『これでいいのだ 赤塚不二夫自叙伝』赤塚不二夫(文春文庫)
漫画家赤塚不二夫の自叙伝。
満州に生まれ育ち、戦後は母の故郷である奈良県大和郡山に引揚げてきた。
数年後シベリアに抑留されていた父が生還し、父の故郷新潟に移る。
中学を卒業後は新潟で看板屋に就職、その後19歳で上京する。
幼いころから絵が好きで、はやい段階から明確に漫画家を志していた。
上京後まもなくして、見切り発車的に漫画家として独立する…。
私がもっとも興味を持って読んだのは、満州での生活、敗戦、引揚に関する思い出である。
また奈良の田舎町で、「引揚者」がどのように見られていたのかという話も、分量としてはごくわずかだが、私には貴重な証言だった。
奈良の子ども時代の遊び、いたずらの話は、もちろん赤塚の個人的な体験談だが、その時代の様子が伝わってきて、これもおもしろかった。
本の内容とは関係ないが、この本を赤塚不二夫自身が書いたのか、それともゴーストライターが介在しているのか、私は気になった。
もし赤塚自身が書いたのだとすれば、あのハチャメチャなギャグ漫画の天才は、実は文章も非常に巧みであったということになる。