その日の夜に同僚から食事に誘われた。
迷った末に行くことにした。
休みの日まで職場の人間に本当は会いたくないのだが、今の僕は誰でもいいから時間を共有することが必要だった。
僕らは近場の焼肉に行くことになった。
赤提灯系の焼肉屋だった。
安い割には美味かった。
焼肉のあとに僕たちは焼肉臭のする服のまま、ファミレスに寄って深夜近くまで話しをした。
僕らは仕事の愚痴や大して中身のない話を終始していた。
以前彼女から「あなたは静か動かと言われたら、どちらかというと静の方だと思う」と言われたことがある。
彼女と出会うまではそんなことを考えたことはなかったけれど、改めて考えると確かに僕は静の方だと思う。
わいわい騒ぐのはあまり好きではない。
騒いでいてもいいけれど、僕は無関係に端っこの方で静かにしていたい。
一応周りとの空気を読んで会話はする。
本当は静かにしていたいのに仮面をかぶった僕がいて、そのもう一人の僕が現れて勝手にしゃべっている。
でも僕は彼らと何を話したのか全く覚えていない。
大抵その後はとても疲れている。
自己嫌悪に陥る。
何年もそれを繰り返している。
今回もそうだ。
疲れ果てた帰り道、夜空を見上げた。
公園の滑り台の頂上でぬいぐるみを抱えて泣き叫ぶ彼女の子どもの姿が何故かふと目に浮かぶ。
母親に結わいてもらった三つ編みヘア。
二本の小さな足で滑り台の頂上に立ち、しっかりぬいぐるみを抱いている。
ぬいぐるみと一緒に滑りたかったのだろう。
滑りたい気持ちと恐怖とが子ども心を占領していて、混乱し泣き叫んでいた。
彼女は頂上まで上って子どもをあやしていた。
僕は滑り台の下でじっとそれを見守るだけだった。
何もしてあげることができなかった自分を情けなく思う。
その日は秋の曇り空だった。
後悔。