本を読みました。沖縄の夜間中学で化学を教えることになった盛口さんの、授業記録の本です。生徒の多くは、戦争で学校へ行けなかった、60、70代のおばあたちを中心に、外国から来ている人も数人混じっています。化学式や計算ではなく、料理や面白い実験から化学変化とは何かを学ぶ学習でした。肉じゃがで化学変化、ろうそく作り、ろうそくから三態変化の学習、ホットケーキを化学する、たたくと延びる金属、コーラや食塩水など電気を通す実験からイオンの学習、塩と砂糖の違いから熔けると燃えるの実験、ドングリやイモやこんにゃくからデンプンの話、小麦粉からガムを作るタンパク質の話、牛乳からチーズを作りコロイドの学習、油の仲間調べ、石けん作りなど、身近な生活の中の素材を取り上げ、その変化から化学へとつないだ楽しい学習を紹介していました。盛口さんは、本当にすごい先生だなと思いました。素材を提供すると、おばあたちの雑談が始まり、戦争中から戦後の生活の大変だった時代を生き抜いた生活の知恵がたくさん提供されます。盛口さんが予想もしていない生活の中での工夫が次々と飛び出してきて、教えている盛口さん自身が、おばあたちに多くを教えられたと書いていました。私のような、理科教育を中心に小学校の教師をしてきて、取り敢えず中高の理科の教員免許も持っている者が読むと、とてもいい本だなと思いました。取り組んでいた実験もあり、また、初めて知る実験もあってとても面白かったです。何よりも、厳しい生活の中での生き抜いてきた工夫が、化学変化として裏付けられていく楽しさを、おばあたちが生き生きと学んでいる姿に感動しました。