モヤモヤシリーズ。涙の感動巨編風? | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

モヤモヤシリーズ。涙の感動巨編風?

この前のことだ。僕は友達焼きそば君(仮名)と遊んでいた。夜が始まり酒を飲み始め、焼きそば君の地元だったので、男子校出身者の常套句、「女呼べよ」、僕はいつもどうり淡い期待を込めて冗談を言った。いつもなら、「いねぇよ」、で済む話。だけどこの日は違った。とんとん拍子に話は進み、焼きそば君の女同級生が近くで女友達と遊んでいる、今から合流。ということになった。ここでひとつ言っておきたいことがある。僕は既に軽くではあるが酔っ払っていたこと、従って彼女達を恋の相手だとか今夜のベッドのお供になんて考えは…あった。けど強くはなかった。第一僕は焼きそば君の同級生とそんな関係になりたくなかった。ただ焼きそば君との話の種に彼女達を呼んだと考えてもらってほしい。
少しして彼女達は来た。僕は正直に言うと面食らった。彼女達は3人、焼きそば君の同級生ブスさん(仮名)、の友達ライトブス(別名イマイチ)さん、そしてイチジクさん。僕がなにに面食らったかといえば何もブスさんとライトブスさんがブサイクだったからじゃない。イチジクさんが車椅子だったからだ。僕らがいた店は狭かったのでファミレスに移動することになった。イチジクさんの車椅子を押すライトブスさんに僕は最初の違和感を覚えていた。
僕は客が多いファミレスが嫌いなので焼きそば君に耳打ちし、地元の焼きそば君も初めてはいる人気のないファミレスに移動したあと、一応の自己紹介タイム。僕は初めて会う、そして、もう二度と会わないだろうなぁ、という女の人と会った時、無茶をする傾向が強い。酒を飲んでいたら尚更のことで、この日もライトブスさんにいきなりアイアンクローをやった。一応空気は読める方なので、それなりに盛り上がったりした。「なにこいつ」とか「馬鹿じゃないの」とか。こう書くと罵声以外のなにものでもないが、イチジクさんと焼きそば君以外みんな酔っていたので笑いもあったのだ。こうなると互いに変に意識することもなくなり、気軽なもので、僕は「ブサイク」を連呼したりして焼きそば君と笑った。もちろん彼女達も僕らを笑った。
三人と二人でわいわいやっていると、トイレに行きたくなった僕は席を立った。そしてライトブスさんにサイドのアイアンクローを仕掛けるふりをして、くるりと振り返りイチジクさんに仕掛けた。今考えるとブスさん、ライトブスさんにアイアンクローを仕掛けるということはとてもさむいことに思えるのだけど事実だからしょうがない。僕はオチとしてイチジクさんに仕掛ける機会をうかがっていたのだ。ブスさんライトブスさんにやっておいて一人だけ見逃すのもどうかと思っていた。僕は満足してトイレに行った。席に戻るとブスさんとライトブスさんがツンツン怒っていた。話を聞けばイチジクさんに何をしてんだお前は、ということだった。僕は、僕が思っていたよりイチジクさんの体調が悪いのかな、だから怒っているのかな、と思ったけど、話を聞いているうちにそうじゃないことがわかった。要するに、ブスさんとライトブスさんが言いたいことは、車椅子の人にそんなことするなんて最低、ということだった。また違和感が僕を包んだ。イチジクさんは居場所を無くしたみたいにうつむいたりジュースを飲んだりしていた。
僕は吐き出したくなる(ゲロじゃないよ)感情を抑え、冷静にイチジクさんとブスさん、ライトブスさんの関係を聞いた。思った通り。ブスさんライトブスさんとイチジクさんは決して友達と言える程深い関係ではなくて、今日同窓会の打ち合わせの集まりがあり、そこにはブスさんライトブスさんイチジクさん他がいて、在学中(中学?)から友人だったブスさんとライトブスさんが、在学中はまったく親交がなかったイチジクさんを誘い遊んでいたという。これで納得がいった。友達ならイチジクさんの車椅子を押したりしない。イチジクさんは自分で動ける。そして友達なら車椅子の人なのにということでは怒らない。イチジクさんになんてことすんの、ならわかるが。
「差別って何かね?」
そういって僕はイチジクさんの頭を叩いた。もちろん加減はしている。でも結構強く叩いた。結局ブスさんとライトブスさんは車椅子を世話したいからイチジクさんを誘ったのだろう。世話をして自分達がいい人にでもなりたかったのだろう。イチジクさんの頭を叩く僕にブスさんライトブスさんは狂乱したように怒り出し、僕も差別について自分の知っていること思っていることを吐き出した。僕に聞く耳はあったのだが当然のごとくヒステリックにわめくブスさんライトブスさんにはない。その間に焼きそば君が代金を支払ってくれ、店員に追い出される前に僕らは店をでた。ブスさんとライトブスさんは捨て台詞を吐いて帰っていった。それから僕ら三人は焼きそば君に金を払い解散した。と見せかけて地元の焼きそば君を家に帰した僕とイチジクさんは少し公園に寄った。
僕がイチジクさんに謝ると、気にしてないとイチジクさんは笑って言った。初めて書くがイチジクさんはかなりかわいい。僕は必死になってイチジクさんを笑わせようとしたけど空回りで、でもイチジクさんは僕の空回りっぷりを笑ってくれた。まだ終電には時間があったけど、僕は帰ることにした。互いのメルアドを交換して。
僕とイチジクさんはそれから密にメールを交わし、電話もした。そして会う約束をした。場所はイチジクさんの家。
イチジクさんの家に着くとイチジクさんのお母さんが僕を出迎えてくれた。イチジクさんのお母さんを僕は見覚えがあった。あの日あのファミレスにいた。確かにいた。トイレに行く途中の席にいた。お母さんはイチジクさんについていっていたのだ。もちろん僕がイチジクさんを叩きまくったことも見ているし、僕が空回りしていたところも見ていた。イチジクさんはそれを知っていた。というよりも外に出るときは大体一緒で、あの日は久しぶりに会う同級生に見栄を張って一人で来たということにしていたらしい。その後は書いた通り。どうやら、誘いを断ると変だと思われる、とイチジクさんは思っていたらしい。
三人でご飯を食べた。お父さんは今日帰ってこないらしい。少し、いや大分ホッとする。ご飯を食べたあとイチジクさんと二人で散歩に行くことにした。
出会ってまだ数日。僕は交際を申し込んだ。
彼女は頷いた。
きっとイチジクさんは、断ると変だと思われる、と思っているに違いない。