第一章 ~囚われの少女~
序幕『光』
「お姫様。俺はお前を……さらいに来た――」
少女は夜の朝日と出会った。
分厚く、固い石壁に閉ざされたこの部屋で。
光というものは皆無だった。
お姫様と呼ばれたのは、薄い桃色の髪をした少女。恐ろしい程に長いその髪は、強風に煽られ宙を踊る。
少女は朝というものを知らない。少女にとって、生きる世界は暗闇。常に夜だった。
しかし、突然現れた人物はそれを壊した。
少女にとって、それは夜に太陽の光が差し込んでくるような出来事だったのだ。
目の前に現れた人物のその姿は、少女からは影しか見えない。
逆光と、立ち込める煙がそうさせるのだろうか。それとも、長い間暗闇に閉じ込められ、少女は視力に異常をきたしているのだろうか。
得体の知れない、何の其処も知れない恐怖に少女は震えた。
突然の出来事に言葉を失ったどころか、言葉という概念さえもが脳裏から、この場から逃げ去ったかのようだった。
分厚かった壁が突如として吹き飛び、突然現れた人物は、おそらく男。
男は一体、どのようにしてこの壁を爆破したのだろう。それは少女には、全く知る由もない。
爆発音に驚いたといえば当然の事だろう。驚くなというのには無理がある。
しかしこの状況。何が起こったのか、少女には全く見当もつかなかった。
腰を抜かしたまま成す術なく、少女はただ目を見開くばかりだった。
だが、その赤の瞳は宝石のように、眩い光を携えていた。
そこへ男は少女に向かって、その手を差し伸べる。
「俺たちの信条は、個人の自由を優先する事だ。俺たちは、決してお前を拘束しない。この手を取るかどうかはお前が決めていい」
少女に向かって問う。
「自由を受け入れるか? それとも――」
その問いに対する答えは、次の言葉を聞くまでもなく決まっていた。
運命の出逢いというのはこういう物を指すのだろうか。しかし、それを決めるのは、物語の結末次第。
~この物語の、時代や世界観のモデルは19世紀ヨーロッパのような、そんな洋風なイメージ。
作者によって創られる、ファンタジーの世界へどうぞ~
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