『朝の爽やかで暖かな光が窓か差し込んで、自分の寝ているベッドまで差し込んでくる。
今日もまた君のことで思い悩む一日が始まるのかと思えば、それだけで憂鬱になってくる。
眠りについている時間だけが、苦痛から自分を解放してくれるのだが。
このまま無意識のまま寝させてほしいのに。
今、彼女はアイツといるのかと思うと、気が狂いそうになる。
頼むから、もっと寝させてくれ。
何も考えなくていい時間を与えてくれ。
そう思いながら、布団にうずくまっていた失恋の翌朝。
全ての時間が止まったようで、
もうこの苦しみから抜け出すことができないのではないかと思っていた。』
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君のアパートから戻ってきた次の日、僕はこんなことを思っていたんだ。
人間の頭はうまくできてるものです。
忘れることも、自分の都合のいいように記憶を塗り替えることもできる。
今、考えると君との出会いはなかったことにもできるんじゃないか。
それはまるで、純粋な水滴として空から降ってきたにもかかわらず、
地上の泥と混じりあい、地表を流れ、どす黒い水となって川に流れ込む雨粒のように、
もはや自分が何者かすらわからなくなってくる。
そうだね、あの日からいろいろなことがあったよ。
そのお陰で、長い間君の記憶は心の奥底に沈めることができていた。
僕はもう変わってしまった?
君のことなんてもう思い出さない?
もし、汚れた日々にまみれてそのまま消えてしまっていたら、
本当にそうなっていたかもしれない。
でも、それもいいかもしれないが...。
地中に染み込んだ泥水は、幾重にも重なった地層を経て
余計なものが取り除かれ、再び純水に戻っていくと
あとの残るのは、本来の自分でしかない。
今の自分はそんな気分でいる。
君はあれから、何を見てきたんだろう。
僕の名前は、君の記憶のどこかに転がっているのだろうか。
君にとっては、ほんの一瞬、ほんのひと欠片の出会いでしかなかったはずだから。
もし君が、地層を経て今を実感するならば、最初に僕が取り除かれるんだろうな。
もう、二度と思い出さない。
何はともあれ、これでいいのだけどね。
