外は小雨が降っていた。

僕は二十二時発の飛行機に乗らなければならない。

結局、地元に帰ることにした。

暫く帰っていなかったし、実家のことも気になっていた。

 

帰る前に『やらなきゃいけないリスト』を昨日のうちに作っておいた。

出発前にそれらを実行していく。

まずは洗濯。

その後、簡単に夕飯をとる。

納豆サラダに豆腐、鯖の缶詰。

僕は基本的に夜は軽めだ。

その後リュックに荷物をつめて、ゴムの木に最後に水をやる。

新しい家に引っ越した時に近くの花屋で買った。

ゴムの木は比較的初心者でも育てやすい木らしい。

水を少々与えなくてもへたらないらしいが、暫く家を空けるから念のため水をやった。

ゴムの木の根元に置かれているガネーシャの置き人形は冷ややかな目で僕を見ている。

やらなきゃいけないリストの項目は一通り終了した。

 

本来ならば十九時に自宅を出発する予定だった。

しかし、実際に自宅を出発したのは十九時半を回っていた。

十九時ぴったりに全てを終えていたのに出発まで三十分以上かかってしまった。

僕は極度の心配性で、ちょっと病気に近いかもしれない。

強迫性障害に一歩足を踏み入れていると思う。

僕はどんな時でも自宅を出る時には確認事項を呪文のように唱える。

ちょっとしたお出かけくらいではさほど支障はないが、長期自宅を空けるとなるとその症状はひどくなる。

何度も何度も確認をし家を出たはずだが、駅までの道のりの間に玄関の電気を消したかどうかが気になり始めた。

気になり始めたら最後、その不安は止まらない。

僕は自宅へ引き返した。

雨は激しくなってきていた。

頼まれたお土産やらなんやで荷物が多くても、結局帰った。

自分でも玄関の明かりがついていなかったことは分かっていたが、帰らないわけにはいかないのだ。

そしてドアを開ける。

しっかりと明かりは消されていた。

開けたら最後、また最初からやり直しだ。

僕は全てをやり直して再び玄関に鍵を閉めた。

時計の針は十九時半になっていた。

そして溜息をつく。

時間は刻々と過ぎていく。

彼女はよく言っていた。

「私とあなたを足して二で割ったらいいのにね」と。

彼女は割りとその辺が適当だった。

ある意味、防犯意識がとても低かった。

僕のアパートでも僕が留守のときに窓を全開にして出かけたことがあった。

玄関の鍵は閉めていたが窓は全開。

僕のアパートは一階なので玄関だけ閉めても意味がない。

特に盗まれるような大事なものはないのだけれど。

僕は戸締りをしなかった彼女を責めた。

彼女は少し悲しい顔をしていた。

 

それでも余裕をもって空港に到着し予定通り飛行機は離陸した。

約一時間半の空の旅だ。

僕の隣の席は空席だった。

窓から眺める夜景。

都会とは暫くおさらばだ。

読書灯をつけ本の続きを読む。

彼女も子どもも…もう夢の中だろう。