「月の探査車開発に日本の技術力」を読みました。(読売1月22日)
「縦横各2メートルの無人走行車が、砂の上を毎秒1センチでゆっくりと前進していく。タイヤの部分は特殊な走行用ベルトになっており、キリキリという金属音が響いた。昨年12月下旬、東京都調布市の宇宙航空研究開発機構( JAXAジャクサ )の一室。月面を模した室内砂場で、月面探査車(ローバー)の走行試験が行われていた。ローバーはロケット開発で知られる三菱重工業(東京)が開発したものだ。JAXAやインド宇宙研究機関などが2024年度末頃に予定する月極域探査計画「 LUPEXルペックス 」で使われる。同計画は、月の南極の地下から水を探すのが目的。ローバーは太陽光パネルで電力を供給しながら、数か月かけて月面を10㎞以上、遠隔操作で移動する。月面の砂「レゴリス」は直径0・07ミリ程度と通常の砂に比べ粒がはるかに小さいため、タイヤが空回りしやすい。同社のローバーは、勾配25度の坂も上ることができるという。
JAXAやトヨタ自動車などは、実際に人が乗る月面探査車を研究開発している。マイクロバス2台分の大きさで、2人乗りを想定。1回の探査で約1000㎞を走行する。車内は空気で満たされ、人が居住する4畳半ほどのスペースを設ける。有人月探査「アルテミス計画」の一環として29年の打ち上げを目指しており、金井宣茂宇宙飛行士(46)らも開発に携わっている。日本の月面探査車には米航空宇宙局(NASA)も強い期待を寄せる。JAXAとNASAは昨年10月、米アリゾナ州の砂漠にある実験場で月面探査車試作機の運用実験を実施し、金井飛行士と星出彰彦飛行士(54)も参加した。試作機はNASAが06年に開発。前後左右に走行できる計12個の車輪や簡易ベッド、トイレも備える。金井飛行士らは岩場だらけの実験場を運転したり、夜間は車内で過ごしたりして、操作性や居住性を検証した。トヨタの月面探査車のエネルギー源は、水素と酸素を反応させる燃料電池。JAXAは、月の地下から得た水を水素と酸素に分解する燃料工場の構想を温める。いわば、月の「燃料スタンド」だ。月面での活動は水が命綱となる。各国による「水争い」は今後、激しさを増しそうだ。」