ボツ台本自動車教習所 | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

ボツ台本自動車教習所

「自動車教習所」


男A車に乗り込む。
「よろしくお願いします」
教官Bむすっとした表情。無言。
「うわぁ、怖ぇ、ただでさえ今日が初めての路上教習なのに…」
『………………手帳』小声
「え?」
『……………………手帳』同じく
「??はい?」
『手帳だよ手帳!教習手帳!早く出せおら』
「あ、は、はい」
「うわぁちょー怖ぇー」小声(心の声風)
B渡された手帳をめくり、見る。
『なんだよ、今日が初めての路上かよ』
「は、はい」
『たくよぉ、おれぁガキのお守りなんてしたくねぇんだよ』
「えぇ!?あんた教官だろ」心の声風
『なんか言ったか?』
「いえ、なにも」
しばし無言。
「…………あの」
『なんだ!?』
「え?いやあの、もう教習始まっている時間じゃないですか?」
『ああ!?なんだあんた、おれに文句あんのか?』
「いや、文句ってわけじゃないですけど」
『ああもういいよ、ったく近頃のガキは、はいじゃあ走らせて』
「は、はい」
Aシートベルトやミラー位置の確認をしてエンジンをかける。
車発進。ブイーン。
『先に言っておくがな』
「は、はい」
『おれの教習中一回でもエンストしたら…』
「エンストしたら…」
『田中さんの頭の上に鳩の糞が落ちると思え!』
「え?」
Aわけがわからず。エンストする。
『おい!ああ、もう』
「す、すいません」
『おれに謝るな。謝るんなら田中さんに謝れ!!』
「えぇ!?」
『おら早く謝れよこのボケ!』
「す、すいません。…田中さん」
「なんなんだよこいつ…」心の声風
『うん?』
「あ、いや」
『ほら早くエンジンかけなおせよ、時間なくなっちゃうよ。あんたが好きな時間がさ』
「あ、はい」
「あーもうこいつむかつく」心の声風
ブイーン。
『デデンデンデデン』ターミネーターのテーマ
「え?…あ、あはは」苦笑い
『デデンデンデデン』
「はは…」
『テレレ~テ~(急に大声になって)ババババババババ』B、Aの頭を機関銃のようなもので撃つフリ。かなり大袈裟に動く。
「うわぁ!」
エンスト。
『ああ、ああ、またやったよもう』
「あ、あんたが突然変なことするからでしょうが!」
『…なにかい?おれのせいだというのかい?』
「そうだろうが!!あーもう最悪だよ」
『………お前、免許とったらまずなにをする?』
「は?」
『免許とったらどうすんだって聞いてんだよぉ!』
「なんだよ、もう別に怖くねえよ」
『うるせえ、いいから答えろガキぃ』
「あーはいはい、答えます答えます。免許とったらね。そうだな、まあ友達誘ってどっかドライブにでも行くんじゃないですかね!」
『ほーう。そいつは楽しそうだな』
「そうでしょうね!」
『しつもーん。あなたが運転中、助手席の友達がおもしろいギャグを言いました。あなたはどうしますか?』
「はあ?」
『つべこべ言わずに答えろや!』
「あーもう、笑うよ。ギャグがおもしろいんならね」
『もう想像以上におもしろくて、ツボにはまりました。どうしますか?』
「だから、笑うっつってんだろ」
『ものすごくおもしろいのに、それだけ?』
「ああ!?…もうわかったよ、はいはい、そんなにおもしろいんなら腹を抱えて大爆笑するでしょうね!」
『その間、運転はどうする?』
「え?……はっまさか」
『そうだ。運転をする者はたとえ同乗者が突然大爆笑ギャグを言ったとしても常に冷静にハンドルを握らなくてはならない。その点さっきのお前はどうだ?冷静だったか?違うだろ?あんな程度のギャグで』
「あれギャグだったんだ」
Bニラむ。
「す、すいません」
『あんな程度のギャグでお前は取り乱してエンストさせちまった。果たしてお前に運転する資格はあるのかね?』
「…変なやつだけど言ってることは確かにその通りだ…すいませんでした!おれが間違ってました。しかもあんなしょうもないギャグで」
『しょうもない言うなあぁ!』
「あ、すいません。とにかくおれが間違ってました」
『だろ?』
「はい」
『じゃあ続けて』
「はい」
ブイーン。
ターミネーターアゲイン
『ババババババババ』
A苦笑いで乗り切る。
『ババババババババ』
「はは」
『ババババババババ』
「へへへ」
『………………そんなにおれのギャグつまらないか?』
「え?うわ」
Bニラむ。
「あ、あぶねぇ…」
………ブイーン。
『あ、田中さんだ』
「え?ああー」
エンスト。
『おい!』
「す、すいません。だけど田中さんは卑怯…ああー田中さんの頭上に鳩が……あ、あー…やられた」
『……………わかったか?』
「はい…本当だったのか…すいません田中さん」
『よしじゃあ続けて』
ブイーン。教習終了。
「ふぅ。あの、今日は本当にありがとうございました。おれ運転甘くみてました」
『……………』
B無言で車をおりる。数歩行ったところで、
『もう田中さんに恥かかすなよ』
「は、はい!」
『へ、良い声だすようになったじゃねえか』
「ありがとうございます!」
『…………今度は素直におれのギャグで笑わせたいものだな』
「それは無理」


(了)