最近のニュースで妊婦のたらい回しが報道されたばかりですが、ここで思い出したことがありましたので、書いておきます。


もうかなり前の事になるのですが、産科婦人科に勤めていたころ年に数回、

産み逃げなる事にでくわします。陣痛が起きてから救急車を呼び、私の所に運ばれて産むのですが、実家を連絡先にしておいて、いざ、連絡を入れるともう何年も音信不通状態で、勝手にして下さいと言われてしまい、その後母親は、いなくなったり、

こんなのは、まだいい方で、名前や住所もデタラメで、そのままいなくなったり、

色んな人達を見てきました。

生まれてきた赤ちゃんは、児童相談所などの職員が、変わりに出生届けを出し、

その後乳児院などの施設に入ります。


陣痛がひどくなってから来ますので、内診したらすでに子宮口が全開なんてこともあります。 もちろん、救急車で来院ですので、産婦の血液型、感染症の有無、既往歴等など全然わかりませんので、病院としては、本当にハイリスクになるわけです。

もちろん、お産と言うのは、血液やら羊水など触れる機会が多いので、

いきなり来た産婦さんの場合、感染症のある産婦さんと同じ扱いの出産になります。

普通の方には聞きなれない病気もある方だっています。

例えば、成人T細胞白血病、様々な肝炎や感染症等など、そんなリスクを引き受ける

お産になるのです。また、心臓に疾患のある赤ちゃんは、妊婦検診のエコーでも分かる場合がありますので、もしそうであれば、帝王切開にもなります。

出血が多ければ、DICと言って、血液が止まらなくなる場合もあります。

書き出せば、キリがないほどの事ですが、私は、安易に断ったのではなく、そうした

ことを引き受けるだけのスタッフの数や時間的余裕がなかったのだと思えるのです。


色んな事情があるとは思うのですが、授かった命なのですから、妊娠に気づいたら

母子手帳には、無料で受けられる血液検査の用紙がありますし、

様々な相談機関もあります。 悲劇を繰り返さないためにも是非、大丈夫だと思う前に、かかりつけの産科を手配してもらいたいものです。

女性だけに、重荷を課すようなことをせず、男性にも責任ある行動をお願いしたいのです。 お産とは、とても素晴らしい命を産み落とす行為です。


経済的に余裕があれば、何人だって私は産みたいのだが、

現状は、相手もいないし、体力的に限界ギリギリなのだ。

もっと、素晴らしい世の中なら子供も育てやすいのだろうけど、

本当に、難しい問題。ただ、病院ばかりを責めるのは、違うような気がする。