LIFE SHIFT (ライフシフト)100年時代の人生戦略 | 旅と仕事するkogeのブログ

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2019年の夏の「老後2,000万円問題」。そこから3年が経とうとしているが、この金額の妥当性はともかく、一般に平均寿命は10年ごとに2−3年延びているといわれ、こと先進国においては1950年には平均寿命が75歳であったのが、2000年には80歳、そして、現在は85歳に到達しようとしている。世界一の長寿国、日本における男性の平均寿命は81.41歳、女性は 87.45歳(2021年)といわれており、一般的な会社員ならリタリアする年齢60−65歳から更に20年間は、健康的であれそうでなくても、自死を選ばないかぎり、生きていくためにはお金が必要になる。著者によれば、控えめに言っても引退前の最終年間所得の50%の収入を毎年確保しないと、引退後はとても苦しい生活になるという。

 

この本の初版は2016年。1945生まれのジャック、1971年生まれのジミー、1998年生まれのジェーンの3人をモデルに、70歳で寿命を迎えたジャックの人生と比較しながら、残り2人のそれぞれの平均寿命に向けての人生シナリオをいくつかのパターンに分けて紹介し、人生100年時代の人生戦略を論じているのだが、100年に一度のパンデミックを経験している私達にとって多くの気づきを与えてくれる内容だ。

 

 

私の父は、一般的な会社員より早く引退を迎えた。
工作機械のエンジニアで70歳を過ぎても自宅でCADを使いながら、数社と契約をし、仕事を請け負っていた。残念ながら73歳で病に倒れこの世を去ったが、あのまま健康であれば、おそらく80歳を過ぎても普通に働いていたに違いない。
父は1942年生まれであったので、1945年生まれのジャックに近い年代だ。この世代の人生は、「教育・仕事・引退」の3つからなるステージが普通で、引退後に父のように働き続けるか否かは、それまでの貯蓄額に左右されると思われるが、年金を受給し、退職金も得て、寿命を迎えるまでの引退生活を送る人のほうが多いのではないかと思う。父は当たり前のように引退後も働くという選択肢を選んだが、それは、生きている間にまだまだやりたいことがたくさんあったからだと思う。

 

現在40代(後半)の私は、これまで引退したら何をしよう?とそれほど頻繁に考えたことはなかった。あったとしても年に一度あるかどうかで、何かといえば一年の三分の一は海外でのんびり暮らすのもいいなあ…とか 笑ってしまうほどの途方もない夢物語だ。
 
ただ、少なくとも73歳で生涯を終えた父の年齢ぐらいまでは何らかのかたちで働くことになるだろう、と漠然としたイメージは抱いている。それは夢物語を叶えるため、というより恐らくそうでもしないと仮に85歳まで生きることになったら生活していけないと思うからだ。

 

企業における再雇用制度などを利用しても現在はせいぜい65歳ぐらいまでしか働けない。現在私が勤める会社もそうだ。それ以後は企業は面倒は見てくれない。平均寿命が延びる、ということは引退後の時間が当然長くなるのだが、著者によれば人生100年時代には70−80歳まで健康的に老いていき働くことが当たり前になるという。

 

引退してから寿命を迎えるまでの間に必要とされる「十分な老後の資金」は、従来の3ステージでは引退するまでに貯めなければならない、とされていた。ところが、寿命が延びても、引退する年齢が60歳や65歳のままなら、それ以上に貯蓄が必要になるので、よほど現役時代に十分な貯蓄をしてこなければ、この問題を解決するには勤務する期間を長くするしか方法が無いということになる。そのため、父が選んだように引退後も細々と稼いでいける仕事を見つけるか、そもそも引退が必要とされない仕事に今から就くかなどしてお金が入る仕組みを作っておく必要がある。手段としては、働かずに資産運用などでお金を増やしていく方法などもあるかもしれない。

 

お金のことばかりについ意識が向いてしまうが、この本では、お金のような有形の資産と同じくらい無形の資産が100年時代には大切で、有形資産と相互に投資することを意識せよと言っている。この無形の資産は大きくは3つに分類される。

 

  1. 「生産性資産」所得を増やすための要素のこと(スキルや知識)
  2. 「活力資産」肉体的・精神的に健康であることと、幸福であること。これらが潤沢である状態
  3. 「変身資産」(人生における様々な変化に必要とされる。多様性に富む人的ネットワーク、新しい経験への開かれた姿勢など)

 

ジャックの世代の3ステージはもはや旧来の終焉を迎えつつあり、ジミーやジェーンの世代は、3つ以上のマルチステージが当たり前になる。(本では、ジミーは40代になるまでジャックの世代に近い考えを持っていたが、途中で気づいてマルチステージを模索し始めた。ジェーンは教育が終わる10代後半ですでにマルチステージを意識した人生を考え始めている)
 
マルチステージの各ステージにおいて、これらの3つの無形資産は増減するが、必ずしも有形資産と同じ動きをするとは限らない。例えば、私も転職を経験した直後は組織において自分のポジションを一刻も確立させるために生産性資産を増やすことに主眼を置いてきた。その一方で仕事中心の生活になるため労働時間は増え続け常に疲れを感じていたし、組織内での面倒な人間関係にも無理やり合わせようと精神的負担を抱えていたりと活力資産が底をつきそうになったこともあった。
このように、特に「活力資産」は自分の努力だけではコントロールが難しい性質(結婚、離婚、病気や入院)でもあるといえる。大切なのは各ステージにおいて、3つの無形資産のうち少なくとも1つ以上は投資している、という実感を覚えながら生きていくことなのではないかと私は思う。
 
また、この3つめの「変身資産」は今後さらに重要な資産になってくると著者はいう。
マルチステージにおいては幅広い世代間の交流や新しい経験に自ら挑戦する姿勢が不可欠で、例えば教育であれば、義務教育から専門学校、大学進学で終わるのではなく、社会人になったあとも講座やカルチャーセンター、留学などを経験する。仕事も複数回にわたる会社勤め、起業、副業、複業が当たり前になる。人によっては10ステージに及ぶ可能性もあるかもしれない。リカレント教育などもこうしたステージを支える教育として今後ますます需要が高まるに違いないだろうし、週2日は学ぶ時間に充てて、あとの3日間は働く(それも複数の会社でということもありうる)それを、70歳や80歳になっても続けていくことが当たり前の時代が来るかもしれない。

 

私はジミーの世代に該当するのだが、とても彼の気持ちがよく理解できる。3ステージの終焉はなんとなく感覚的に理解していたが、具体的な言語化は出来ていなかった。この本を含むいくつかの本に出逢って言語化ができるようになりつつある。マルチステージをどうデザインしていこうか、と最近頻繁に考えることが増えた。
 
著者は、多くのキャリアや経験の中で、貫く一本の柱(一貫性)が重要だといい、それはすなわち「自分とはどういう人間なのか」「何を大切にするのか」…
教育にせよ、仕事にせよ、多様な選択肢のなかから、小さなプロジェクトを通して実験を何度も繰り返すことを勧めている。
 
確かに年齢を重ねれば重ねるほど、失敗することが怖くなってきているような気もしなくもないが、何度でもやり直しが効くように工夫することはできそうだ。

少なくとも、「教育・仕事・引退」の3ステージの人生は、もう過去のものになってしまっているのだから、有形と無形資産をコツコツ貯めていくプランを考えようと想像するのは案外楽しい。あとは、そういった話題がこれから自然に家族や友人たちとできたら良いなと思っている。