昭和50年9月、東京宝塚劇場公演「喜劇にぎにぎ」は選挙をめぐるドタバタ喜劇でした。
小幡欣治作演出。
植木等。藤岡琢也園佳也子。佐山俊二。浅香光代。金子信雄。立原博。門田美恵子。劇団•東宝現代劇出演。の選挙にまつわるおかしな出来事を可笑しく演ずるお芝居でした。
東宝の商業演劇が盛んな時代でした。
我々のスケジュールも半年先迄決まっていて、しかも数あるプロデューサーからのオハが多くて取り合いでした。
3つも重なってしまい役者が選ぶと角が立つのでプロデューサーに役者の意向を聞いて頂いた上で何処に出演するか決定してもらいました。
この「にぎにぎ」私の頂いた役はこそ泥棒とお化けの二役でした。
これは面白い役がきたぞ!どうにでも料理ができるぞうと私は小躍りしました。
滝次と言う、こそ泥の役、つまり選挙で争う敵の候補者のポスターをはがす、つまり泥棒です。
ほっかぶりして(何んか古典的ですね)それを見た植木等さんが、「ほっかぶり練りましたね」と仰る。そうして舞台の下手から上手迄逃げまくる、捕まって、何だか追求されて、「婆婆じゃない俺は男だよ!」と言う台詞の時に、小幡先生が「コバちゃん一度聞こうと思ったんだけど泥棒役で俺は男だよと言う時あそこを見るのは演技プランなの」と聞かれて、そうです。と答えると、喜んで受けて下さった、当時宝塚劇場の支配人の大河内さんも同じ受けて下さいました。
大河内支配人と云えば一番演劇を愛し理解があった人です。丁度エレベーターに乗った時小幡先生と大河内支配人があまりにも偶然とはいえ、私の演技の話しをされていたのです、吃驚しました。
そのお二人に芝居を褒められたのは滅茶苦茶うれしかったです
滝次役は二場面続けて出ていまして下手から上手に捕まらない様に逃げるその格好が可笑しいと沢山の拍手がきました。
もう1役の亡者役、この役はセンターで浅香光代さんが、まともな踊りを踊る、その両脇に鬼と亡者が同じ曲で踊る。
この亡者役も本当に楽しんで演じました。
ちゃんと花柳錦之助さんの振りがついていましたが、私の味で可笑しく軽く踊りました。ザンツク、ザガツク ザンツクツと踊ると毎日、手が来るんです。浅香光代さんに一寸悪いことをしてしまったかなと恐縮してました。然し当時の浅香光代さんの旦那さんも面白い!と仰って自由に踊ってくださいと逆に励まされたのです
毎日笑いと共に手がくるんです。
お化けの踊りの本領発揮です。
この時、姉である藤間勘太郎師匠に少しでも日本舞踊を習っていたのが功を奏したと感謝です。
もうお亡くなりになった金子信雄さん佐山俊二さんが、あそこは、お客さんに一人で受けてるよーコバちゃん本当に芝居を楽しんででるんだなあ、と仰る。その事が。その後の長い俳優生活にどれ程勇気を与えてくれましたか、思い出されます。