早朝、父親の死を知らせる電話が

病院に付き添い入院していた

母からかかってきて


同居していた祖母が1番に

その知らせを聞きました。


祖母は父の産みの親です。




自分が腹を痛めて産んだ子が・・


結婚しても同居を望んで

一生親の面倒を見ると

誓ってくれた我が息子が・・


自分よりも先に亡くなるだなんて・・・


祖母はどんなに悲しかったことでしょう




その時私は16歳。

そこまで考えられませんでしたが


私も一丁前に人の親となった今、

自分の子供に先立たれる事など

想像もできないし


考えたくもありません。



気が狂うかもしれません。






父が亡くなった当日、

病院から父が二週間ぶりに

無言の帰宅をしました。


父は仏間に「北枕」で寝かされました。


私は小さな頃から祖母や父から


「そっち向いて寝たらダメだよ、

そっち(北枕)は死んだ人だからね。

枕はこっち(南側)にしないと

いけないんだよ」


そう言われて育ってきました。


なので、“頭を北側に向けて寝かせる”

と言う事に

とても違和感を感じました。



あれ?

こっち向きに寝たら

ダメなんじゃないの?


あ、でもいいのか?


死んだ人だから・・・



そのうち、仏壇に

箸🥢の立ったご飯🍚

がお供えされました。


父が使っていたお茶碗に

ご飯がこんもりと盛られ、

そこには

箸が真っ直ぐ

ぶっ刺さっていました。



小さい頃遊び半分で

ご飯にお箸を刺した時、


祖母や父から

「こら!ご飯に箸を刺したらダメだぞ!

それはな、死んだ人のご飯🍚だから

そう言う事はやったらダメだ!

行儀が悪い」

と育てられてきたので、


やったらダメなこと


と言う認識でしたので

それを見た瞬間、

とても違和感を感じてしまいました。



あれ?

箸ってご飯に立てちゃ

ダメなんじゃないの?


あ、いいのか?


死んだ人だから・・・


ここでもまた、

普段やったら怒られる事

現実に目の前で行われている

違和感を感じました。



私は人生で

死んだ人を見るのは

初めてでしたので


顔を直視はできず、

怖くてあまり近くへは行きませんでした。



しかし、父の遺体を目の前にしても

不思議と涙も出ないし

ただそこに寝ているだけ

と言う感覚でした。



我が家でお通夜と葬式をあげることに

なったので、

仏間や居間にあった邪魔な家具類は

私の部屋へ運びこまれました。



数日前まで、初彼氏のツヨシを招いて

浮かれていた私の部屋は

突然、物置き部屋へと変わりました。



母はあちこち電話したり、

葬儀屋と打ち合わせをしたりで

バタバタと忙しくして

悲しんでいる間もない様子で


私たち子供は放置されました。



その日の夕方、電話が鳴りました。


私が学校を休んだので

(ツヨシが心配して電話をかけてきて

くれたのかな?)

そう思って出てみると、


「あ、もしもし〜?オレ!」


私の父親が亡くなった事など

全く知らずにたまたまかけてきた


中学生の頃のバスケ部🏀の

可愛がっていた後輩の男子

「カズヤ」でした。





バスケ部だった私が中2の頃、

部活終わりに

“水をカブ飲みするカズヤ”に

声をかけたのが始まりでした。




細身でまだ背もちいさくて

かわいかった1年生の後輩のカズヤに


「あんまりお水飲み過ぎたら

お腹痛くなるからダメだよっウインク!」


と、声をかけました。



女子の先輩から声を掛けられた

カズヤにはそれがとても

嬉しかったらしく、


その後私の下駄箱にカズヤから


【こはる先輩、この前

声をかけてくれた時は

すごく嬉しかったです。

いつも隣のコートから先輩のこと

「頑張れ」って応援しています!


これからもバスケ、

頑張って下さい カズヤ】


と手紙が入っていました。



それから部活の時、男子と女子で

隣のコートで練習する時も

ニコっと目で合図したり


教室移動の時にすれ違う時は

手紙✉️を渡したりして、


私にとってカズヤは恋愛対象ではなく

「カワイイ後輩」と言う

存在でした。




私は高校へ入学し、

学校では顔を合わさなくなった

カズヤが久しぶりに

私としゃべりたくて

たまたま電話をかけてきた日が

【父が死んだ日】でした。



私は、父が死んだ現実を

受け入れていなかったので

全然元気だったし、


普通に

「あらカズヤ!元気だった?

実はね、今日私のお父さん死んだの。

何か虫の知らせでもあったの?

ドンピシャで電話してくるって

逆にあなたスゴイわねびっくり」と


明るく

おしゃべりできる気がしました。



でも、それはかえってカズヤに

気を使わせるだろうと思い、


「今日はゴメンね、

ちょっと気分じゃないんだ・・・」


と、あえて暗いテンションで言いました。


カズヤも何かを察したのか、


「わかった、ゴメン。またかけるね」


「うん、ゴメン。また・・・」


そう言って電話を切りました。


切ったあと、

(もう!お父さんが死にさえしなければ

楽しくカズヤとおしゃべりできたのにムカムカ)

そんな風にも思ってしまいました。



肝心の彼氏のツヨシからは

電話もありませんでした。



私の父が手術して入院していた事を

知っていただけに、

私の父の死を学校で噂を聞き、

何とも言えない気分になったんだろうと

察しました。



私もツヨシには、何と言っていいのか?

どんな顔で会えはいいのかも

わからなかったので


逆にこのまましばらく

連絡が無いほうがいいなと

思っていました。







続きます〜