モヤモヤシリーズ。体験記風? | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

モヤモヤシリーズ。体験記風?

私は椎間板ヘルニアをやりました。もう何年前のことでしょうか。なにか腰が痛いなと思いながらも病院に行くことなく日常生活を営んでいたところ、ある夜、くしゃみをした拍子に動けなくなりました。動けなくなる、というよりも動き方を忘れたと言ったほうがよいでしょう。私はその場に寝転がるのが精一杯でした。運悪く、とでも申しましょうか、私の寝転がった場所は冷蔵庫の前、時間は夕食の後片付けも終わりテレビでも観ながらデザートでも食べるか、という頃です。冷蔵庫の前で冷や汗をかきながらパニックになって言葉を失った私に、「邪魔」と言った姉の顔が忘れられません。姉は私を蹴りながらも冷蔵庫の中からプリンを取り出しました。そして食べながら時折私を奇異の目で見ました。子供を授かる前の姉などこんなものではないでしょうか。今思い返せばとても可笑しいです。そう、とても可笑しいです。30分程寝転がっていたでしょうか。時間が経つにつれ私は冷静になり、また、痛みも和らぎ、体を動かせるようになりました。痛くない体勢さえとっていれば元気なのです。私はその日は眠りにつき、次の日病院に行くことにしました。病院選びにちょっと
した出来事があり結局5駅離れた医院に行くことになりました。私は自転車をこぎました。あの頃私は電車が苦手で乗りたくなかったのです。それに私は自転車をとても頼もしい乗り物だと思っていますから、この選択はしょうがありませんでした。幸い体も自転車をこぐ分には問題ありません。川を超え目的地付近に着きました。通っていた学校の近くなので私には土地勘がありました。すぐに医院を見つけることができました。医院の扉を開け、受付を済まし、ソファーに座りました。様々なマンガが本棚にありましたが、私の目をひいたのは受付の端にある某有名野球選手のサインでした。現役です。たいして大きくないビルのワンフロアにそれは輝いていました。私はそれを見て頼もしさを感じました。ただのサインなのでこの小さな医院でその選手が治療を受けたかどうかは甚だ疑問ではありましたが、私は頼もしく思ったのです。どうでしょう、皆さまもそこいらのファミレスにデヴィ夫人のサインがあったらと思い浮かべていただけたら幸いです。頼もしさを感じませんか。私はミーハーな心を恥じながら名前を呼ばれるのを待ちました。名前が呼ばれ、患者衣に着替えて診察
を受けます。先生はコロポックルのような初老の人でした。ほんとうにそっくりです。結果私は軽い椎間板ヘルニアということでした。私のヘルニアした部位は左足の親指を麻痺させるとのことで、なるほど先生が私の足の親指を押さえつけても私の親指は私の意志に反し抵抗することができません。そしてさらにおもしろいことを聞きました。私が研究したのだが、と言っていたので正しいかどうかはわかりませんが、かといって先生はコロポックルに似ていることを除けばまともな人で決して謎の万能な菌を発見するような人ではありません、私のヘルニアの麻痺する場所というのは“帯”になっていてある場所から左足に巻きつくように螺旋の形になっているそうです。確かにキリのような鋭い金属でその螺旋状になっている帯を刺されても、刺されたことさえわかりません。そのあと、その螺旋状になっている帯の上の方、腰か尻かと問われれば間違いなく尻だと答える部分の先ほど例のキリで探り当てたポイントに注射を打ちました。私も例にもれず注射が苦手なのですが己の鼓動と呼吸が聞こえる程緊張して注射針が刺さるのを待っていると、終わったよ、と、先生が言いました
。私は注射針が尻に刺さったのに、あまつさえ尻に液体が注入されているのに一切気がつかなかったのです。痛みもクソもありません。感覚がなかったのです。後日また同じ場所に注射を打ったのですが、その時ははっきり注射針の痛みを感じました。その痛みはヘルニアの治療がうまくいっていることを私に伝えてくれました。私はこの日の治療で人体の不思議を目の当たりにして大変な衝撃を受けるとともに、あることを思いつきました。そう、北斗神拳です。私はそれまで“ツボ押し”と言われるものを限りなく疑似科学に近いと思っていましたが、一連の経験を経て神経が体に与える影響などを知ると“ツボ”はあるのかもしれないと思えるようになったのです。私は北斗神拳原理主義者になり、必死になって指突を鍛えました。おかげで缶ジュースを開ける時に爪を傷つけることがなくなりました。私の指は凶器になりました。大きな力を持つと人は使いたくなります。人の道理です。果たして人間の体内に指紋というものは残るものなのでしょうか。私は夜、道を歩くのでしょうか。