新しい「おばあちゃん」。

最悪でした。

まず母への一言目がこう。

「私、女学校をでてますから。」


…だから?

うちの母、今でいうMARCHレベルの大学を出ているのだけど。


こういう「おばあちゃん」、だからあとはお察し。

当時母の稼ぎでピアノを習っていたけど、「連れ子にピアノを習わせるなんてもったいない」。

新しい服、文房具を買ってもらえば「連れ子にものを買うなんてもったいない」。


そのうち母が妊娠。「妹」が生まれることになりました。

産後も「おばあちゃん」の暴走は止まりません。退院したての母が寝ていると「怠けるな」。

母は鬱になって体を壊しました。

私のことなど到底かまえない体に。

学校でもイジメ発生。都会の小学校ではお受験する子供たちだらけで授業も塾で先取り。私の成績も相対的に低下。新しい「お父さん」はそれに焦って私に勉強を詰め込むように。


私は何度も母に懇願しました。おじいちゃんおばあちゃんのところに帰りたい。帰らせて。ここで私は幸せじゃない。

でも母は私を手放しませんでした。私の世話を満足にできなくなっているくせに。私が手放したらあなたは「お母さんに捨てられた」と思うでしょう、と。

新しいお父さんと勝手に結婚した時点で私は母に捨てられたと思っていたんだけどね。


あまりに母の体調が悪くなり、ようやく継父は「おばあちゃん」と別居することになりました(この間に「おじいちゃん」は病没)。

家を引っ越してしばらく、平和な日が続きました。私は生来勉強好きだったので両親も満足。中高と普通に過ごしました。

母の体調は相変わらず。中高では母が私の服装に構わないので、私服で会った友達から嘲笑されることがよくあって辛かったな。継父は女の子がチャラチャラ化粧したりおしゃれするなんて馬鹿のやることと思い込んでいる人だったから、遠慮して雑誌も買えなかった。


大学受験。家から通える国公立大しか通わせないって言われて、深夜までブラックコーヒー飲んでは吐いて、なんとか国立大に合格。やりたい学問があったからすごくがんばった。

合格した次の日、私はこう言われた。

「あの共テの点数なら◯大じゃなくてもう一つ上の×大にも行けたよね」

おめでとう、よくがんばったね、えらかったね。

そう言って欲しかったんだよ。私の出身校、決して底辺ではないです。国立大の中でも上位のランク。それでも親は私に満足してくれなかったんです。

その上、大学に行くなら絶対教員免許を取れとも言われました。結局取りませんでしたが。

私はエスカレートしていきました。もっと勉強をがんばれば満足してくれるはず。その気持ちと、私の学問が好きという気持ちが一緒くたになって、私はいつからか研究者を目指すようになっていました。


修士に進学したいと3年のときに切り出しました。母は「結婚できなくなる」と心配して反対。継父は「修士を出たら修士を出たなりの男と結婚できる」と賛成。その理由も私を傷つけました。私自身の能力じゃなく、大切なのは結婚相手なの?


修士に進学して、一応就活をしました。でも心は研究に向かっていたため全滅。博士進学を決断しました。

同じ頃、妹が不登校に。言い争う妹と継父を仲裁しようとした私に継父はこう言いました。「就職もできなかった奴に何かものをいう権利があるのか」。


そしてあの「おばあちゃん」が帰ってきました。預けてあった親類がもう面倒をみられない、と。要介護になっていたのです。

私は奨学金という名の借金を満額借りて家を出ました。

その後国費で留学をしました。博士候補としてリスペクトを受けつつ研究に専念する日々。誰も私を脅かさない。誰も私を見下げない。苦しめない。私、そのときやっと理解しました。

この家にいたら潰れる。


Zoomで彼(今の夫)にプロポーズしました。

結婚して、でないともう私だめになる。

彼は承諾してくれました。

帰国後結婚の挨拶に行きました。向こうのお家から帰ってきて、最後の礼儀を通したくて、継父にそのことを報告しました。

返ってきた返事は「それ、俺に関係ある?」でした。

私は最後までこの人の子になれなかった、どんなに頑張っても愛されなかった、絶望しました。

その頃のことはもうあまり覚えていません。

その頃から夜眠ろうとすると左胸が誰かに押さえつけられているかのように苦しくて全く眠れなくなりました。

母に訴えても、母は仏壇に祈りながら私の「因縁」とやらを説くばかり。曰く、私が前世で業を得たから今の私の苦しみがある、と。

私はその言葉が許せませんでした。私が今辛いのは母が私の意思を尊重せずに幸せな祖父母と母との家庭から無理やり引き摺り出して新しい家庭から決して出そうとはせず、継父に遠慮して彼の行き過ぎた言動を諌めず、私を守ってくれなかったのはあなたでしょう。その罪に向き合わずに私のありもしない「前世」とやらに罪をなすりつけて、私の自己責任にするのか。


どんどん私はダメになっていきました。

続きはまた。