ボツ台本夏休みのおもひで | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

ボツ台本夏休みのおもひで

「夏休みの重い秀明」


『もうすぐ夏休みだな』
「そうだね、いやぁ夏休みは楽しみだったなぁ、春休み冬休みにはない期待感があったよ」
『具体的には?』
「なんといっても長いからね。北海道とか雪国では冬休みの方が長いっていうけどおれ東京生まれだから、7月下旬から8月まるまる1ヶ月、しかもお盆休みがあるからね、田舎に帰ったり旅行に行ったり、うちに帰ればプールに行ったり、コンクリートジャングルの中熱射病ギリギリフラフラになって蝉捕ったり、蝉の幼虫捕まえてきて夜中観察したり、あとお祭りね。久しぶりにクラスメートと会ってさ、なんか気恥ずかしいんだよね」
『ああそう。もうなにも言うことなくなっちゃったよ』
「ああ…ごめんな、お前はどうだった、夏休み」
『もういいよ…』
「あ、いや、悪かったけどもさ」
『もう終わりだよ!終わり!夏休みなんかなくなっちまえばいい!』
「いや本当悪かったよ、ごめんなさい!頼むからなんか話してくれよ」
『どうせおれなんか夏休み明けに金髪で登校してもデビューしきれなかった男だよ!』
「いや、お前の中学高校厳しくてそんなことしたら即ボウズだっただろ!」
『女子にからかわれたりな、あらあなた、ふふふ、おめかししちゃって、なんて言われて』
「お前男子校だったろ!妄想だよ!それにおばさんくさくないかその女子」
『食堂のおばちゃんだからな』
「女子って呼ぶな!」
『おれなんてチャキチャキの江戸っ子だからね、爺さまが浅草に来ておれで三代目。浅草生まれの浅草育ち』
「まあ東京には1000万人以上いるけどその大半は他県の人達だからね。純粋な、江戸っ子というか東京出身のやつって意外に少ないよね」
『お前も含めてな』
「いやおれ東京で生まれ育ったんだけど」
『両親は東京生まれじゃないだろ!?三代続かなきゃ江戸っ子じゃねえよ』
「まあそう言うけど」
『江戸時代になって全国から江戸に人が集まったからね。当時既に100万都市になったわけ。………』
「…………」
『……………』
「………いやだからなんだよ」
『えっ、特になにもないけど』
「なんだよ!ないのかよ!ああもう、で?夏休みの思い出とかは?」
『ないね、田舎っつう田舎もなかったしね』
「爺さんの田舎とか母方のとかは?」
『爺さんの親戚とは交流がなかった。母方も東京だから。しかも日暮里』
「チャリンコで行けちゃうな」
『そうだなぁ、強いて言えばお年玉を夏休みまでとっておいて』
「ああ、やるよね、夏休み前に使っちゃうことも多いけど」
『お年玉をためておいて吉原に行ったことかな』
「ちょっと待って!それいつの話!?」
『小三』
「小三!?早過ぎるだろ!なにしてんだよ!高校ぐらいならわかるけど!小三ってお前!ていうか相手してもらえないだろ!」
『いや、変装したから』
「無理無理!小三って八才か九才だろ!?無理過ぎるわ!」
『確かに無理だった。つけ髭をつけてたんだけど、チン毛の存在を忘れててさ、慌てて髭をチン毛に見立てたんだけど竿につけちゃってバレちゃった。うっかりだよ』
「バレるの遅いよ!でもまあ確かにうっかりしてたな」
『しょうがねえから吉原の裏に回ってシャブ買ってな』
「やめろ!なに買ってんだよ小三で!吉原の裏って」
『山谷だよ』
「なにも言えねえよ!」
『しゃぶられない代わりにシャブ買ってさ』
「なに言ってんだよ!」
『もう病みつきになっちゃって』
「やめろ!そういうことは言うな!」
『だから夏休みが終わる頃には骸骨みたいになっちゃってさ、あれ誰?転校生?なんて言われたもんだよ』
「ものすごいデビュー決めたな」
『キャッチフレーズは“骨ごとシャブって夏サマーサマー”なんつって』
「昭和のアイドルじゃねえかよ!」
『もう問題になっちゃってな』
「そりゃなるよ大問題だろ!金八先生も真っ青だよ!金八だって中三の話だからな!」
『やめさせる為に運動しろってことで強制的に野球やらされてな、やりたくねえから必死になって暴れたんだ、フリーダムフリーダム!ノーモアウォー!』
「反戦運動しちゃってるじゃねえかよ!」
『でもいかんせん体力が続かなくてね』
「まあなあ」
『仕方なく野球やってたらさ、体力もついてきて、おれある試合でホームラン打ったんだよ。それがきっかけでシャブやめたんだ』
「なんかあったよなそんなポスター、“覚醒剤打たずに、ホームラン打とう”ってやつ」
『ああ、ホームラン打った時のおれが写ってるやつね』
「清原だよ!ポスターに使われてたのは!」
『笑っちゃうよな、なにが“覚醒剤打たずにホームラン打とう”だよ。意味がわかんねえよ』
「お前それ実行して効果あったんじゃねえか!」
『大体あいつらホームラン打つ為に覚醒剤打ってんだから』
「やめろ!てきとうなこと言うな!」
『本当のことだろ?』
「確かに不祥事はあったけど、本当か嘘かは置いておいてなんでお前がそんなこと知ってんだよ!」
『だっておれが売りつけてたんだから』
「お前シャブやめたんじゃねえのかよ!」
『おれはやめたよ。売人はやらないんだよ』
「うわなんか怖い」
『シャブのうまみってやつは二通りあるってことだな』
「なに言ってんだよ!やめろ!」
『シャブ売った金でしゃぶられて』
「またかよ!」
『リベンジだよ!あの夏の思い出にリベンジしたんだよ!』
「ちょっとした美談みたく言うな!最低だろ!」
『帰りにしゃぶしゃぶ食って、もうなんつうかシャブしゃぶしゃぶしゃぶだよな』
「わけわかんねえよ!」
『え?だってシャブでしゃぶられしゃぶしゃぶじゃん』
「説明されたところでどうにもなんねえよ!やめろ!」
『シャブ様々だよな』
「本当やめろって!」
『シャブサマーサマーだよな』
「お前の夏休み明けデビュー当時のキャッチフレーズ持ち出してくんな!」
『でもそんな生活も長くは続かなかった』
「というと?」
『警察にシャブられちゃったんだ』
「パクられちゃったな!」
『ちなみに捕まったのは小六の頃な』
「どんだけ波乱万丈な小学生時代だよ!なんつうかお前につける薬はねえな!」
『点滴打ってもハイにはなんねえからな』
「うるせー!もういいよ」


終わり なーむー