。僕は苦笑いを浮かべて喫煙エリアに向かった。やはりここでもタバコは追いやられている。ヘビースモーカーである僕の父親は、僕が記憶している限り、幼児だった僕の前でも平気で吸ってたもんだったのだが。やはり孫の力は偉大だ。
全員揃ったので近くのしゃぶしゃぶ屋に移動する段になった。総勢20人ぐらいだろうか。みんな喪服なりなんなり、ちゃんとした格好。ちゃんとしてないのは僕と甥だけ。甥はあれ以来僕と目が合うとぐずる。学習能力というやつか。
徒歩10分。すんなり予約された部屋に通される。思い思いに席へ。ビールがマッハで座に回る。
献杯の挨拶。
「えー、この度は、宮川太郎道助の…」
今まで冗談を言ったりしていたおじさんが泣き崩れた。周りからも泣き声や鼻をすする音がする。おそらくここが今日の泣きどころのクライマックスだろう。道助の親戚と思われるおばさんなんか息が出来ない程泣いている。僕は泣かない。そう決めてきた。だけど、ヤバい。僕はバッグの中の「パグの飼い方」を想って、必死になって涙をこらえた。泣いてたまるか。「パグの飼い方」に助けられ、僕はなんとか山場を越えた。
甥がパジェットガエルの鳴き声みたく泣き出したのを境に場の雰囲気が変わった。おじさんも恥ずかしげに笑って、ビールを順々に回している。ただあの親戚らしきおばさんだけは尾を引いている。まあどこにでも一人ぐらいはこんな人いる。風物詩みたいなものだ。
しゃぶしゃぶとポン酢の酸っぱさに涙は似合わない。なんていうか、明日世界が無くなってしまうことが分かった時のような明るい雰囲気。僕は多分ただ一人法律が気になっていた。
酒が一回りした頃、誰かがカラオケを持ち出して歌い始めた。マイクが家庭を、席を、回る、回る。そして僕らのところへ。
「よっ健ちゃん」
酔っ払ったおじさんの一言で僕は一曲歌わざるを得ない状況に追い込まれた。僕より前に歌っていた人達の中に若い奴もいて、若い奴それなりの歌を歌っていたことがせめてもののことだった。この雰囲気の中若い奴のトップバッターは普通の精神を持ってる奴にはきつい。
さて、選曲である。当たり前だがしゃぶしゃぶ屋のカラオケなんかに僕のレパートリーであるアングラ、サブカルソングは入ってない。入ってないし、歌ったところで誰も知らない。やはりどうせ歌うなら白けた空気は避けたい。
僕は遠藤賢司の「カレーライス」をチョイスした。これならおじさん達にうけるだろう、と、嫌らしく計算した結果だ。
ピッピッピッ。番号を入力をしてイントロが流れ始めて、
「しまった!」
心の中で叫んだ。でももう曲が始まってしまっている。どうしよう。