「それぞれの正月」
全村避難の飯舘村蕨平の志賀正男さんと美枝子さん夫妻。
息子夫婦が酪農を継ぎ、年金と野菜や蜂蜜などをとって幸せに暮らしていた。
息子たちが、経営に何とか見通しがついた頃…
原発事故で全てを失った。
志賀さんは若い時、農協組合長をしていた。
先代の組合長が、
「人間が作った原発は必ず事故を起こす。その時には真っ先に飯舘村がやられる。だから絶対反対しなければいけない」
といつも言っていた。
その言葉を今、思い出している。
「事故がなければ今頃は息子・孫夫婦・ひ孫と一緒に、一つ屋根の下で楽しく暮らせたのな」
美枝子さんは、避難先の地元で絵手紙教室に通いめきめき腕を上げている。
「里山に嫁ぎ半世紀あまり 一瞬にして家族離ればなれに
村を追われて2回目の正月 原発さえなければ ふるさとが恋しい」