ボツ台本肝試し | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

ボツ台本肝試し

「肝試し。最悪」



『お前肝試しってしたことある?』
「いや、個人的にはないな、小学校の林間学校の時とかのレクリエーションでやったかなぁ。いってもお化け屋敷みたいなもんだけどさ」
『したことないってことは怖い?』
「うーん、まあ怖いよ。それになんか遊びでそういうことすると駄目って言うでしょ?憑いてきちゃうとかさ」
『ということは幽霊の存在を信じてるのね?』
「そうなっちゃうのかなぁ、でもそこまでではないよ」
『はっきりしねえな!どういうこと?』
「いや、肝試しとかお化け屋敷って怖いじゃん。怖いようになってるというかさ。それに霊が憑いてきちゃうとか言われるとさ、あんまり信じていなくてもなんか嫌だし怖いよな。幽霊の存在を信じてるか、と聞かれても、信じてる信じていない、どちらとも断言出来ないよ。見たことないし」
『あ、お前幽霊見たことないの?』
「ないな。ない、どころか幽霊なんていないと思ってる」
『でも幽霊が怖いんだろ?』
「まあもう説明出来ないからいいよ。見たことないの?って聞いてきたってことは、お前見たことあるの?幽霊」
『ある。あれは怖かったなぁ。怖いっつっても“饅頭怖い”の怖いじゃないけど』
「当たり前だろ!饅頭怖いが幽霊怖いだったらサゲの部分どうなるんだよ」
『お茶が怖いでいいだろ』
「良くねえよ!なんも成立してないだろ!」
『幽霊が好きでお茶も好きってだけでいいじゃん』
「駄目だよ!落語なんだと思ってるんだ!」
『あ、じゃあ煙草が怖いにすれば』
「幽霊が怖いつって幽霊と二人きりにさせられたあと煙草を要求したら、それ確実に幽霊とやっちゃってるよな!ピロースモークかよ!まあでも一応成立するのか?」
『幽霊から性病うつされちゃって』
「ねえよ!多分そんなことねえよ!」
『この世の病院じゃ治せないってんで幽霊病院にいったら、生きてる人は治療出来ませんって言われて』
「八方塞がりだな!つうか幽霊病院ってなんだよ!」
『しょうがないから阿部定に頼んでちんこだけ殺してもらって』
「わざわざ阿部定に頼むな!」
『幽霊病院で確かに死んだちんこの性病は治った』
「わけわからなくなってきたな」
『だけどちんこは死んじゃってるわけだから、もう二度とつけ直せない』
「よく考えてから治療にあたれよ!セカンドオピニオンとかよ!」
『夜な夜な部屋に自分のちんこの亡霊がやってきては、なにをするでもなく、勃ったり勃たなかったりしてる』
「なに言ってんだよ!」
『さすがに息子が勃ったり勃たなかったりしている様子は見るに耐えないってことで、今度は万個の霊を見つけてきて』
「どこにいんだよ万個の霊なんてよ!」
『テンガ作ってる工場』
「なるほど、だからテンガはあんなに気持ちいいってばかやろう」
『ひとりとちんこと万個で仲良く暮らしましたとさ。めでたしめでたし』
「めでたしならそれでいいんだけど!」
『でも後日談がありまして』
「続くのかよ。アメリカのドラマか!」
『そいつ万個の霊に手を出しちゃってね。ちんこは無いから文字通り手を出し入れしちゃって』
「うるせー!」
『思い悩む万個。ヌレヌレ』
「なんで濡れるんだよ!」
『いや、涙でだよ。お前何を想像したんだよ』
「ああ、涙でか。いやお前がヌレヌレなんて言うからさ」
『まあ万個には涙腺がありませんから出るとこは一緒なんですが』
「想像通りじゃねえかよ!」
『で、思い悩んだ万個は家を出て行っちゃう。それを追ってちんこも出てっちゃう。男はひとり寂しく暮らしていきましたとさ。めでたしめでたし』
「めでたくねえだろ!」
『いや、だって気持ち悪いだろ、部屋にちんこと万個の霊がいたら』
「元は自分で切ったちんこだろ!仲良く暮らしてたんじゃねえのかよ!」
『どうでもいいじゃねえか、てきとーな作り話なんだから』
「そうだけど!少しは作者としての自覚を持てよ!」
『えーと、なんの話してたんだっけ?』
「お前が幽霊見たことある、って話」
『ああ、あれは高校生の頃だな、近所で有名な心霊スポットに友達と行ったんだよ』
「まあよくあるんだろうね、そういう状況」
『田中の家って呼ばれてる廃屋なんだけど』
「随分普通の名前だなおい」
『外見は普通の家なんだよ。表札が残っててね、表札に書いてある名前が…なんて書いてあると思います?』
「田中だろ?」
『…………正解』
「なんでいきなりクイズ形式にした!?正解しちゃったし!まあでもそういう普通の場所って怖いかもな。妙に生活感が残ってる感じが」
『そこが何故田中の家って呼ばれてるのかって言ったら、そこに田中が住んでたからなんだ』
「なにをいまさら、だよ!」
『夜中、田中の家の前に到着した我々一行』
「探検隊みたく言うな」
『入る前にちょっとしたイベントがあるんだ』
「イベント?」
『ある時間にインターホンを三回鳴らすと出るはずのない応答があって、それに応じちゃうと死ぬってわけ』
「ああ、それは怖いな。よく出来てる」
『でまあ鳴らすのよ。当然時間を合わせて。どうせなんもないんだろっつってさ。ほら高校生なんていきがってるでしょ』
「うん、ビビってるところは見せたくないよな。肝試しっていうぐらいだし」
『ピンポーン、一回、ピンポーン、二回、なにも起こらない、ピンポーン、三回、ガチャ』
「うわぁ」
『はい、どちら様?こんな時間に。この世のものとは思えない声で言うんだ』
「怖っ!」
『もう友達なんかパニクっちゃてさ。でもおれは幽霊なんて信じちゃいなかったから、応答してやったんだよ』
「よくやったなお前」
『とっさに田中君の友達ですって言ったの。家族の幽霊だって話だったから』
「なるほど」
『そしたら、鍵開いてるからどうぞって』
「うわぁ」
『確かに鍵開いてるのよ。恐る恐るドアを開けると、変な匂いがして、やけに暗くてさ。まあ夜だから当たり前なんだけど、もう明らかにこの世のものとは思えない闇の空間が広がってる』
「怖いなぁ、入ったの?」
『入るか入るまいか悩んだけど、ここでいかなきゃ男じゃないでしょ』
「入ったんだ。凄いな」
『入った。入ったらさ、音が聞こえるんだよ。ラップ音っていうの?バタバタバタバタって誰かが歩き回っているかのような音が』
「うわぁ」
『友達の誰かが、もう帰ろうって言ってくれるのを期待してるんだけど、みんな自分から言い出せないわけ』
「そうかもな、ひよってるって言われちゃうしな」
『前に進むしかないんだ。今考えればもうあっちの世界に一歩踏み込んでておれ達の行動が支配されていたのかもしれない』
「簡単に引き返せないんだ」
『意を決して進む。心臓がバクンバクン脈打ってるのが自分でよくわかった。で、まあ、田中君の友達ですって言った手前やっぱり子供部屋を目指すわけ』
「律儀だな」
『ていうか自然と足がそっちの方に向かうんだよね』
「ああ、そっか」
『階段を上がってさ。また階段がえらく急でさ。しかも一段上がる度に音がする。ギィー、ギィー』
「怖すぎだろ」
『二階に上がると、もうここだってわかるんだよね、ここが子供部屋だって、ドアの隙間から光が漏れてるんだよ。ついてるはずのない光が』
「うわぁ、もう開けるなよ。でも開けたんだろ?」
『開けたよ。ゆっくり、段々と光の漏れが大きくなっておれ達を照らしていく。そして部屋の中が見渡せるようになると、いたんだよ!幽霊が!田中が!』
「ああもう!」
『おれ、いやおれ達全員、時間が止まったみたいに体が固まっちゃってさ。そんなおれ達に向かって幽霊がさ、よく来たね、一緒に遊ぼう、なんて言ってきた』
「で、どうした?」
『そこが限界だった、みんな悲鳴をあげて家から出てった』
「ああ、出られたんだ。よかったじゃん。まあでられなかったらここにはいないわけだけど」
『帰り道、みんな黙りこくっちゃってさ』
「そりゃそうだろ。軽い気持ちで行ってこの始末だろ?」
『でもなんか違和感があるんだ。そう。友達がひとり増えてるんだ』
「ってことはまさか」
『おれそれに気がついてさ。うわあぁ!って悲鳴をあげたら、ひどいじゃないか、って声が聴こえて、人間が走る足音がしたんだ』
「うわ怖いわぁ」
『で、その日はみんなそれぞれ家に帰って。次の日学校でみんなと会った』
「様子が変わってた奴とかいなかったの?」
『いや、みんな元気だった。でも怖くなったから田中のケータイにメールすることにしたんだ、昨日はごめんね、って』
「え?田中のケータイに?どういうこと?」
『ほら、田中って中学の同級生だったから』
「ちょっと待て!意味がわからないんだけど!」
『わかれよ!中学の同級生だったんだけど色々あったんだよ!でもケータイはまだ通じるから』
「色々ってやっぱり不幸なことが?」
『そうだよ!田中だけ違う高校に行ったんだ』
「全然不幸なことじゃねえよ!大した問題じゃねえ!なんだよ!結局田中は生きてんのか!?」
『生きてるよ。多分』
「生きてんのかよ!肝試しでもなんでもねえじゃねえか!ただ夜に友達の家に行っただけじゃねえか!悪質なイタズラだ!勝手に心霊スポット扱いしてよ!」
『でもあれ以来メールしても返事が返ってこないんだよ。死んでるのかも』
「そりゃ深夜にそんなイタズラされりゃ怒るよ!田中の身にもなれ!縁切られたんだよ!」
『まさか、田中っておとなしい奴だったんだぜ?』
「だからだよ!もう関わりあいになりたくなかったんだよ!お前ら中学の頃田中いじめてねえよな!?」
『いじめてねえよ!変なこと言うな!』
「ああ、いじめてないならいいんだ」
『ボケでもいじめてたなんて言うもんか!』
「いやここは、やっぱりいじめてたんじゃねえかよ!って流れだろ!」
『お前いじめなんて言葉を軽々しく扱うな!いじめられてる奴やいじめられてた奴が聞いたらどんな思いになると思ってんだ!』
「悪かったよ」
『ったく、田中の身にもなってみろよ!』
「やっぱりいじめてたんじゃねえかよ!もういいよ!」
『本当はいじめてねえんだよ!』
「わかってくれるから!」


終わり なーむー