■一人経営ビジネスでは戦術依存、テクニック、ノウハウ依存は危険

世の中に「いい商品」「売れる商材」「儲かる商品」というのは存在しません。あなたが経営者ではなく、いつまでも「物やサービスを買う立場の人間」でいるのなら「いい商品だから→お客さんが買う」という思考ままでもOKです。

 

但し、経営者であるあなたは「買う立場の人間」ではなく「売る立場の人間」です。「売る立場の人間」はビジネスを行なう限り、「お客さんが買う商品」が「いい商品」なのです。「いい商品だから→お客さんが買う」のではありません。

ビジネスでは「商品」を「上手に売る」から、それは「売れる商品」「いい商品」になるのです。ここを理解しないと経営者としてビジネスで儲けることは難しくなります。


ビジネスでは「上手に売る」=「経営戦略と経営戦術」になりますが、「戦術で戦略は修正できない」と言われるように、ビジネスでも継続的でまとまった利益を効果的に生み出すには「経営戦略」の方がより重要になります。

 

短期的な利益は運や偶然や戦術でも発生しますが、長期にわたる継続的な利益を発生させるには運や偶然や戦術ではなく「経営戦略」が必要になります。


巷に溢れる起業本や、マーケティング関連のセミナーでは経営コンサルタントやマーケッター達が「驚異のセールストーク」「売れるチラシ・文章の書き方」「管理会計入門」「優良商材の探し方」「財務分析」「メールを使ったセールス」「会計と税務」「棚卸と在庫管理」「成果報酬制度に基づく給与制度の構築」「電話応対トレーニング」「企画発想法・売れる企画書の書き方」「コーチングセミナー」「決算書の読み方」「マーケティングの基礎」「エクセルを使った原価計算」「パワーポイントを使ったプレゼン」「社会保険作成書類の作成法」「ロジカルシンキング」「危機管理」「対人コミュニケーション」「定性セグメンテーション」「キャッシュフロー計算書の読み方」といったテーマを展開しています。

「売れるセールストーク」「利益を増大させる管理会計」「反応率が上がるマーケティングノウハウ」といったテーマには多くの起業家が興味を持ちます。もちろんこれらも個々には大切な知識なのですが、これらは全て経営の「戦略」ではなく「戦術」です。これらの書籍やセミナーで学んでも、結局多くの経営者が儲からないのは「戦略」ではなく「戦術=テクニック」に捕らわれているからです。これは「木を見て森を見ず」の状態です。

経営は掛け算です。「商品製造、広告宣伝活動、セールスプロモーション、経理、人事、財務活動」がどんなに正しくても、「ターゲットの選定」が間違っていれば長期的な収益は見込めません。つまり、人間国宝級の技を持つ「匠が作った商品」を、マーケッターの言うように「売れるコピーとチラシの作り方」を駆使して、コンサルタントの言うようにセールスプロモーションをかけて、有能な経理マンと社員採用のプロと財務の専門家を雇ったとしても、経営者に戦略能力が無いために「間違ったターゲットの選定」しかできないと、売上げは立たずにコストばかりがかかってしまい、いつかは倒産する、ということです。

 

こんな実例はビジネス社会には掃いて捨てるほどあります。

つまり1つか2つの個々の戦術が「100点」でも、経営を行なう人間に経営全体を体系的に捉える能力がないと「経営の掛け算の答え」は常に「0(ゼロ)」になるのです。戦国時代の戦においてどんなに優秀な兵がいても、どんなに優れた武器を保有していても、どんなに軍資金があっても、大将が馬鹿で「戦い方の戦略」を知らないと、戦に負けるのと同じです。

「自社が継続的な収益を上げるために効果的な経営戦略」を構築しない限りどんなに「売れるセールストーク」「利益を増大させる管理会計」「反応率が上がるマーケティングノウハウ」といった戦術、テクニック、ノウハウを学んでもそれだけでは短期的な目先の売上げにしかつながらず、継続的な収益をビジネスから生み出すことが出来ないのです。


ビジネスにおいて「戦術=テクニックやノウハウ」がその効果を発揮するのは「経営戦略」が正しく設定されている場合のみです。

ところが多くの起業家や経営者は「売れるセールストーク」「利益を増大させる管理会計」「反応率が上がるマーケティングノウハウ」といった戦術、テクニックに眼を奪われてしまうのです。何度も言いますが、「戦略が間違っていたら、戦術では修正できない」のです。

それまで何もマーケティングや広告戦術を行なっていなかった中小零細企業が「売れるセールストーク」「利益を増大させる管理会計」「反応率が上がるマーケティングノウハウ」を行なえば当然一時的に売上げは上がります。「今まで何もしていなかった」のだからこれは当然のことです、

でも、経営コンサルタントやマーケッター達の言葉に踊らされて「戦術=ノウハウやテクニック」を追っても、それは一時的なものです。せいぜい長くて2、3年の効果です。経営では「戦術で戦略はカバーできない」のです。だから、起業後3~5年で淘汰される起業が多くなり、10年間生き残れる企業が少ないのです。