第126回

いつも、野菜を買いに行っていた露天商の方の話です。

四国の田舎から、中卒で、集団就職で出てこられて、シャツを作る工場で働いていて、

突然に、繊維業界では、給与が下がる一方だと感じて、野菜を扱う資格を取って、

トラック一台で、露天商を始めた方でした。

 

大型スーパーの並びのガレージを借りて、野菜の安売りをしていた時に、

いつも、玉ねぎを買う時に、私が真ん中のシンを押さえてから買うのを見て、

一度聞いてみたいと思っていたそうです。シンが柔らかいと腐りやすい言いますと、

その日から、アルバイトに来ないかと言われて、毎年年末年始は、その店で、

アルバイトをして過ごしました。

 

「にいちゃんが売ると不思議に売れるなー」とよく言われました。

客を見て、値段を上げたり,下げたりしました。客が笑いながら、冗談を言いながら、

いつの間にか、客が買っているから、びっくりしたそうです。

 

私が参加してから、売り上げが、倍以上になったので、アルバイト料も、

約束の倍以上くれました。中央市場で買った商品の一部を中売りの店に頼んで置いて、

後から配達してもらうことも,増えました。それが、不思議なことに、昼過ぎには、

大抵完売したので、その方も、朝早くから、夜遅くまで店を開いていたのを、

短時間で、店を閉めたので、余計に、開店前から行列が出来て、開店と同時に、

ものすごい勢いで、売れるようになって、驚いておられました。

雇う人が儲かると、雇われた人のアルバイト料も、上がるとそう感じたのです。

 

大学では、漢文と古典しか授業がない時でした。なぜかこのアルバイトは楽しかったです。

その後、そこの息子と娘の家庭教師も頼まれて、随分お世話になりました。

何が、きっかけで、仕事が増えるのか、実に不思議です。