読んだら損する「運命はテイクアウト」(1) | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

読んだら損する「運命はテイクアウト」(1)

そもそもの発端は道助(みちすけ)の自殺だ。ひとりでひっそりやればいいものを、僕を巻き込んだ。
あいつから久しぶりにきたメール。
「今ひま?」
限りなくニートに近い僕は火曜日の昼前といえど暇であった。
「ひまっちゃひま」
メールを返信してから10分後、僕は道助と会った。久しぶりだ。指折り数えてみると、パー、グー、パー。ちょうど10年ぶり。小学校の卒業式以来だ。それでも道助とは親友である。家も歩いて5分ぐらいだし、幼稚園の頃からの友、いや、もっと遡る、僕と道助が生まれる前、僕の両親と道助の両親が産婦人科で出会い僕の兄と道助の姉をほぼ同時期に生んだところから僕と道助は親友になることが決まっていた。長男長女に続き長女次女もほぼ同時期に生まれ同学年。そして僕達。僕らはみんな同じ幼稚園、小学校に通った。みんながみんな中学を受験した。上のふたり、4人、が偏差値の高い有名学校に受かったのに対し道助と僕は偏差値50ぐらいの学校に進んだのも一緒。10年ぶりだけど僕達は親友なのだ。
立ち話もなんだし、お腹も空いていたので飯を食うことになる。道助は妙に元気で目が爛々と輝いていた。今思えば、自殺を決意した意志の力の輝き、死ぬ前の思い出作りに一生懸命だったのだろう。なんせ10年ぶりだったので道助の異常に気付きはすれど感づきはしなかった。
10年ぶりに会っても道助と話すことは特にない。でも楽しい。道助が死んでしまったのでわからないが、たとえ何十年ぶりに会っても話すことは特になかっただろうし、その間ろくに連絡もとらなかっただろう。だから道助からメールが来たときは驚いた。親経由で互いのメールアドレスを知って以来初めてのメールだった。
飯を食い終わる頃、
「ちょっと今から行きたい場所があるんだけど、つうか今からそこ行くから」
と、道助は元気にそして素っ気ないほど明るく言った。
「ホテルだったら俺全力で逃げるから」
僕の他愛もない冗談に道助はよく笑った。
道助の、行きたい場所、とは屋根の上だった。
「おい、子供の頃なら“コラ!”で済んでも今の俺らじゃ警察の厄介になるぞ」
屋根の上は僕達がガキの頃の秘密の場所。家の近所で一番大きいマンションの屋上。屋上といっても周りに柵があるわけでもなく、傾斜していて、まさしく屋根の上。
このマンションはオートロックなのだが、なに、このマンションが工事中のときからの遊び場だ。忍び込むことなどわけない。ちなみにこのマンションが建てられる前、ここは草っぱらだった。ヘビを捕ったりして遊んだもんだ。
僕らは懐かしいルートでマンションに忍び込むと一気に階段を駆け上る。警察に捕まるならそれはそれでいいか、そんな風に思ってた。どうせニートだし。最上階は12階。タンが喉にからまり呼吸困難になった。屋根への道はガキの頃と相変わらず不用心、というか構造に問題があるんじゃないかと思うほど、立入禁止の扉はあるものの野天にあるので簡単に、それこそガキでも簡単に乗り越えることが出来る。そしてはしごを上れば屋根。
「おぉ、すげぇ怖ぇ」
ふたりでうなずきながら慎重に歩を進め、屋根のてっぺんに僕らは座った。