「The 虎牙光揮 Times」Powered by Ameba

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俳優・監督・格闘家、虎牙光揮(Mickey Koga)の公式ブログ。『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』『劇場版 仮面ライダーカブト』、主演作『日めくりの味』など130本以上の映像作品に出演。撮影現場の裏話や、アクション、格闘技、現在の活動を綴ります。

こんにちは。虎牙光揮です。

前回、「次はNIKEのことを書きます」と予告したので、約束どおりその話をします。
 

長くなります。お茶でも用意してから読んでください☕️


「最近、目がいいね」

僕がモデルを始めたきっかけは、友達でした。

その頃、僕はインターナショナルスクールの子たちと仲が良くて。今思えば、あの頃のインターには、めちゃくちゃ有名になった人が多かったんです。

その中の一人が、当時とんでもない売れっ子のモデルでした。ファッション誌を開けば、必ずどこかに彼がいる。そういうレベルの人でした。

ちょうどその頃、僕はキックボクシングのジムに通い始め、ひたすら練習していました。

そんなある日、彼に言われたんです。

「最近、目がいいね」

そして続けて、こう言われました。

「一緒にモデルやらない?」

……正直に言います。

その頃の僕は、めちゃくちゃチャラチャラしていました(笑)

かっこ良さそうじゃん、くらいの気持ちでした。

当時の僕には格闘技があったので、この道で一生やっていくんだろうなと本気で思っていました。だからモデルは、あくまで副業。片手間。

「副業でモデルって、かっこ良さそうじゃん」

そんな感覚だったんです(笑)

本当に、めちゃくちゃ軽く考えていました。

最初のオーディションで、当然のように落ちました

そんなノリのまま、僕は人生で初めてのオーディションに行きました。

面談で、こう言ったのを覚えています。

「どうもー。虎牙って言います。モデルやっちゃってまーす」

……今思い出しても、頭を抱えます。

当たり前ですが、落ちました。この世界は、舐めている人間を一発で見抜きます。当然の結果です。

ただ、落ちた瞬間に思ったんですよ。

これ、格闘技の試合で負けた時と同じ感覚だ、と。

試合に負けたとしても、自分のすべてを出し切って、それでも力が足りなかったのなら、悔しいけれど納得はできる。

でも、今回はそうじゃなかった。

僕が腹を立てたのは、その試合自体を舐めていた自分に対してでした。

こんな気持ちになるんだったら、ちゃんと命をかけなきゃダメだ。試合のつもりで挑まなきゃダメだ。

そう思いました。

そしてその直後、NIKEのオーディションの話が来たんです。

3日間で、5キロ落としました

この頃は、まだ格闘技のジムに通い、練習に明け暮れていた時代です。

NIKEのオーディションの話が来てからは、いつも以上に練習に打ち込みました。

そして、オーディションまでの3日間で5キロ落としました。

減量です。

だって、試合のつもりで受けると決めたので。

当日、オーディション会場に入ると、ネイティブの英語が飛び交い、審査員と思われる方が数人並んでいました。

その中で僕に質問してくれたのが、日系アメリカ人のテッドさんでした。

すごくフランクで、柔らかい雰囲気の方でした。NIKEの現場って、こういう空気なんだなと思いました。

僕は格闘技時代によくアメリカへ行き、向こうで野宿したこともあったくらいなので、その雰囲気がなんだか懐かしくて、すっと打ち解けられました。

最初は、ただ世間話をしていたんです。

ボクシングを始めた頃の話。タイでムエタイを始めた話。アメリカで野宿していた話(笑)

すると、急に言われました。

「じゃあ、ミツの得意分野を見せてよ」

——来た、と思いました。

僕は審査員の皆さんに背を向けて、深く深呼吸しました。

3日間の減量と、格闘技を始めてからずっと積み上げてきたもの。そのすべてを、キックボクシングのシャドーで出しました。

——受かりました。

 

後になって、テッドさんに聞いたことがあります。

「なんで、あのオーディションで俺を選んだの?」

すると、こう言われました。

「世間話をしていた時とは違って、『得意なものを見せて』と言った瞬間、シャドーを始める前に目が変わったんだよ。それで決めた」

振り返れば、モデルを始めるきっかけも「目」。

NIKEに選ばれた理由も、やっぱり「目」でした。

人生をかけたら、結果ってちゃんとついてくるんだな。

あの時、初めてそれを実感しました。

こうして僕の芸能界デビューは、NIKEのモデルとして始まりました。

ロサンゼルスと、ルイス・サンチス

最初の撮影は、ロサンゼルスでした。

「またロサンゼルスか」と思いました(笑)

格闘技時代に何度も訪れた、思い出の場所だったので。

空港から移動する車の中で、思い出の詰まった街並みと青い空を眺めていました。

ロサンゼルスで、NIKEの撮影。

しかも、モデルとして。

なんとも言えない気持ちだったのを覚えています。

カメラマンは、スペイン人のルイス・サンチス(Luis Sanchis)さんという方でした。

僕は野宿していた時代にメキシコの人たちに拾われ、そこから野宿を脱出した経験があります。そういうこともあってか、スパニッシュのノリが本当に大好きなんです。

ルイスもスペイン語を話す人だったので、すぐに打ち解けました。まるで昔からのアミーゴのような感じでした(笑)

ただ、僕はモデルなんて一度もやったことがない。

だから、じっとしていられないんですよ。

ほかの人の撮影中も、手が空くと落ち着かなくて、ルイスの機材を運んだりしていました。

「次、俺は何をやればいい?」

そう聞くと、ルイスに言われました。

「じゃあ、次のモデルさんのケアをしてよ」

それなら任せてくれ、と。僕はもともと世界チャンピオンの付き人をやっていた人間ですから、人のケアだけは自信があります(笑)

そうやってほかのモデルさんたちと話していたんですが、これがまた、みんなすごいんです。

BMXの世界チャンピオン。ビーチバレーのアメリカ代表。

そういう人たちが並んでいました。すげえな、と思って見ていました。

今にして思えば、当たり前なんですよね。NIKEはスポーツメーカーですから。

あの現場に呼ばれていたのは、モデルではなく、競技者でした。

つまり、僕があのオーディションでシャドーを見せて受かったのは、偶然ではなかったんだと思います。

「ルイスは、世界で三本の指に入るカメラマンだよ」

自分の撮影を翌日に控えた日のことです。

一人でいると、キャスティングをしてくれたテッドさんがやって来ました。ちなみにこのテッドさん、プロデューサーさんでした(笑)

そして、こう言われました。

「ミツ、ルイスと仲いいね。ルイスのポートフォリオ、もう見た?」

見ていないと答えると、「じゃあ見る?」と。

「見たい、見たい」と言って、見せてもらいました。

——とんでもないハリウッドスターたちの写真が、ずらっと並んでいました。

僕はぽかんとして、言いました。

「え、ルイスって、陽気なおっちゃんじゃないの?」

そうしたら、こう返されました。

「何言ってんだよ。ルイスは、世界で三本の指に入るカメラマンだよ」

その瞬間、僕は一気にチキンになりました。

そりゃそうです。モデルを一度もやったことのない、ただのど素人が、プロ中のプロの現場に立っている。怖くならないほうがおかしい。

「試合のつもりで来てよ」

撮影前日の夕方。

僕は一人で、夕日を眺めながらぼーっとしていました。

そこへルイスが来たんです。

「おお、ミツ。何やってんの?」

僕はもう、素直に言いました。

「俺は、間違えてこの場所に来た。モデルなんてやったことのない、ただの素人だ。俺は格闘技しかしたことがないんだ」

そうしたら、ルイスがこう言いました。

「ああ、それでいいじゃん」

「じゃあミツは、**試合のつもりで来てよ**。そしたら俺が、それをかっこよく写真に収めるから」

——肩の力が、すっと抜けました。

なんだ。試合のつもりで行けばいいのか。

それだけのことでした。

蹴りを、百何十発

撮影当日。

僕は撮影開始の2時間前から、控え室に一人でこもりました。控え室といっても、トレーラーハウスです。

スタッフの方に、「ごめんなさい。少しの間だけ、僕を一人にしておいてほしい」とお願いして。

するとテッドさんが、周りのスタッフに言ってくれました。

「誰もここに入らないでね! ミツを一人にしてあげて」

今思えば、モデル未経験の僕が、NIKEの撮影現場でとんでもないお願いをしたものです。

でも、さすがはNIKEの撮影クルーの方々でした。

皆さんで、僕が集中しやすい環境を作ってくれたんです。

トレーラーの中で一人、頭からバスタオルをかぶりました。

イメージしていたのは、後楽園ホールの控え室です。

試合前。これから僕は、ずっと憧れてきた、とんでもなく強い世界チャンピオンと試合をするんだ。

そうやって、自分の脳を騙して、騙して、騙して。

やがて、ドアがノックされました。

「ミツ、そろそろいい?」

——そこからの記憶は、本当に断片的なんです。

NIKEの写真で、僕は蹴りを入れています。

あの蹴り、百何十発も蹴っています。

 

実はこのNIKEの撮影は、シリーズを通してずっと同じ条件でした。

朝日が昇る、わずかな時間。
夕陽が沈む、わずかな時間。

狙っていた光で撮れるのは、1日にこの2回だけ。

 

この日は夕陽。



 

そのわずかな時間に、すべてを撮り切らなければならないんです。

当時はデジタルではありません。フィルムの時代です。ルイスが「ネクスト」と声をかけるたびに、僕が蹴る。「ネクスト」、蹴る。「ネクスト」、蹴る。

断片的に残っている記憶の中で、はっきり覚えていることが一つだけあります。

ファインダー越しに伝わってくるルイスのパワーが、とんでもなかった。

何とも言い表しにくいんですが、「なんだ、これ」と思って、「気持ちいい」と思って。

そして、そのパワーに僕も応えなきゃという一心で、蹴りを出していました。

覚えているのは、それだけです。

この感覚は、格闘技の試合でもたまにありました。

試合の記憶が、断片的にしか残っていない時。

そういう時の試合って、その試合に向けて積み重ねてきた練習が、そのまま出せているんです。

あの日、格闘技と撮影が、僕の中で完全にリンクしました。

僕に、第二の人生はありません
 

これが、NIKEのシーズン1です。

実はシーズン2、シーズン3にも、ストーリーがあります。でも、書き始めると本当に長くなりすぎるので、今回はシーズン1だけにしました。

最後に、ひとつだけ。

あの時のルイスの言葉がなかったら、僕は今、芸能界にいなかったかもしれません。

いろいろな人の支えがあって、この世界でやっていこうと決められました。

そして、この世界と出会ったきっかけは格闘技です。格闘技をやっていなかったら、何ひとつ起きていません。

だから僕の中には、「第一の人生」「第二の人生」というものがないんです。


格闘技から今まで、ずっと一本の道でつながっている。それが、僕の人生です。

だから今でも、格闘技界に恩返しがしたくて、ずっと携わらせてもらっています。

 

これが、あの日の撮影で完成したNIKEシーズン1の広告です。



——ということで、NIKEシーズン1の撮影のお話でした。

次回は、NIKEシーズン2と3の話を書きます。

また読んでもらえたら嬉しいです。

ではまた。


虎牙光揮
こが みつき / Mickey Koga

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