文科省は、次のようなまとめを9月18日に発表しました。一昨年12月以降、15回にわたる会議を踏まえて取りまとめられた論点整理です。今後、学習指導要領の改訂をはじめとする教育課程の改善の検討の基礎的な資料として活用されます。これからの教育の方向性の基になる検討会なので、現場の先生方、そして教育研究校は、よく知っておく必要があります。
「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会 論点整理」 令和6年9月18日
― 目次 ―
はじめに
1.これからの社会像とこれまでの学習指導要領の趣旨の実現状況
(1)これからの社会像
(2)現行学習指導要領の目指したものとその趣旨の実現状況
(3)現行学習指導要領の実施上の課題
2.これからの社会像や現状の課題を踏まえた資質・能力
(1)学習指導要領における資質・能力の枠組み
(2)学習の基盤となる資質・能力
(3)学校におけるデジタル学習基盤の整備を踏まえた学びの在り方
3.各教科等の目標・内容、方法、評価
(1)資質・能力の育成に向けた効果的な目標・内容の構成方法
(2)学習評価の現状と育成すべき資質・能力を踏まえた今後の対応
4.多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程
(1)現行の「個に応じた指導」の記述と充実の在り方
(2)教育課程の柔軟性の在り方
(3)学校段階間の連携・接続の在り方
5.学習指導要領の趣旨の着実な実現を担保する方策や条件整備
(1)教育課程を実施する上での学校現場の過度な負担を防ぐための在り方
(2)教科書・教材の在り方
(3)カリキュラム・マネジメントの実態と今後の推進の在り方
(4)教育課程の円滑な実施に向けた学校への支援と環境整備
6.学習指導要領の趣旨の実現に向けた政策形成・展開
(1)学習指導要領・解説等の形態
(2)学習指導要領の改訂プロセス、学校や教育委員会との共有・浸透の在り方
(3)社会的ニーズとの整合性
以上、目次だけですが、発表された文章の題名が分かっていると、すぐに、アクセスできます。特に、最初の「これからの社会像」の部分の気になった所を書き出しておくことにします。
1.これからの社会像とこれまでの学習指導要領の趣旨の実現状況
(1)これからの社会像 (気になる項目の抜粋)
◯人口減少・少子高齢化や地球環境の有限性を踏まえた持続可能な社会づくり
・一人一人が可能性を開花させなければ国が立ち行かない状況
・資源や環境の有限性を踏まえつつ、環境・福祉と経済を両立していく必要性
・コミュニティ存続が現実問題となる中、地域におけるヒト・モノ・カネの循環や幸福・福祉(well-being)の向上も喫緊の課題であり、当事者意識を持った社会の創り手を育てる必要性
◯生成 AI の加速度的発展など変化の加速化・非連続化
・生涯に亘って学び続ける資質・能力がこれまで以上に重要に
・テクノロジーと持続可能な社会の実現が重なる部分で価値を生み出せる社会へ
・既存の情報を整理・分析するだけなら AI の方が有能。AI やデータを十全に使いこなすことは前提としつつ、豊かな人間性を育むこと、個々の情報の意味を理解し問題の本質を問うこと、課題を発見したり設定したりすることの重要性が高まる
・そうした中で得られる質の高い知識が社会をよりよい方向に革新していく重要な基礎や基盤となる。
◯前回改訂時に2030年頃の未来として描いた社会像が想像以上の速さで現実化。これを危機と捉える議論に正対しつつ、むしろ未来を切り拓く絶好のチャンスと考える必要。その際、非連続的な変化が予想される未来に向き合って教育の在り方を考えることと、学校の現在の課題に向き合って連続的な今を生きる子供たちのよりよい学びや幸福を確かなものにしていくこと、よりよい教育を通じてよりよい社会の創り手を育てるという発想のいずれも大事にしながら今後の教育課程の在り方を検討する必要。
今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会
検討経過
第1回(令和4年 12 月 22 日)
・新しい学習指導要領の下での学校における教育課程、学習指導の実施状況等について
(現行学習指導要領について事務局より説明、意見交換)
第2回(令和5年2月2日)
・これからの社会像について
(広井良典氏(京都大学人と社会の未来研究員教授)より発表、意見交換)
第3回(令和5年3月24日)
・これからの社会像について
(安宅和人氏(慶応義塾大学環境情報学部教授)より発表、意見交換)
第4回(令和5年4月27日)
・今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方について
(各委員より本検討会で議論を要すると考える点について発表、意見交換)
第5回(令和5年5月29日)
・これからの学校像について
(天笠座長、荒瀬委員より発表、意見交換)
第6回(令和5年7月 12 日)
・今後の教育課程の在り方について
(秋田座長代理、石井委員より発表、意見交換)
第7回(令和5年9月1日)
・学習指導要領の実現をめぐる諸課題について
(市川委員、戸ヶ﨑委員、貞広委員より発表、意見交換)
第8回(令和5年10月20日)
・諸外国の動向等について
(国立教育政策研究所教育課程研究センター、下村智子氏(三重大学准教授)、福本みちよ氏(東京学芸大学教授)OECD 教育スキル局、東京学芸大学(日本OECD 共同研究事務局)より発表、意見交換)
第9回(令和6年1月31日)
・研究開発学校へのヒアリング
(目黒区教育委員会、春日井市教育委員会、愛媛大学附属高等学校よりヒアリング、意見交換)
第 10 回(令和6年3月25日)
・言語能力、情報活用能力等の学習の基盤となる資質・能力について
(今井むつみ氏(慶應義塾大学環境情報学部教授)、藤森裕治氏(文教大学教育
学部発達教育課程教授)、高橋委員より発表、意見交換)
第 11 回(令和6年4月26日)
・学習評価の在り方について
(西岡加名恵氏(京都大学大学院教育学研究科教授)より発表、意見交換)
第 12 回(令和6年6月10日)
・各教科の目標・内容の示し方について
(奈須座長代理、石井委員より発表、意見交換)
・教科書・教材の在り方について
(天笠座長より発表、意見交換)
第 13 回(令和6年7月10日)
・学習指導要領の目標に照らした達成状況とカリキュラム・マネジメントの実態に
ついて
(国立教育政策研究所教育課程研究センター、冨士原委員より発表、意見交換)
・ 「今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者検討会」に
係る検討状況について
(秋田座長代理から発表、意見交換)
第 14 回(令和6年8月19日)
・論点整理骨子案について
第 15 回(令和6年9月17日)
・論点整理案について
♫ 霞草 ♫